マガジンのカバー画像

別冊 夢想ハウス.にこにこ

15
毎月SHOWROOMで朗読配信した後に、朗読した作品、作家について好きに語ります。
運営しているクリエイター

#文学

狂気は静かに迫ってくる:蘭郁二郎『鉄路』について

狂気は静かに迫ってくる:蘭郁二郎『鉄路』について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
今月は9/2にお誕生日を迎えた蘭郁二郎先生の「鉄路」を読みました。パチパチ👏

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

目次
作風と発表年のおはなし

朗読するのは3作品目となる蘭郁二郎先生。
去年の11月に『蝕眠譜』を、それ以前に『穴』を読みました。

☝前回noteもよろしくっ

蘭先生ってはじめ怪奇小説を書いていたんだけど、

もっとみる
握り返す手はだれのもの:久生十蘭「黄泉から」について

握り返す手はだれのもの:久生十蘭「黄泉から」について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
今月はだいすき久生十蘭先生の「黄泉から」を読みました。

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

ネタバレのないあらすじ

終戦後初の7/13、お盆入りの1日の話。
ヨーロッパで敏腕仲買人となり、「抜け目なく立ち廻ることだけが人生の味」となっていた魚返光太郎。敗戦すら逆手にとって金を稼ぐ彼にとって、今日もただ商談で忙しい1日でしかな

もっとみる
幾億も連なる、この生命の情熱を思い出せ:岡本かの子について

幾億も連なる、この生命の情熱を思い出せ:岡本かの子について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
今月は梅雨時にぴったりの美しい作品、岡本かの子「過去世」を読みました。

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

人生で初めての蛍見物

みなさん蛍の光を見たことはありますか?私は今年初めて見に行って、幻想的な美しさに胸を打たれました。緑がかった光がちかちか瞬きながら、ゆっくりと動いている…こんな素晴らしい光景をもしも自宅の窓から見

もっとみる
「よくわからん」が一番こわい:岡本綺堂について

「よくわからん」が一番こわい:岡本綺堂について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
今月は、原点である(?)怪談に立ち返って岡本綺堂「怪談一夜草紙」を読みました。
前回の久生十蘭「春雪」では春の美しさに感動していましたが、今回は5月のある雨の夜に起きた、奇妙な事件の話です。今夜もじめっと元気にいきましょう!

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

日本のホームズ「半七」シリーズ

岡本綺堂作品といえば、去年はじめ

もっとみる
手品師、春を告げる:久生十蘭について

手品師、春を告げる:久生十蘭について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
今月は、超名作!!久生十蘭「春雪」を読みました。
前回の江戸川乱歩「日記帳」で弟の日記にガタガタ震えていましたが、今回はそんな寒い冬の夜から一転、雪がとける春の美しさを思わせてくれるお話です。

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

久生十蘭について

久生十蘭の文章はまさに「手品」「魔術」といった感がある。
ユーモアはありつつも

もっとみる
人生を彩る「毒」、その致死量はいかに:小酒井不木について

人生を彩る「毒」、その致死量はいかに:小酒井不木について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
今月も1月に引き続き、小酒井不木作品。
医学博士でもあった彼ならではの冷静な視線が感じられる(※伏線)会話劇ミステリ「卑怯な毒殺」を読みました。
シーン…と静まりかえった病室の夜。包帯だらけの異様な状態で横たわった男と、そのベッド脇に立った干物のような痩躯の男…。
この最初の絵面だけで、なんだかどきどきしちゃうなあ…。

👆ここで毎月朗読して

もっとみる
恐怖の胚珠:小酒井不木について

恐怖の胚珠:小酒井不木について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
2024年、始まりましたね~!
昨年末は、怪奇小説→科学小説へと舵をきった二人の作家、蘭郁二郎と海野十三の作品を読みました。
今年の朗読はじめは、1/12(金)、小酒井不木のじめっと恐い話「犬神」でスタートです!

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

不木先生と乱歩先生

小酒井不木は生理学・血清学を専攻とする医学博士である一方

もっとみる
科学と浪漫の大爆発:海野十三について

科学と浪漫の大爆発:海野十三について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
2023年もいよいよ年の瀬を迎えようとしていますね~。
年内最後の朗読配信、12/15(金)は海野十三の「仲々死なぬ彼奴」を読みました。

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

海野十三作品、初挑戦でした!
恥ずかしながら全く読んだことがなくて…瀉葬文幻庫が『火葬国風景』を上演していた時に気になって読んだことがあったんですが、他の

もっとみる
幻想の客体に体温を:蘭郁二郎について

幻想の客体に体温を:蘭郁二郎について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
11/17(金)の朗読では、蘭郁二郎「蝕眠譜」を読みました。
いつもタイトル画像に作家の顔写真を入れるのに、蘭先生全然ヒットしなくて…ちょっと寂しい感じ。

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ聴きに来てね🍻

蘭郁二郎の怪しい世界

蘭郁二郎という作家をご存知ですか?
1931年、江戸川乱歩全集の付録冊子「探偵趣味」にて、読者から掌編探偵小説を

もっとみる
ホラーという脊髄刺激装置:葉山嘉樹について

ホラーという脊髄刺激装置:葉山嘉樹について

こんばんは。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。
10/20(金)の朗読では、葉山嘉樹「死屍を食う男」を読みました。

👆ここで毎月朗読してる📚ぜひ登録して聴きに来てね🍻

出会いは「セメント樽の中の手紙」だった

葉山嘉樹といえば…学生の頃に授業で読んだ「セメント樽の中の手紙」。
以前朗読したことがあるけど、コメント欄は凍り付いていた。遣り切れない読後感を共有した思い出…。
葉山嘉樹

もっとみる
犬は遠吠えをする。影は永遠に追ってくる。:萩原朔太郎について

犬は遠吠えをする。影は永遠に追ってくる。:萩原朔太郎について

おはようございます。月に一度の別冊夢想ハウス.にこにこです。

9/22(金)の朗読では萩原朔太郎の詩を読みました。
主に「月に吠える」より序文と抜粋したいくつかの作品、そして「宿命」より「死なない蛸」。
始めは「純情小曲集」「青猫」からも何作品か…と思っていたのですが、「月に吠える」の序文がすごく好きだったので絞ってみたよ。

私が購入したのはちくま日本文学全集。
寺山修司も持っているんだけどこ

もっとみる