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#夏目漱石

孤絶した場所にいる存在 —夏目漱石の小説「坊つちやん」について—

孤絶した場所にいる存在 —夏目漱石の小説「坊つちやん」について—

 今回は、夏目漱石の小説「坊つちやん」について見ていきます。
 この小説は、一人称が「おれ」である人物の語りで展開されます。この「おれ」については、精神のありようが、ほんの少しおかしい、そんな人物であると言えます。では、一体、どこがおかしいのでしょうか。それについては、登場人物である清の言葉を借りたいと思います。清は、「おれ」の性格について、「真っ直」(まっすぐ)な気性である、と評しています。その

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書評 NHK100分de名著 こころ 姜尚中  文学作品の解釈は色々とあるんだなぁと、驚かされた。

書評 NHK100分de名著 こころ 姜尚中  文学作品の解釈は色々とあるんだなぁと、驚かされた。



 中学の時に、読書感想文を夏目漱石の「こころ」で書き、その時にハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。
 友達の好きな女を、卑怯な手段で奪い取るって、クズ人間だなと思った。
 その親友が隣の部屋で血まみれで死んで、そりゃトラウマで生きる気力もなくなるわ。
 誰かに、自分の想いのたけを語りたい。でも、親友Kに悪いし妻に本当のことを知られたくない。だから、死ねない。そんな時に、私と出会って告白し

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第十八回読書会:夏目漱石『門』レポート(感想・レビュー)

第十八回読書会:夏目漱石『門』レポート(感想・レビュー)

夏目漱石前期三部作のラストを飾るのが本作品です。

3冊の中で一番読みやすく、ターニングポイントと言われる意味が分かる作品でした。

読書会でも盛り上がり、「門」とは一体何を意味するのか?どう解釈するのか?がやはり焦点となりました。

雨の中ご参加いただいた皆さま!ありがとうございました!

参加者の感想をご紹介良い印象の感想は……
・100年前に書かれたとは思えないほど、今読んでも新しい
・仲睦

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軽やかな青春の一ページ -夏目漱石『三四郎』についての随想

軽やかな青春の一ページ -夏目漱石『三四郎』についての随想

【水曜日は文学の日】


あらゆる芸術家には最盛期というものがあります。どれほど平板な創作人生に見えようと、始まりと終わりがある以上、最も充実した期間が生まれてきます。

初期の頃は初々しく、多少崩れたところがあっても、勢いに満ちて駆け抜ける力がある。

円熟期になると、それまでの技法が集積して、固有の美を発すると同時にある種の停滞に向かう。晩年は、そうした円熟も停滞も消え、枯れ切った諦念と

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