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vol.8 川上未映子「深く、しっかり息をして」を読んでみた

第138回芥川賞受賞作家・川上未映子さんの
「深く、しっかり息をして」を読みました。


最近の話題では、
「黄色い家」(中央公論新社)が
2024年の本屋大賞に
ノミネートされています。

今回読んだ「深く、しっかり息をして」は、
2011年から2022年までの
12年間の軌跡が書かれた
エッセイ集になっています。



「変身願望との付き合い方」では、
固定観念について書かれています。

「『自分にはこれが似合う』
『こうじゃないと』
という固定観念がはつらつとした
自分のこれからの可能性をせばめてるのかも…」

これは、メイクさんや美容師さんとの
やり取りの中で、このようなことについて
思いを巡らせていたようです。

ふとした日常の中で、
固定観念について考察する、
ということをしようと思ったことすらなかった
自分からすると、感服するばかりです。


「そう、人はみな、やはり現在を
取り逃がす宿命に晒されているのである。」

年を重ねることについても書かれています。
「今」出来ることを
目いっぱいやったほうがいい、
ということなのだと思います。

行政書士試験においては、
合格者数は40代が最も多いのですが、
「受験者数に対する合格者の割合」でいうと、
20代・30代の方が40代よりも高く、
50代・60代では、40代よりも
極端に下がります。

複数年受験したからといって、
点数が上がるのではなく、
むしろ下がることは当然、
ということを前提にして、「今」を大事にし、
勉強に挑まなくてはいけないようです。
・・・書いている自分がつらいです。



「その女子力に用はない」では、
川上先生の執筆の原動力のようなものが
垣間見えます。

この項目では、飲み会の席での出来事において、
現代(昔からずっとですが…)の
男尊女卑について、鋭く書かれています。

「自分の分は自分でやれよ」

男性のグラスが空いたときのことを
書いているのですが、
川上先生の「怒り」が、
ひしひしと伝わってきます。


「『すべての人間は平等である』という建前を、どうか機能させつづけてほしいと心から願う。」

この一文だけ見ると、
落ち着いて見えるのですが、
先程の「自分でやれよ」と同じように強烈な
言葉でこの結論を導いています。
読んでいても爽快感があります。

この本では、Aマッソ加納さんや
ジェーン・スーさんが帯を書かれているので、
女性をターゲットにしていることが分かります。

ただ、女性の共感を得ることは、
難しくないと思うのですが、
男性にこそ読んで欲しい一冊と言えます。

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