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2021年1月の記事一覧

小窓

病室の小窓から
貴方は外を眺めてる
赤く燃える異国を
楽しそうに笑いながら
僕は横目で貴方を
確認して顔を伏せる
何も知らない振りをして

彷徨う文鳥

都会の片隅で
彷徨う文鳥
哲学を学んでも
実際は生かせず
路頭に迷い
日々を削り取る
残された時が
僅かだと知っても

霧雨

道に迷わない様
祈るジプシー
霧雨が深くて
上手く歩けない
目指す街は
まだ遠過ぎて
彼らは少し休んだ
路傍の石の様に

黄色のデルタ

懐かしい夢を見た
黄色のデルタで
悠々と峠を流して
遊んでいた頃の夢を
今の僕は潜水服を
着たままで動けずに
ただ横たわって
瞬く事しか出来ない
新しい體はもう二度と
動く事すら叶わずに
僕は夢に縋るのだろう
自由に動ける妄想に

影縫い

真夜中まで
生きた証を
廃れそうな
この街の中
僕は探した
背中の影が
縫い付けられても

崩壊

砂の城は音も無く
崩れて消えた
いつだれが作ったか
そんな事すら語られず
海へと還って逝く
全ての始まりへと

虚像

藁の犬に
手を合わせ縋る
弱い人達は
その安い命を
奪われて消えた
危険な午後に

Ⅾ・エンド

煌びやかな世界を
転げ落ちる高級取り
自らの意志で
何もかも手放した
エンドロールに
何が流れるか知らず
その命を絶った
埋められぬ孤独の中で

コアントロー

夢で見たよな
洋菓子の中には
コアントローが
入っていたんだ
何かに醒めた
人達は皆
惹かれる様に
それを求めた
砂糖に群がる
蟻の様にさ

ラヴァーソウル

バラックに溢れる
貧民達の声は
今日も届かずに
赤い空へと消えた
幸せの青い酉は
何処にも飛べずとも
不幸ではない筈さ
僕はそう思うんだ
愛を歌うのは
もう疲れたんだよ
魂には響かず
消費されてしまうから

モロゾフの心が

酷く透明で純粋な
モロゾフの心が
壊れたら僕は
何をするのだろう
いつもの喫茶店で
紅茶を頼んだり
ミートパイをお土産に
買ったりするだろうか
分からないままで
僕は生きてしまう
如何でも良い事を
罪の様に積み重ねて

エタノール

エタノールを売る男
日々に疲れ果てた女
純粋な悲しみが溢れ
川へ変貌する刹那
真相を知ってしまった

白狂

震えてしまう夜は
白狂にすら為れない
巷では皆
壊れているのに
怯えても過去は
笑いながら追って来る
何処に隠れようが
的確に僕を狙って
眠り切れない朝は
白狂にさえ為れない

メロンソーダフロートシティ

激しい嫉妬と焦燥に
駆られたタクシードライバー
幼い娼婦を囲う雑居ビルへ
武装して乗り込んだ
知らない用心棒達を撃ち殺し
彼女の元へと向かう
自らも撃たれ傷付きながら
ブーツに隠したナイフで
最後の相手を刺し殺し
その場で意識を失った
目が覚めると何時もと同じ
メロンソーダフロートシティで
タクシーを転がしている
明日もきっと変わらずに