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笑いながらディストピアな世界にひきこまれる「クオリティランド」

<SF(62歩目)>
設定はバリバリのSF作品で、乾いた笑いの先には、怖~いディストピアの世界が待っている。

クオリティランド
マルク=ウヴェ・クリング (著), 森内薫 (翻訳)
河出書房新社

「62歩目」はドイツの2017年度のベストセラー。

マルク=ウヴェ・クリングさんは、ドイツのお笑いの芸人の一人とのこと。
よくある芸能本なのかな?と思いきや、全ページ「乾いた笑い」で読み進められる。(皮肉が多い)

しかし、結果としてはSF作品のツボを見事に押さえている作品でした。
テーマは、「行動ターゲティング広告」で、いわゆる「おススメ(レコメンド)」を行きつくとこまで進めるとどうなるのか?
それと、「機械は過ちを犯さない」を徹底的に追及するとどうなるのか?です。

「レコメンド機能(おススメ機能)」の開発のスタートは2006年頃です。既に20年近くの歳月を経て、今のスタイルになっている。

YouTubeでも、amazonでも、インスタグラムでも、常に私に「おススメ」が投下されてくる。

購買は容易くなり、購入回数は増加する。
これが、プログラムが「無意識下まで予想するようになると、頼まなくても届けられる」ようになります。
※現在、開発中で「近日中に国ごとにリリースされる」
主人公の様に「ダメ男」だと、人に知られたくない恥ずかしいものがデリバリーされてくる事態に。。。

それと、人間がいかに「利己」の動物であり、「嘘」をつくのか?があからさまになっている昨今。

国民は誠実で「過ちを犯さない」「公正な行動」を求めていくと、既存の政治家は全員討ち死に。統合した為政者の判断にAIを入れていく要求が必ず出てくる。

この先の世界が「ポジティブ(バラ色の未来)」と「ネガティブ(暗黒の未来)」になるのですが、なんと!この作品は2バージョンあって、結末が「ポジティブ(バラ色の未来)=ライト版」と「ネガティブ(暗黒の未来)=ダーク版」の2冊を刊行したとのこと。

ドイツ国内では「ネガティブ(暗黒の未来)=ダーク版」がベストセラーで、日本で翻訳出版されたのも「ネガティブ(暗黒の未来)=ダーク版」とのこと。

この「試み」が「いいね!」ですね。
プログラムが生きるのは、「マルチタスク処理」と「if分岐」です。
おそらくあとわずかで、「物語」は一方通行の路から、シミュレーションゲームの様に読者が選択する(if分岐を処理する)ことにより、色々な結末が楽しめる世の中になりそう。
その先取り作品です!

※ムーアの法則通り、演算スピードが発展すると間違いなく起きる。
 おそらく、「著作者」による大量の訴訟が発生するが、その訴訟のさなかに汎用的なゲームの様なコンテンツが出てくると思う。それが「本(文字コンテンツ)」なのか?「絵(マンガ)コンテンツ」なのか?「動画コンテンツ」なのか?は不明ですが、最初はバカにされたものでヒットが生まれる。。。

すると、こんな試みが古典になっていく気がします。

※あまり考えたくない世界かもしれない。
 しかし、「ウォルト・ディズニー」の投資先に大量のAI開発のスタートアップがある。オリジナルの「アナと雪の女王」が、「セクシーアナ」や「涙なしでは語れない貧乏アナ」や「意気地なしアナ」等々に切り替わっての更なるヒット作品が出る感じ。

エンタメって、いかに人の心を動かすか?ですから、「リメーク」された「アナと雪の女王」や「ハリーポッター」が創出される気がしています。
これは、前世紀にSFの古典の世界観をファンが「if分岐」を処理していた。

今世紀に入ってからは、オリジナルの作者が分岐した世界を「承認」することにより新人作家が登場して、且つオリジナルがまたバカ売れした。
これと同じ動きです。

近日中に、世界で一番売れたSF作品が「デューン(砂の惑星) フランク・ハーバード」が、今世紀に入って中国の「三体(さんたい) 劉慈欣」に切り替わる。

この「三体」は既に、劉慈欣さんが認めたスピンオフ作品を「三体」シリーズに入れています。

結果として、販売部数は増加。且つ、またまた若手がスピンオフ作品を劉慈欣さんに送っている。

前世紀はスピンオフ作品は出版されていなかったが、2010年代以降はシリーズとして強化を図る時代になっている。

同じことって、「アナと雪の女王」(ディズニー)や「ハリーポッター」(ワーナー)がやりそうな気がする。

この作品を読んで感じたことは、どうもSF作品の大ヒットは「現代の読者」だと「ネガティブ(暗黒の未来)=ダーク版」の様です。
社会が閉塞しているのか?理由は色々と唱えられますが、間違いなくマーケティングデータとして「ペシミスト」的なものが求められている!と感じました。

次の時代を考えるのに最適な「乾いた笑い」の作品です。

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