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2021年2月の記事一覧

蜥蜴

夜の帳が降りる頃
宵闇から現れた蜥蜴
無くした物を探す為
姿を晒し街に潜む
人には見えやしない
大切な物を取り戻し
漆黒の森へと還る
足音をかき殺しながら

骨すら残らない

灼けつく風が吹く
街を歩くならず者
貴方は狂っていると
言い放つ母は遠くへ
骨すら残らず消えた
父の姿も思い出せずに

隠し切れない

心に秘めた思いを
隠し切れないで
解き放つ哀れな人
結末は何時も変わらず
囚われて縛られる
淡い命を還すまで

弥栄の罪

限りなく栄えた
この国はもう直ぐ
終わりを迎える
そう言った学者は
吊るされて死んだよ
回遊魚の様に
泳ぎ続けなければ
溺れちまうのは
みんな同じなのさ
この国が罪を受ける時
何の曲を歌おうか
考える暇も無く
太陽に抱かれてしまった

ミッドナイトSP

降り注ぐ様な
雨に差されて
僕らは笑った
道化師みたいに
ミッドナイトSPの
エンジンを掛けて
この街を流せば
全てが変わるのさ

泣いていたルカ

人殺しの夜に
泣いていたルカ
悲しみなど
何処にも無いのに
歪んだ空の下で
泣いているルカ
憎しみは何時だって
溢れているのに
彼は延々と泣き続ける
まともな人に為りたくて

去り際

咲く事も出来ずに
枯れた鬼灯が
去り際に言った
言葉を思い出せない
何度考えても
それは朧げに浮かび
儚く消えたんだ
真夏の霙みたいにさ

動悸

向日葵の雨が降る夜に
僕の胸は壊れそうだ
もう二度と動かない
ZZR1100の様に
捨てられるのだろう
この共感出来ない世界で
何を探せば直るのかすら
僕には決して分からない
心など何処にも無いのだから

有鉛

貴方が思う程
私は強くなくて
有鉛の中を
溺れ生きている
誰かのせいにしても
何も変わらないと
知っていながら
今日も憎んでしまう
唇を噛み殺して

胎界

永遠と呼べる程
生まれていない
絶望を知る程
積み重ねていない
外の世界は
残酷だとしても
それを眺める術すら
まだ知らない
孤独な胎界の中で

カフェイン

錠剤のカフェインを
飲み干す引き籠り
眠らなくて良い様に
僅かな時を止める為に
睡魔を感じなくなった夜
偽りの永遠を手に入れた

ディキシーランド・ジャズ

ディストピア映画が
終盤に差し掛かる頃
爆音で流れるジャズ
クライマックスさえも
忘れてしまう程に
延々と鳴り続ける
観客を置き去りにして

ランブルフイッシュ

狭い水槽の中では
生きられない
為らず者達が集い
今日も街を走る
風も山も空も海さえ
置き去りにして
命懸けのレースは続く
例え砕け散ろうとも

支配と使役

蛹に為るコールガール
もう夢は見ない
顔役に支配されるなら
このままで構わないと
使役する事に慣れた
管理者は時に疑問を抱く
自分は奴隷ではないかと
答えを知りながら今日も
飴と鞭で他人を動かす
死すら遠過ぎる夜に