夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】2

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

翌朝になり、外は快晴。
まだ眠っている啓太を起こさずにひとり、寝室を出る。


庭の観葉植物に如雨露を使って水を撒く。
今年の夏もまた温暖化の影響で、例年にも増してうだる暑さだった。


一通り、花の水撒きを終えると、額の汗を拭ってキッチンへと移動した。

サンドイッチと卵焼きをこしらえる。
サンドに挟む食材は、ハムとレタスとシーチキンだった。


そしてこれらは啓太の大好物で、朝の主な二人の食事メニューでもあった。
京子は内助の功の務めを立派にかつ懸命に日々こなしていた。

この日も啓太は書斎に籠って執筆に専念し、京子は昼間にフィットネスジムへと出かけた。


京子の日課である日記を付ける行為には感心していた啓太であった。


その日記には必ず、京子のフィットネスに対する想いが赤裸々に綴られており、作家である夫には自身の文章力や表現力を見てほしいと日頃から常に懇願されていた。

妻には明かしていないが、啓太は京子の文才に才能の片鱗を感じていた。


京子の文章には真心が存在していた。
書斎でふと手を止めて紅茶をすする。

京子と出会った頃を思い出す。
胸に込み上げる熱い気持ちを、啓太は押し殺すことが出来なかった。


そんな過去の情景を思い描いていた頃、京子はレッスンに精を出していた。


京子自身、OL時代にはバリバリの全盛期だった運動神経と体力を懐かしみ、今では随分とパワーが落ちたものだと稀に落胆はするものの、趣味で一貫し、楽しむことに目的を置いていたからこそと納得もしていた。

一時間、汗を流し、シャワーを浴びる。
京子もまた啓太が小説家を目指して奮闘している当時を思い描いていた。


啓太とは書店で出会ったことを切っ掛けに話しが弾み、恋愛に発展し、同棲生活を経て今に至っていた。


一緒に暮らすまで京子は生命保険会社の営業を請け負っていたが、性格も後押しし、業績が悪く、次第に退職せざるをえない状況になったことから依願退職を申し出た。

啓太と暮らした初春の時期、京子は働いていた頃の影響で、脱力感や焦燥感、極度の精神疲労に見舞われていた。


引っ越しをして5年が経過したあたりから、パートではあるもののスーパーで働き始め、今では見事なまでに手腕を発揮し、衣料担当を任されていた。


啓太からは無理に働かなくていいと言われていたが、今ではすっかり辞めるつもりもなく続けていた。

会社側も京子には辞めてもらいたくないようで、毎月特別に恩給まで支払っていた。


生保社員時代ではまったく相手にされずにもいたが、スーパーでの仕事と関わって接客姿勢で評価が高く、利用客から評判を呼び、パートではあるものの見事にリーダーとしても抜擢されていた。

きっと京子の性質が同じ接客とはいえ、ノルマのあるなしで精神的に大きな圧迫や過度の緊張感をもたらし、職務に影響したのではなかろうか。


今では内面から輝き出る京子の笑顔やおしとやかな仕草は一級品といって差し支えなかった。


自我の強かった京子は、啓太との暮らしやフィットネスから多くの学びを得て、それを無駄にせず活用したことで知恵に転換させた。

最高の夫婦と彼らを知る者は口を揃えて言う。

フィットネスを終えた京子は自転車にまたがり、自宅へと向かった。


啓太は原稿用紙に次から次に浮かぶ閃きをペンに託して走らせた。


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