マガジンのカバー画像

ちえのかたまり

225
運営しているクリエイター

2019年11月の記事一覧

アドバンスケアプラニングと人生会議 Aprilの考え

                            R1/11/30

             【編集履歴】
              R1/11/30 一部文章追加、細かい誤字訂正

 小藪さんのポスターで良くも悪くも盛り上がった「人生会議」。それについて、緩和ケア業界で働いている身として、あるいはここ数日何名かの方と話し合ったことなどをまとめておこうと思う。自分の勉強になるし。

【重

もっとみる
認知症のおばあさんの「まだご飯食べてない!」という言葉と、医師の「今すぐ薬を開始しないと大変なことになります」という言葉は同じ仕組みから発せられる。

認知症のおばあさんの「まだご飯食べてない!」という言葉と、医師の「今すぐ薬を開始しないと大変なことになります」という言葉は同じ仕組みから発せられる。

私が人工知能に興味を持ったのは、人工知能に対する興味ではなく、人工知能という「自然知能に近づこうとする意志と方法論」を見つめることで、自然知能が持っている芳醇な魅力を対比的に知ることができるからです。この2019年の段階においては、人工知能は自然知能ができる能力よりもはるかに高い能力を部分的に持つことができることが証明されています。それは、例えば記憶のプールと抽出とか、ベイズ理論に基づいた推

もっとみる
書籍『急に具合が悪くなる』

書籍『急に具合が悪くなる』

宮野真生子・磯野真穂 2019 晶文社

作家の村山早紀さんに教えていただいて、手に取った。
その後、読み始める前に、私がまさに『急に具合が悪くなる』とは、誰も予想がつかなかったはずだ。
私自身にはかすかな予感がありつつも、まさかこんな時にと思ったのだから。
そういう臨場感と御縁のある読書となった。
三度目のがん治療……手術のために入院した先で読み始めた。

二人の知性が、とにかく素晴らしい。

もっとみる

「人生会議」で思うこと。

吉本芸人の小藪さんを採用した「人生会議」のポスターの発送中止を、厚労省が決定した。

私個人としては、炎上だろうがなんだろうが、そういった考え方や取り組みがあることが人の目について、まず知ることができる機会を作ったということにおいて、大成功だと思う。人の目について話題にならなきゃ、何も始まらないんだから。

ただ、死を目前にした人の心というのは想像以上に壮絶な過程を経る。それは本人だけでなく家族も

もっとみる
ケアとPR:人生会議ポスター炎上に思うこと。

ケアとPR:人生会議ポスター炎上に思うこと。

(以下に、今回話題となった人生会議ポスターの図柄がサムネイル表示されます。見たくないという方は、この先を読まないか、高速で画面をとばすかなどしてください)

僕が厚生労働省に講演に行く日の朝に、その騒ぎはおこった。

なんてタイムリーに、僕の専門分野に近いところに火種を投げているんだ…と感じ、こんなツイートをして霞が関に向かう(講演のついでに、炎上に対してご意見くださいと、先方から連絡も入る)。

もっとみる

伝えたかったこと(ポスターへの想い)

先日、『人生会議』のポスターをプレスリリースで知り、私はSNSで想いを発信した後に、厚生労働省に『お願い』という形の意見書をファックスしました。

その翌日となる昨日、厚生労働省は、予定していたポスターの全国送付を止め、配信する予定だった動画も公開を止めたと知りました。

厚生労働省に届いていた意見書は、その時点では2枚であるとも知りました。

私は、担当部署が、その意見を真摯に受け止めて、再考し

もっとみる
ぼくは何のソムリエなのだろう。

ぼくは何のソムリエなのだろう。

うちの近所に、よく行くコーヒー店がある。
暮らしの保健室で出しているコーヒーをブレンドしてくれている店でもあるし、リレーショナルアートでも協力いただいているお店だ。

このお店、コーヒーだけではなくお菓子も美味しい。
お菓子担当のやましたさんは退職されてしまったけど、そのレシピは健在で、いまも変わらない味を提供してくれる。
で、そんなある日にパフェを注文してみた。そして、もちろんコーヒーも。自分で

もっとみる

学歴ロンダリング、と言われて

僕は成城大学で文学を学んだ。師匠からは後に、「君は文学が好きなんじゃなくて、文学を通じて社会を考えるのが好きなんだよな」と言われたのだけれど、いずれにしてもゼミでの研究は楽しかった。もっと研究を続けたいな。そう思っていた僕は、大学3年の後半にはすでに、大学院に行きたいと考えていた。

とはいえ、親の勤めていた会社が破産するなどして、決して暮らしが豊かではなかった僕は、大学進学の時点ですでに数百万円

もっとみる

メディアがもたらす「報道ストレス」と「共感被害」

報道は、誰かの命綱になることもあれば、誰かを脅かす凶器にもなる。

2017年1月。ラジオ番組「荻上チキ・Session-22」で、「薬物報道ガイドライン」を作成した。薬物依存症当事者、自助グループ、家族会、医師、支援者、リスナー、メディア関係者とで作り上げたこのガイドラインが掲げた問題意識は、少しずつ広がっているようにも思える。

このガイドラインを作成するとき、意識していたことの一つが、「共感

もっとみる
初めて人の命を見た話

初めて人の命を見た話

まずはじめにこの話には「自殺」に対する表現があります。苦手な方は避けてください。

私が保育園の頃。
夜に、遊具を忘れたか何かで裏の空き地(塀で囲まれてたのでそこまでは1人でおっけーだった)にでた私が見つけたのは燃えている車だった。知らない車が燃えていて、すごく混乱していたことは覚えている。ただいかんせん昔の話なので、あの時に中で動いているように見えたものは、大きくなっていくにつれて脳内で保管され

もっとみる
「伝える」が、バズるに負けている。 #表現のこれから

「伝える」が、バズるに負けている。 #表現のこれから

今日もどこかのツイッターが炎上している。クソリプが飛び交い、誰かを傷つけている。いきなり激しい言葉で、自分と反対の立場の人を罵倒する。どれだけ一生懸命に対話をしようと思っていても、話が噛み合わない…。

20年前にネットが出てきたとき、もっと希望があった。力があるマスコミや権力者じゃなくても、誰もがネットの力で自由に情報発信をすることが出来るようになり、社会はもっと多様に、もっと良くなると思ってい

もっとみる
12万字の裏側で

12万字の裏側で

私と宮野さんは、出会いから別れまでの期間が経った10ヶ月しかありませんでした。ですが私たちの間には、文字数にしておよそ40万字のやり取りがあり、そのうちの30万字は書簡のやり取りの間に交わされています。

約12万字で構成される『急に具合が悪くなる』は、その裏側にある膨大な言葉のやり取りから生み出されたものでした。

今回はそこでのやり取りから見える風景を2つだけ紹介したいと思います。

宮野ー磯

もっとみる