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がん と 生きること

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2020年1月の記事一覧

本当の人生会議って何だろう?

がんサバイバーズクラブから、記事が配信されました。

担当の中村さんには、2年前にも記事を書いていただき、今までで

1番読まれた記事となり、その記事が、私、そして家族が前を向くきっかけになりました。

ポスターに意見を届けたことで、『炎上』とも言われてしまった一件。
私が伝えたかったこと。 以下、配信された記事です。

【旅立ちの朝焼け】真夏の空がほんのりと赤く染まり始めていた。
 夫とふたりで

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今夜の医療ドラマ「アライブ」はご遺族のグリーフケアを取り上げるそうです

今夜の医療ドラマ「アライブ」はご遺族のグリーフケアを取り上げるそうです

びっくりしました。これは朝から、界隈の方々もツィートされますね

しかも、医療現場が提唱するとあります。ドラマの中でどのようにご遺族のケア、グリーフケアが描かれるのか、もうドキドキでいっぱいです

おそらくこの時間帯のテレビドラマで、ご遺族へのケア、グリーフケアが(おそらく)正面から取り上げられるのは初めてのことだと思います。本当にいまからとても楽しみです

一方で、もう一つ、番組のツィートには気

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1:止まってしまった心――吉田ユカの場合

1:止まってしまった心――吉田ユカの場合

 外来に現れた吉田ユカは、透き通るような白い肌と豊かな黒髪が印象的な女性だった。
 膵臓癌で抗がん剤治療中とのことだったが、パッと見た目には病を抱えているとはわからない。ただ、よく見ると少しお腹が膨れている。そこに、腫瘍か、腹水があるのかもしれない。
「はじめまして。西と申します。前医からの紹介状は拝見しましたが、今日こちらにお越しになることになった経緯をお話しいただいてよろしいでしょうか?」
 

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2:もう一人の安楽死――Yくんの場合

2:もう一人の安楽死――Yくんの場合

「先生、抗がん剤していても、セックスってしてもいいんですよね?」

 奥さんが隣にいるのに、あっけらかんと尋ねる彼に、こちらのほうがどぎまぎする。診察室を一瞬静寂が襲ったが、僕は努めて冷静に、
「ええ、大丈夫ですよ。ただ、感染に気を付けて。避妊はしてくださいね」
 と笑顔で答えた。ただ、口元は少し引きつっていたかもしれない。
「よかった。ほら、そういうことって大事でしょ。でも、主治医の先生には聞き

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だから、もう眠らせてほしい ~安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語

だから、もう眠らせてほしい ~安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語

 僕はある夏、安楽死を願った二人の若い患者と過ごし、そして別れた。
 ひとりはスイスに行く手続きを進めながら、それが叶わないなら緩和ケア病棟で薬を使って眠りたいと望んだ30代の女性。そしてもうひとりは、看護師になることを夢見て、子供たちとの関わりの中で静かに死に向かっていった20代の男性だった。

 そして僕は医師として、安楽死を世界から無くしたいと思っていた。
それは安楽死制度を無くしたいという

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プロローグ

プロローグ

 手を合わせること、
 祈ること。
 それが、人の営みとして大切なものだと感じるようになったのは、いつのころからだろうか。

 僕は子どものころから「死」が怖くなかった。
 僕を可愛がってくれた祖父が亡くなった時、僕はその死を見せてもらえなかった。次に祖父と会えたとき、彼はもう錦をまとった棺の中にいた。訳が分からないままお寺の座敷に座らされ、お経の本を手渡される。僕は幼いながらに般若心経をどの子よ

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最期の時くらい

フォーラムの一番大きなテーマは『最期を生きる』であったと思います。
踏み込み、挑んだという覚悟を主催者側に感じました。

このテーマがあるから、私にパネリストの声がかかったのだとも思っています。

昨年末、人生会議のポスターに対して意見書を送り、渦中に入った時、私には、『寛容になれ』という意見も届きました。

このテーマに発言することは、私には覚悟も必要でした。

【もしバナゲーム】

フォーラム

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失ったのは、確かにあった日常

先日、緩和ケア、終末期をテーマにしたフォーラムに登壇しました。

夫が旅立ち3年半。
その間、自分なりの日常を取り戻すため、私は、自分の心の中にある

固い部分に蓋をしてきました。

今回、『治療』『生活』『最期の時を生きる』というテーマでパネラーとして登壇するためには、私には、あの時の夫、自分に向き合う覚悟も必要となりました。

【今の時代という言葉】緩和ケアは終末期の医療ではないという発信も、

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病歴⑤補記:入院前にしたことと世界とのつながり

病歴⑤補記:入院前にしたことと世界とのつながり

私の卵巣腫瘍の病歴は、前回書いた「病歴⑤」でひと段落つけようかと思ったが、ふたを開けてみると、私の一年分の健康への不安であるとか、医師への不満であるとか、怒りの供養のような文章になってしまっていた。
そのために、ありがたくも怒ってくださる方や心配して下さる方がいらした。
この文章を書いている現時点において、私は主治医とそこそこ良好な関係を築いている、と思う。私がだいぶ慣れてきたというのもある。なん

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精神科、腫瘍内科領域のお医者さまと繋がっていたいと思う理由

精神科、腫瘍内科領域のお医者さまと繋がっていたいと思う理由

先日、看取りを経験された方が罹る疾患に関してのツィートを見かけました

看取りを経験した方は、その反応(これを「グリーフ」と表現することが多いです)として様々な症状を見せることがあります

自殺リスクはよく言われており、特に中高年以上の方で伴侶を亡くされた方は、この自殺リスクが非常に高くなると言われています。また眠れないや、仕事や家事が手につかなくなくなる。何もする気が起きない。何を食べても味も感

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これはほぼ、医療者たちと私の物語だ

これはほぼ、医療者たちと私の物語だ

昨年夏には書こうと思っていたのに、温めすぎてしまった。
2014年のがん治療から5年が過ぎた。

入院治療の7日間、さまざまな人が、できごとが、私のベッドの脇を忙しく通り過ぎて行った。
その人たちとの短い交流、たくさんあったできごとたちを忘れたくなくて、物語のようにここに記しておきたい。

一応書いておくが、これは闘病日記ではない。

静かな診察室入院初日は、術前の診察があった。
外来とは違う、病

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病歴⑤:再々発

病歴⑤:再々発

2019年は、不安から始まった。
2018年12月に受診した時に、腹水が増えていると指摘されたのだ。これで一気に不安が高まった。
秋頃から急に体重の増加して気になっていた。食事量に変化はないつもりだが、じわじわと体重が増えて止まらなかった。
そういう時は要注意だ。
次の予約は4月と言われたが、1月に再度受診。主治医には心配いらない、体重増加は肥満だと言われた。
違う意味で、ちょびっと傷ついた。

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病歴④:更年期障害がやってきた

病歴④:更年期障害がやってきた

書くかどうか迷っていたことがある。
婦人科のがんというものは、ジェンダーやセクシュアリティと密接なつながりを持っている。
乳がんの人たちは手術が外見に及ぼす影響を苦にされるし、子宮や卵巣がんは妊娠出産に関わるものだ。たとえば、伯母はその夫から「女じゃなくなった」と言われたと嘆いていた。
この私自身のジェンダーやセクシュアリティに関わる部分は、とてもプライベートであり、ナイーブな話題だ。
書くかどう

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ヤマアラシの法則

2019年の年末、私は『人生会議』のポスターの件で、思いがけず注目を浴びることになってしまいました。

その中で『トーン・ポリシング』という言葉を知りました。

それは、私にとって、大きな気づきになりました。

【トーン・ポリシング】トーンポリシングとは、発言の内容ではなく、それを発した口調や論調などで、論点ではなく発信者を非難することなのだそうです。

私のもとにも、ポスターへの意見ではなく

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