マガジンのカバー画像

ごまちゃん

10
運営しているクリエイター

記事一覧

風の故郷

風の故郷

僕の部屋の前を
吹いていたすきま風が
突然なにかを思い出したらし
故郷に帰っていくのを見たよ
きっとほら
風も誰かを
愛したりするのだろうな

燦々と晴れた日
どこまでものびるまっすぐな道
メタセコイア並木が
遠くて近い歴史の数々を
おしえている

将来という
不安なひとつぶが
砂漠にある桜桃の実のように
ほんのり甘く
実ってほしい

僕の部屋の前を
吹いていたすきま風が
突然なにかを思い出したら

もっとみる
追憶線にのって

追憶線にのって

ぼくがここを出ていくとき
山が風が
海が空が
時間が光たちが
追いかける
そうさここを出ていくのは
ぼくがトップバッターなのだ
だんだん景色が変わってしまって
すきな時間がほどけていく
ぼくがここを出ていくとき
朝が夜が
夕方が昼下がりが
川が森がトンネルが
追いかける
いつまでも、いつまでも
ぼくはゆっくりと
おもいだす

春よいそげよ

春よいそげよ

僕の棲む部屋
遠い遠い彼方の街
桜が舞い散る音がきこえる
僕は中学校のころに
いちばん好きだった
エッセイを
校庭で読んだことを
おもいだす

春よ あせらないでおくれ
でもすこしだけ
早歩きでこっちに来てくれたなら
僕は君とふたりきりで
話したいから

春よ 寄り道はいいけれど
迷子にはならないでおくれ
青い灯が点滅し始めた
私はしまうまに乗って
あなたの面影を感じたりする

ああ 
春よ
これ

もっとみる
柊の葉

柊の葉

柊の葉が

なつかしい道を映していた

たくさんの思い出が

この胸にあふれて

ふんわり揺れて

あそこの森の幼い歌は

どこへといくのか

ただ流れていく

遠くフクロウの鳴き声が

ここで生きていると

教えてくれて

ほのかなこの静寂よ

とめどなく

あの光景へと

変えてくれ

ああ 時よ

僕の秘密を明かすなら

こんなにも苦しませずに

穏やかに眠らせてくれ

明日という

ときめ

もっとみる
Stand by Sea 〜そばにいるから

Stand by Sea 〜そばにいるから

浜辺の街で暮らしているから

さざ波の音がいつもきこえるんだ

でもいまは悲しみの果ての果てだから

静かなところでじっとしていたいよ

海の底にいるかもしれないあなたに

いますぐにでも会いに行きたいよ

どうしてぼくをのこして

行ってしまったのだろう?

どうしたらもう一度ふたりで

話せるのだろうか?

Stand by sea

旅に出るよ

できるだけうつくしく

かなしみたいから

もっとみる
白夜のうた

白夜のうた

もう二度と夜なんて

来なきゃいいさ

もう二度とあんな夜は

味わいたくはないよ

白夜のなかで

そう思ってる

極夜のうた

極夜のうた

ここは極夜

もう久しくは

陽の光を見ていない

いつかまた日が昇るそれまで

ここでずっとずっと

待っている

暗闇がいっぱい

暗闇がいっぱい

暗闇は暗いところだけにしか

あるわけじゃないんだ

ぼくはふとそんなふうに

思ったんだ

暗闇は僕の心のなかにも

   君の心のなかにも

   あいつの心のなかにも

   あなたの心のなかにも

   おけらの心のなかにも

   雲の心のなかにも

   さみしい夜のなかにも

   暗闇はいっぱい

   あるんだ。

うずくまっていた人が

そこにあるちいさなギターで

歌を歌い始

もっとみる

ピース make2

ある歌をつくる時

そこにはめなければならない

言葉があるとする

それがもしもどうしても

見つからないとき

それがたとえるなら

小さなジグソーパズルの

1ピースであるなら

ぼくらはけっこうからっぽだ

それは揺るぎのないことで

でもあきらめきれずにいる

そうだ意外ともしかしたら

歌うことなんてなんだって

いいのかもしれない

大切なのは誰に聴いてもらうかと

その人がよろこん

もっとみる
コヨーテがおりてくる

コヨーテがおりてくる

ha ha ha ha ha…

あの山脈のいただきの雪どけ水たちが

春の海へと帰ると

昨日までの雨が

なつかしい花に朝露をたらしていった

ああこの霧は晴れそうにはないよ

ああまた心の奥底に沈殿した泥は

ぬかるんでいく

今夜、山からコヨーテがおりてくるよ

さあ湯を沸かそうかな

きりりともみこむ冬が来ても

だいじょうぶだよ

ここで言葉にできぬものたちと棲んで

どのくらいたった

もっとみる