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野に咲く花

野に咲く花は
咲く場所を選べない
芽を出したところが
たとえコンクリートの隙間でも
力のかぎり咲いて
その生涯を全うする
歩くこともできず
帰る家もなく
寒さ暑さに耐えながら
風に揺られて
土に根を張り
それでも
しあわせそうに咲いているから
わたしたちは
今ここに生きていること
感謝しなくては
とおもう

道路の脇に咲くちいさな彼らがいなければ
この世界は存在しない
わたしたちは生きていない
この広い世界の
何かひとつ欠けても
いのちは繋がらないのだから

この世界に脇役なんていない
彼らもわたしもカラスもミミズもミジンコも
みんなみんな主役なのだ
彼らはそれを知っているようで
知らないようで

胸を張って
まっすぐに背を伸ばして
そこのみにて生きる彼らは
美徳すら知らないが故に
彼ら自身が美徳で
気高く勁く美しい

わたしも野に咲く花のように
わたしだけの場所で
精いっぱい
いのちのかぎり、生きて
仕合わせをこの身で確かめたい
この世に生まれたことを歓び
いのちを繋げたい
ちいさな彼らのように
すべての生きものたちのように

2020.4.30

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