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女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 最終話 一葉と二葉
我が家こと高天家の食卓はかつてない賑わいを見せていた。
私が電話で家に連絡を入れると、お母さんは大喜びで快諾してくれた。
現在、宴が始まって小一時間も経過したが、宴は落ち着くどころか時間が経つにつれますます盛り上がって行った。特に喜びの感情を露わにはしゃいだ様子を見せているのは我が相撲部の面々ではなく、お父さんとお母さんの方であった。
お母さんは笑顔で次々と料理を運んできて、お父さん
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第34話 帰還
私達は鬼門を通り、儀式の間を後にした。
最初はどうなることかと思っていたが、結果は悪神にも勝利するという大金星獲得で終わった。話が確かならば、二度とこの街が悪神に狙われることはないだろう。私達は平和を勝ち取ったのだ。もう家族が妖の餌食になる心配をする必要も無くなった。明日からはまた元通りの生活を送ることが出来るのだ。
少し前の自分なら考えもしないことだった。あんなにも憂鬱だった日常が戻っ
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第33話 決着
……かに思われたんですけれども!?
私は死を覚悟し、目を閉じた。でも、何故だか消滅する気配が微塵もなかった。
何が起こったの? と、私は目を開く。目の前にバチバチと稲光が走っているのが見えた。それは、雷電丸が先程神氣で創り出した雷神の大槌だった。大槌は私に振り落とされることもなく、寸前で停止していた。
「あれ? 私、どうしたの?」私はいつの間にか身体の自由を取り戻していたことに気付く。
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第32話 雷神の咆哮
私から肉の器の支配権を奪い取った悪神オロチが高笑いを上げると、たちまち全身から瘴気が噴き出し、雷電丸の神氣とぶつかり合った。
瘴気と神気がせめぎ合い、同じ極同士の磁石を近づけたかのように、両者は弾き飛ばされた。
雷電丸と悪神オロチは二人とも土俵際まで吹き飛ばされるも、寸前で踏みとどまることが出来た。
土俵際に佇む二人は互いに遠目で睨み合った。
「オレの瘴気を弾き返すとはなかなかやる
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第31話 代理戦争 其の二
悪神オロチが作った肉の器に入り込んだ私は、ゆっくりと目を開いた。
何とも不思議な気分だ。目の前に私が佇んでいるのが見える。正確には雷電丸が、であるけれども。
雷電丸は酷く驚いた表情でこちらを見つめていた。
私は、そんな彼を無視して肉の器を見回した。何処からどう見ても元の私の肉体と造りが一緒だった。眼の端に銀色の輝きが見えたので手に取ると、それは私の髪の毛だった。どうやら髪の色だけが黒
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第30話 代理戦争 其の一
「雷電丸とは確か伝説の二代目大横綱と同じ名前だったような……何故一角鬼がその名を?」
沼野先輩は唖然としながら静かに呟いた。
一角鬼が消滅し、周囲は静寂に包まれた。それまで溢れ返っていた妖達の下卑た笑い声も獰猛な唸り声も聞こえて来なかった。彼等の表情は一様に蒼白し強張っていた。目の前で起った出来事に頭が追い付いていない様子だった。
「ごっちゃんです!」雷電丸は蹲踞しながら一礼する。
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第29話 穢れ祓い 其の七
一角鬼は頭を下げ、額から鋭くそそり立った大きな角を使って雷電丸にぶちかましを仕掛けて来る。
雷電丸の眼光が鋭く光り、角を真っ向から額で受け止めた。
巨岩同士が衝突し合うような激しい音が響き渡った。
まさか、雷電丸、強いては私の額が貫かれたかも!? と一瞬だけ心配したのだが、それは杞憂に終わった。
雷電丸の額を貫いたかに思われた一角鬼の一撃は、雷電丸の薄皮一枚も傷つけることが出来
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第28話 穢れ祓い 其の六
全てを捧げる。
雷電丸のその一言が、妖達を狂喜させた。たちまち周囲から怒号のような大歓声が響き渡る。
悪神オロチはがさっと手を上げると、ピタリと妖達の怒号が止んだ。しかし、周囲に立ち込めた熱気と獰猛な殺気だけは停留したままだった。妖達から鋭い視線が私達に注がれている。もし協定がなければ、きっと奴らは一斉に私達に襲いかかって来ただろう。
「どうじゃ? この挑戦、受けて立つかの?」雷電丸は
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第27話 穢れ祓い 其の五
下顎を喪失した一角鬼は、一瞬よろめくと倒れそうに足をふらつかせた。
だが、寸前のところで堪えると、だらけた頭を両手で支え雷電丸を睨みつけた。何かを叫ぼうとするも、下顎を失った状態では喋ることもままならず、言葉にならない声を喉から絞り出すのがせいぜいだった。
「おい、《《先輩》》! 何を言っているかさっぱりじゃぞ? ちゃんと人間に分かる言葉で喋らんかい!」雷電丸は挑発する様にそう言うと、鼻
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第26話 穢れ払い 其の四
どうしよう。このままじゃ、私は、正確には雷電丸がだが、あの一角鬼とかいう強そうな相手と戦う羽目になってしまいそうだ。
先程の雷電丸の挑発を相当根に持っているのか、彼の鋭い眼光は土俵で四股を踏んでいる間中、ずっと雷電丸に向けて放たれていた。
それに付け加えて、大きく裂けた口からは食欲旺盛な涎がボタボタと顎を伝って土俵に滴り落ちていた。その目はからは鋭い眼光が放たれているが、時折目を細めて笑
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第25話 穢れ祓い 其の三
すると、ドシン、ドシンと地面が揺れ始めた。まるで巨象でも歩いているかのような足音と震動が私達に近づいて来た。
私達の前に大きな人影が現れると同時に震動は止まる。
恐る恐る人影に目を向けると、全身毛むくじゃらで頭に大きな角を生やした大男が佇んでいた。大きく裂けた口からは二本の鋭い牙が剥き出しになり、その瞳は漆黒の闇を思わせる。
それは、一言で鬼と呼ばれる存在だと分かった。全身から禍々し
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第24話 穢れ祓い 其の二
雷電丸と沼野先輩は額を衝突させた後、二人はほぼ同時にお互いのまわしを掴み上げた。以前の取り組みでは、雷電丸が沼野先輩を腰投げで土俵の外に放り投げてしまい圧倒的な実力差を見せつけた。
今回もそうなるだろう、と私は怪我でもしないだろうかと、沼野先輩の身を案じた。しかし、それは大きな間違いであることを思い知らされた。
雷電丸の表情から笑みが消失する。二人は互いのまわしを掴み取ったまま身動き一つ
女将ちゃん、ごっつあんです! ~伝説の大横綱、女子高校生に転生す~ 第23話 穢れ祓い 其の一
鬼門の中に入ると、そこは一筋の光もない闇の世界だった。
ここが鬼門の中なの? 何も見えないわ?
私は漆黒の闇を前に恐怖を感じ身震いさせた。
「安心せよ、双葉よ。すぐに明かりが灯るからの。ほれ、見てみい」
雷電丸がそう言うと、遥か奥の方から点々とした小さな明かりが灯って行き、それは徐々に近づいて来た。
一陣の風が私の横を通り抜けて行った。炎の様な明かりはその時、私の間近に灯った。