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がん と 生きること

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記事一覧

病歴59:小康状態

病歴59:小康状態

今月の病院受診もすませた。
正直なところ、診察の前、検査の前は緊張する。
今回のCTでも、私の腫瘍は小さいままで、腹水もたまっていなかった。転移も特にしていなそうだ。
次回の予約も3か月後になった。

小康状態だ。
ほかに、どう言えばいいのだろう。
治癒はしていない。腫瘍は腹の中にある。再発リスクはもちろんある。
寛解というのも違うし、とにかく治ったわけではない。
長い目で見て、治療と治療のインタ

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病歴58:アピアランスのこと

病歴58:アピアランスのこと

数日前、髪を染めた。
昨年の7月に抗がん剤を終えて、髪が再び生えるようになってから半年。
G.I.ジェーン状態を通り過ぎて、ベリーショートぐらいにはなった。
以前もこれぐらいの長さになった時、美容師さんに色で遊ぶことを教えてもらった。
その時は、ぱっと見は目立たないけれども、光の当たり具合によって、気づく人は気づくぐらいに、赤に染めてもらった。

私は、美容室迷子になっている。
昨年の抗がん剤治療

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病歴55:酸素ボンベと旅に出る2

病歴55:酸素ボンベと旅に出る2

10月の東京に続いて、11月は大阪に旅に出た。
今度は飛行機ではなく、新幹線に乗っての旅だ。
酸素ボンベを専用キャリーに入れる。
スーツケースと酸素ボンベ。両手でコロコロしながら歩くのは、やっぱり不便だ。

まず、タクシーに乗る。
気の利く運転手さんが、スーツケースと一緒にキャリーもトランクに運ぼうとしてくれて、慌てて引き留める。
大きめの車両で、スライドドアだったりすると、足元にキャリーも乗せや

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病歴54:酸素ボンベと旅に出る

病歴54:酸素ボンベと旅に出る

漂泊の思いがやまない季節がある。
春と秋。
渡り鳥の移動が始まる頃には、私も一緒に落ち着かなくなるのだ。
退院後、ステロイドや強めの抗うつ薬の効果が加わって、じっとしていられなくなっていたところに、かねてからの友人からの招待が届いた。
場所はとあるねずみの国である。

肺炎はまだ治っていない。
ステロイドを服用していることで、感染症には弱い状態である。
負荷は少なくするようにも言われている。
コロ

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卵巣がんになったつらさをことばにしてもいいんじゃない?

卵巣がんになったつらさをことばにしてもいいんじゃない?


はじめに1月に卵巣明細胞がんについて記事を投稿してから9ヶ月も投稿が空いてしまいました。
YouTubeも「90日で動画を2本だか3本配信したら収益化できます」と何度もアナウンスいただいているのですが全然動画作ってないですしね・・・。
どうも私は記事を書くのも動画も意識の外にあるようでなかなか尻を叩かれないと投稿をしないようです。

悪意のない言葉を前に本音を言えない「がんになったことを愚痴りづ

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病歴52:頭上のチンアナゴ

病歴52:頭上のチンアナゴ

鏡を見る。
これまでで最も重たく膨れ上がった体と顔のぞっとする姿の自分の頭上。
はげた頭の上に3−4本。白髪が1cmを超えている。
つんと立った白髪の先が少しだけ曲がっていて、まるでチンアナゴのように見えた。
頭上に、真っ白なチンアナゴが4匹。

病歴として書くほどのことではないような気もして迷ったが、自分の身体の変化を少し、書き残しておこうと思う。

例によって、抗がん剤投与から一ヶ月は、効果が

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病歴51:酸素ボンベとPET検査

病歴51:酸素ボンベとPET検査

在宅酸素療法を利用した生活が始まると同時に、飼い猫が出奔し、怒涛のうちに退院後最初の一週間が過ぎていった。幸い、猫は帰宅してくれ、私もこそっと職場復帰。
午前中だけの短時間だけの出勤と言いながら、午後も少し居残りしていたりする。
とはいえ、酸素ボンベの残り具合と相談しながら生活することになった。
個人の感覚としては、ボンベのほうが、10mをこえる長いチューブに繋げられるよりも、なんとなく動きやすい

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病歴47:薬剤性肺炎2週目

病歴47:薬剤性肺炎2週目

世間ではお盆だ。
台風一過の空がとても美しい。
空が青いと海も青い。
これまで湾内に停泊していたタンカーやフェリーの姿が消えた。
窓越しに、いつもとは違うルートで空港へ進入する飛行機を見上げる。
病院の中はとても静かだ。

入院2週目も後半になり、ここでの過ごし方もだいたいと決まってきた。
午前中にステロイドの点滴を受ける。だいたい60分以内なので、これまでのBEP療法の8-10時間耐久レースのよ

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病歴46:薬剤性肺炎1週目

病歴46:薬剤性肺炎1週目

入院して一週間が経った。
今日には退院しているはずだったのに。
そう思うと、少し、気持ちの切り替えが揺らぐ。
我が家の方を眺められる窓を見つけて、ちょっとばかり、ホームシックになっている。

先週月曜日から入院した。
BEP療法の4クール目として、入院の予定だった。
ブレオが使える最後の一回。これで一区切りと思って、入院の準備をした。
直前の一週間の体調はひどいものだった。
仕事の合間合間に咳き込

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病歴45:BEP療法3コース目

病歴45:BEP療法3コース目

いつの間にか、自分の闘病日誌もずいぶんと長くなってきた。自分自身で読み返すことは少ないのであるが、こういう記録をつけておくことが、障害の申請に役立つこともあるし、もしも誰かのお役に立つことがあれば嬉しい。

思うに、入院中というのは、刺激が統制されるので、私はルーティンで行動しやすくなり、過集中・過活動になりやすいのかもしれない。そこそこの働きものになれる。
ところが、これが自宅に帰ると、たくさん

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病歴44:BEP療法2コース目後半

病歴44:BEP療法2コース目後半

BEP療法を受け始めてすぐに髪を短くしていたのであるが、今回は今回で微妙な抜け方をしていた。
前髪の生え際から鬢のあたりが薄く残り、頭頂部や側頭部や後頭部は比較的つるつるという…。
あえて例えるならば、アバターを作るときに前髪だけを貼り付けたような違和感。
これはちょっと、帽子がうっかり脱げてしまった時が恥ずかしくて嫌だなぁ。

2回目の入院時は、粘着テープのクリーナーを持参し、毎日のように枕をコ

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幡野広志さんに聞く~安楽死制度を議論するための手引き09(中編)

幡野広志さんに聞く~安楽死制度を議論するための手引き09(中編)

論点:安楽死制度を日本で作っていくことは可能か?

 前回、「安楽死制度を日本で作っていくことは無理だと思いますよ。それは安楽死制度が完全に政治的イデオロギーになってしまったからです」と解説してくれた、写真家で多発性骨髄腫というがんの治療を続けている幡野広志さん。

 今回は、「安楽死制度に医者は関わらない方が良い」というところから話がスタートします。

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病歴43:BEP療法2コース目前半

病歴43:BEP療法2コース目前半

手の親指の爪を見て驚いた。
爪の根元が打ち身のように青紫になっている。
見れば、両手とも。
親指以外のどの指の爪の根元も、なんだか青い。
ちょっとびっくり。

5月末。BEP療法の2コース目は、一週間遅れて始まった。
とりあえず始まったら進むしかない。そして、先に進まないと終わらない。
入院したら勝手に退院できないし、点滴は途中でやめるわけにはいかないし。
体に入った薬剤を追い出すこともできない。

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病歴42:BEP療法1コース

病歴42:BEP療法1コース

5月から始まったBEP療法。
前回の記事では、その始まったばかりの入院中に書いた。
2つ目の記事は、なにはともあれ、1コース目が終わってから書こうと思っていた。
まだ、2コース目は始まっていない。

第1週は、5日間連続で点滴をする。1回の点滴は日によって前後するが、6-8時間程度。
10時頃に開始して、18時前後に終わっていた。それが5日間続くので、入院して受けた。
そして、第2週、第3週は、一

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