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長編自己啓発ギャグ小説

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#文芸

夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】14(ラスト)

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

そんなときだった。
たっくんが茂太の隣に近寄った。
『かっこいいわよ。その調子よ』

柴田と弘樹は一瞬、たっくんが何かをしでかすのではないかと不安に刈られたが、これもまた要らぬ心配だった。

一瞬だけ、たっくんを見て頷く。
茂太は心の中から、ありがとうを何度も送った。

インタビューは終始、スムーズに進み、無事に取材終了を迎えた。
出場

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】13

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

まゆがマイクを握り、出場者に向かって言った。

『それではただ今から取材を行います。あらかじめお伝えした順番でインタビューさせて頂きます。インタビュアーは岩松茂太、収録は私、桜まゆが務めさせて頂きます』

まゆの挨拶と共に、茂太のマイクを握る手に力が入る。

『恥ずかしい限りです。本当なら私はそちらに座っているはずです。ですが人生は本当

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】11

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

そうこうしていると、まゆからの連絡が入る。

すぐさま向かうとだけ伝えて電話を切る。

ダッシュで外に向かう茂太の後を追うように、たっくんが浮遊しながら着いてきた。

『たっくん、昼も平気なのか?』
『霊が闇夜にしか姿を見せないってのは、人間が勝手に決めた都合のよすぎる解釈だわ。確かに私も人間だった頃、霊に対してそういう偏見を持っていた

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】10

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

少しずつ少しずつ現実の世界に意識が傾く。
やがて眠りから目覚めた茂太は目の前のオカマの霊にハッと気づいた。

『おはよう、茂太』
『お、おはよう。今日は何故、たっくんの姿が見えるんだ』
『それなら気にする必要なんてないわ』

久々にその姿を見せたたっくんは、やけに清々しく妙に寂しげだった。

あまりにもこの前とは違った覇気のなさに・・・

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】9

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

『茂太くん、君が現役で活躍していたことは、当たり前のように知っている。そしてフライパンズという中堅のお笑い芸人だったことも』

茂太はけして交わることなどない関係が、実現として目の前で起きていることに感謝して一礼した。

『光栄に御座います。これからはピン芸人として一躍スターダムに登り詰めてみせます』

豪快に笑う松木をよそにいつまでも

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】6

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

数日後。
茂太は柴田と約束していた待ち合わせである書店通りと呼ばれる並木道でひとり佇んでいた。

半時間も早く到着した茂太は一旦、並木道を離れ、建ち並ぶ書店の中から洋館を装った店内で時間を潰して待っていた。

普段は読まない書籍と向き合う。
心が落ち着き、コンビを解散したことが今では良かったと安心感に包まれる。

一方、弘樹はマネージャ

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】5

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

一時間ばかり経過し、皆が酔い店主まで酔い、今ではグラスや焼き鳥の空中浮遊を見ても誰も驚かなくなった。

そんな時だった。
がらがらと入り口の扉が開いた。

暖簾をくぐる黒一色のスーツに身を纏うひとりの長身のイケメン男が、長い黒髪をたなびかせて店内に入ってきた。

時間が停止したかのようにピタリとすべて止まっているようだ。
やがて、ざわめ

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】2

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

司会の紹介で挨拶が館内に響き渡る。
『続いてはフライパンズのお二人です。盛大な拍手でお迎え下さい』

一斉に館内に拍手の音がこだまし、颯爽とそれに乗って二人が勢いよく姿を見せる。

威勢のいい出だし、爽快なボケとツッコミ。
いつもと変わらぬ出だしに壇上の二人はひとまずの安堵感を覚える。

今回は新ネタではあったが、これまでのネタ同様、客

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】10

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

扉を叩いても声を張り上げても啓太は部屋から出てこない。

うっすらとした意識の状態ではあるものの、無意識がなにやら騒がしいという感覚だけを捉えていた。

しかしながらもまだ睡眠の最中にいた。
取材陣は強行突破を試みた。

もはやその場に顔を合わせた一同には、ベストセラー作家・高木啓太に対する尊厳やマナーなど微塵の欠片や素振りさえなかった

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】9

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

混浴でも男女、人のいりは絶えない。

それはひとえにごもく旅館の実績はもちろん、広告手段に能力が長けていたし、何よりも顧客のニーズを汲み取っていたからでもあった。

そのもっともに口コミ効果やメディアの活用だった。

最近の若者は大胆なのか、モラルに欠けているのか、ごもく旅館の混浴温泉の効能も後押しして利用客は後を絶たない。

ふと声の

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】7

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

数分後。
『ふぅ~。かなり勾配のきつい坂道だったな』
『ほんとですこと、あなた。さぞお風呂が気持ちいいかと思います』
『ここをくだれば到着だな』
『はい』

二人はゆっくりと石段をおりていく。
見渡せる眼下の海辺から押し寄せる香りが、ほのかに風に揺られて鼻にはいっていった。

しばらくすると女将であろう。

確かに美しい女性が派手な和服

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】6

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

三時間の乗車時間を経て、ふたりはごもく旅館のある駅に到着した。

さすがに三時間の電車移動となると街並みは姿を変えていく。

本当に旅館に来たのだなと思わせてくれる風景が広がる。

座りっぱなしでもちろん、ふたりのお尻は筋肉痛に襲われ、このときばかりは京子の意識は自身のお尻の鈍い痛みに囚われた。

下車し終えた啓太と京子は、鈍痛を抱えな

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】2

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

翌朝になり、外は快晴。
まだ眠っている啓太を起こさずにひとり、寝室を出る。

庭の観葉植物に如雨露を使って水を撒く。
今年の夏もまた温暖化の影響で、例年にも増してうだる暑さだった。

一通り、花の水撒きを終えると、額の汗を拭ってキッチンへと移動した。

サンドイッチと卵焼きをこしらえる。
サンドに挟む食材は、ハムとレタスとシーチキンだっ

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夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】1

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

高木京子は作家である高木啓太の妻であり、結婚して十年の月日が経過する。

幼少の頃から日記を欠かさず綴っている。
そんな京子は高校を卒業と同時に、住まい近郊に構えるフィットネスジムでレッスン生として通っていた。

現在の夫と出会い、引っ越してからも一年のブランクはあるものの新しい環境にも慣れ、再びフィットネスジムに通い始め三十年にもなる

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