夢を叶えた五人のサムライ成功小説【高木京子編】9

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

混浴でも男女、人のいりは絶えない。


それはひとえにごもく旅館の実績はもちろん、広告手段に能力が長けていたし、何よりも顧客のニーズを汲み取っていたからでもあった。


そのもっともに口コミ効果やメディアの活用だった。

最近の若者は大胆なのか、モラルに欠けているのか、ごもく旅館の混浴温泉の効能も後押しして利用客は後を絶たない。


ふと声のする方向へ顔を向けると、ふたりの若々しい女の姿が視野にはいった。
大学の休みを利用して訪れたようだ。
会話から視てとれた。


やがて京子と柴田の存在に気づく。

そっと温泉に足をつけ、女子大生ふたりはやや恥ずかしそうに肩までお湯に身体を浸けた。


効能にあった冷え症と便秘を改善するために、パンフレットを見てここに来ることを決めたそうだ。

ふたりもまた会話が弾み、自己紹介を始めた。
『私たちは同じ大学の人間です。私は瀬川真由美と言います』
『私は白藤美香と言います』


四人は意気投合し、話しがだんだん盛り上がる。
柴田は今、裸パラダイスのハーレム状態にその身を委ねていた。


口元は弛み、鼻の下が長くなっていて、本来の渋味はまったく消え失せていた。

そんな様子を知ることもなく、部屋ではひとり、啓太が鼾をうならせて眠りこけていた。


統吉のインタビューが終わりに近づく。

統吉が小声で高木さんは?と合図を送った。
その合図を見てディレクターはじめ取材陣からは、突然のサプライズであるベストセラー作家・高木啓太のオファー承諾を思い出して、一目散に彼の眠る部屋へと押し掛けた。

取材陣一同が啓太を求めて館内をドタバタと走り回る。


この日、ごもく旅館は大盛況を果たしていたが、同時に混雑した模様を開館以来、体験していた。


取材陣が高木夫妻の部屋まで辿り着く。
カメラマンのひとりがコンコンと扉をノックすると同時に、高木さ~ん、まもなく出番ですよ~と親切に声を掛けた。

じんわりと睡魔がひいていく。
取材陣の声はますます大きくなっていく。


啓太が完全に眼を覚ました頃には、温泉に浸かる京子はもう、柴田の話しのペースにしっかり洗脳されていた。

統吉と静香の二人は最後のインタビューに向けてスタンバイしていた。


静香は大ファンである高木啓太と肩を並べて取材に応じることの出来る幸せを噛み締めていた。

客人たちの応対に一生懸命の仲居たちは、そんな女将の姿・・・いや、表情を廊下で素通りするたび、かなり、引いていた。


あまりにもこの日の静香の表情は普段の凛としたおしとやかな女将のそれとは完全に違っていた。

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