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#命

アイスに教えてもらったこと

いのちはね
この世界の誰かを助けるために
やってくるんだよ
猫のアイスは
わたしを助けるために
やってきた
傲慢かもしれないけれど
そう思うんだ
アイスがやってきて
わたしはほんとうに救われたから
わたしがしてあげられることなんて
なんにもなくて
アイスがいるだけで
わたしはしあわせなのに
わたしも誰かを
助けるために
この世界に生まれたんだろうか
そしてわたしは
その誰かを
助けることができたん

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きっと神様から見れば
ちっぽけで
吹けば消えてしまうような
わたしのいのちだから
わたしもきみも
誰しもが
明日消えるともしれない
儚い存在だから
夢のような
生きるということ
だけど、このいのちを支えるもの
わたしの中で
たったひとつ
きみの中で
たったひとつ、
たしかに
燃える炎は
わたしをわたしたらしめる
きみをきみたらしめる
無限のエネルギーのかたまりなんだ
その炎は
神様にだって手出しは

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言葉の命

言葉の意味とはなんだろう
言葉の命とはなんだろう
言葉にはないきもちを
言葉にしようとする
この試みはなんだろう
ありふれた言葉だっていいじゃないか
けれど言葉に新たな意味を見出したときの
言葉に新たな命を吹き込んだときの
この感覚はなんなのか
言葉が言葉自体
新たな意味を見出すとき
わたしのなかに
あなたのなかに
見えない
新しい命が
生まれるのだ
その命は
いつかの命とつながっているようで

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いのちとたましい

わたしは
ここにいるのだった
わたしの明と暗
陰と陽
まわる
めぐる
明は他人に分け与え
暗は自分であつかうもの
こことはどこか
わたしのそとをめぐるわたしと
わたしのなかをめぐるわたし
両方あって
わたしという
不思議ないきもの

みんな
そこにいるのだった
それぞれの明と暗
陰と陽
みんなに同じようにあるのに
みんなそれぞれに違う
個々に意思を持ち
個々にめぐる
いのちというもの

ひとりでい

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命の重みを知らない人

命の重みを知らない人は
自分には永遠の命があるとでも思っているのだろうか
自分にも死があることを知っていれば
他者の死を
他者の生を
そして自分の生を
尊ぶこともできると思うのに
自分の生、すなわち
いかに生きるかということ
それを知らない人は
死んでいるのと同じ
人間は不思議で
同じように目や耳や鼻があって
同じ姿形をしているのに
人間を捨てた人たちが
平気で人の上に立ったりしている
いや、人の

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死を前に

死を前に

死を前にしたとき
生きているわたしと
苦しみに耐えるあなたとの輪郭の
境界にあるものはなんだろう
わたしはあなたに近づきたいのに
近づききらない何かが横たわっている
その何かが口惜しくて
わたしはあなたが残したゼリーを食べてみる
あなたになったつもりで食べてみても
あなたにはなりきれない
かつて、あなたに誘われて食事に行ったとき
「おいしいね」
と言い合って食べたあの魚の煮付けには
確かな味があっ

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問い

問い

暮れ行く光を見つめながら
虎は
なぜおれは虎なのかと
自らに問いかけた

もう何日も
獲物を狩れていなかった
食べないことで
初めて虎は考えた

なぜおれは狩るのだ
なぜ木の実や草だけで
腹を満たせないのだ
なぜおれは爪を立て、歯を突き立て、顎で肉を引きちぎるのだ

弱った体で獲物を追いかけるが
迷いが邪魔をして
追いつけない
虎は不思議でしかたがなかった

なぜおれは虎なのだ
なぜ鳥や虫や馬や象

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野に咲く花

野に咲く花

野に咲く花は
咲く場所を選べない
芽を出したところが
たとえコンクリートの隙間でも
力のかぎり咲いて
その生涯を全うする
歩くこともできず
帰る家もなく
寒さ暑さに耐えながら
風に揺られて
土に根を張り
それでも
しあわせそうに咲いているから
わたしたちは
今ここに生きていること
感謝しなくては
とおもう

道路の脇に咲くちいさな彼らがいなければ
この世界は存在しない
わたしたちは生きていない

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