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怪異を嗜む白銀の魔法使いは奈落で嗤う ~妖とり怪奇譚 姉妹惨歌の章~ 第1話『終わりの始まり』
■ あらすじ
明野リンは魔法使いである。その美しい銀色の髪を見て人は彼女を『白銀の魔法使い』と呼んだ。そんな彼女にはランという名の姉がいた。しかし、ある日、ランは母小夜子を殺害し逃亡する。以来、リンは母の復讐の為に実の姉を探し続けた。それから数年後、リンの生まれ故郷の街の上空に世界を滅ぼす程の呪力を秘めた地獄の巨釜が出現する。誰が何の為に地獄の大釜を現世に召喚しようとしているのか。一つ分かっていることは、この事件に実姉ランが深く関わっているということだけ。こうして、リンは実姉ランに会うために死地へと赴くことに。彼女の手にある銀糸が妖し気に光り輝くのであった。
■ キャラクター・設定
▶主要な登場人物や用語の説明
● 明野リン 11歳 主人公兼ヒロイン
世界に十二人しかいないとされる始祖の魔法使いの一人。その中で『白銀』を司ることから銀の少女などと呼ばれる。
銀后糸と呼ばれる魔法の糸を用いて瞬時に魔法陣を構築し、様々な魔法を行使することが出来る。その為、リンの行使する魔法は『銀糸魔法』とか『あやとり魔法』などと呼ばれる。リン自身は単に『あやとり』と呼ぶ。無詠唱魔法である為、魔法発動速度でリンの右に出る者は皆無である。
新雪のように真っ白で清らかな肌。赤紫の瞳はルベライトのような輝きを放っている。体全体を覆えるほどの潤沢な銀髪は月明かりに照らされてこちらも宝石のような輝きを放っていた。幼いながら美しさが際立った顔立ち。一言で雪の妖精と表現しても過言ではない美少女。ただし、その性格は外見とはかけ離れた守銭奴。とにかく金にがめつく、タダ働きを何よりも憎悪している。
母の小夜子とは死別しており、唯一の肉親である姉のランはとある事件の後、行方知れずとなっている。現在は母の弟子でもあったアズマに引き取られている。口では嫌々ながらも、実はアズマとの生活を心より楽しんでいる。
世界唯一の魔障探偵として、日々、怪異事件の解決に尽力している。ただし、莫大な報酬と引き換えに、ではあるが。
● 拓勇アズマ 35歳 リンの養父
温厚温和。善人の皮を被った仏と呼ぶに相応しい人格者。とある事件の後、一般人だったのだが魔法使いの能力に目覚める。
現在は魔導ギルドの上級魔導捜査官として日々、怪異事件の解決に尽力している。数多の使い魔を行使することから『百戦の魔法使い』の二つ名を持つに至る。
年齢=彼女いない歴なのが唯一の悩み。いつかは大恋愛の末に結婚したいと願っている。だが、現在は魔法の師匠である小夜子の遺児リンとの二人きりの生活を謳歌しているので、結婚願望は吹き飛んでいる感がある。
義娘であるリンのことを誰よりも溺愛し、彼女がピンチの時はいつでも駆け付けることを己の義務としている。
● 桜花剣聖 ??歳 外見年齢18歳
魔導ギルド日本支部の支部長。リンと同じく始祖の魔法使いの一人。『剣聖』を司ることから桜花剣聖と呼ばれる。
目鼻たちがはっきりとした顔立ち。透き通った白い肌。黒く澄み渡った宝石のような瞳。八頭身の体型は有名なモデルと見紛うほどの完璧なプロポーション。薄紅色の長い髪を後ろでまとめ、頭の右上には手毬と桜の髪飾りをつけている。常に着物を着用し、腰には『神魔刀』と呼ばれる刀を差している。
清楚で穏やかな雰囲気を醸し出しているが、実は極度のロリコン。ショタコンでもある。とにかく可愛いもの好きであり、リンのことは性的対象として見まくっている。隙さえあればいつでもリンにセクハラをしようと目論んでいる。
始祖の魔法使いの中でも最強の戦闘能力を持つ。魔法使いとしての序列は第二位ながら、その影響力は全世界にまで及ぶほど。
外見年齢は若く見えるが、実年齢を知る者はいない。噂では源平合戦時代よりも前から存在しているとまことしやかに囁かれている。
● ラン 17歳 リンの実姉
リンの実姉。物静かで清楚な佇まいの美少女。妹と母親とは違い髪の毛は漆黒。母より白銀の魔法使いの次期継承者として嘱望されていた。
しかし、ある事件をきっかけに行方をくらませる。その事件というのが白銀の魔法使い弑逆事件である。つまり、ランは継承を間近に控えたある日、突然、母小夜子を殺害し行方不明になったのだ。
現在では様々な魔障事案においてその姿を垣間見、魔導世界で危険度S級の指名手配犯となる。
般若の仮面で右半分の顔を覆っている。和服に身を包み腰にはいかなる魔法をも霧散させ無力化させる斬魔の小太刀を差している。
時折、性格を荒々しく豹変させることがある。その時行使する銀糸魔法はリンをも凌駕する威力を放つ。
母の弟子であったアズマに対し、密かな恋心を抱いている。
● 小夜子 リンとランの実母
先代白銀の魔法使い。かつて、白銀の魔女と呼ばれ、魔法使い世界に恐怖の代名詞として知れ渡る。呪いを全身に受けており、触れれば一瞬で呪いが伝染してしまう為に右手以外は誰も触れることが出来ない。呪いの進行を抑える為に全身に包帯の様な呪帯を巻いていてミイラ男みたいな風貌になっている。
● お米丸 桜花の使役する最強の使い魔
掌に乗れる程度の小柄な体躯。胡麻粒のように小さく可愛らしい眼。頭には『米』の文字をあしらった兜を被っている。足先まで伸びた黒髪。身体には何故かスクール水着を。右手には竹光を持っていて、小さな口元からは常に「ごじゃるー」という単語が発せられている。
一言で愛らしさの化身。このままでは世界最弱の使い魔であるが、誰もそんなことは気にしない。主に癒し担当の存在。
しかし、七つある全ての封印を解くと、世界最強の使い魔に変貌する。三つ封印を解くだけでも最強クラスの武神に変化し、後にリンを大いに助けることになる。
■ 用語説明
●始祖の魔法使い
世界に十二人しか存在しないとされる高位の魔法使い一族。それぞれ以下の称号を持つ。
『剣聖 白銀 穢れ 漆黒 聖剣 魔剣 調理 断罪 黒鉄 鎮魂 深淵 餓狼 覇王』
リンは白銀を司り、桜花は剣聖を司っている。
●ジンマ
始祖の魔法使い家のみが使役することが出来る使い魔。その名の通り、神と悪魔、両方の性質と強大な魔力を秘める。
『ジンマ、来ませり』の招来呪文で召喚することが出来る。
●銀糸魔法
銀皇后と呼ばれる膨大な魔力が漲った銀糸を使い、様々な召喚魔法を操る。
銀糸を手繰り、魔法陣を瞬時に構築して無詠唱で魔法を発動することが可能。銀糸を手繰り魔法を発動する姿があやとりをしている様に見えることから『あやとり魔法』とも呼ばれる。魔法使いの中では珍しく、物理攻撃スキルにも優れる。使用する銀糸は金剛石にも匹敵する強度を持ち、敵を切り裂くことも可能である。まさに攻魔守全てにおいて優れているスキルと呼べるだろう。
■銀糸魔法 一例
1) 神槍『天逆矛』
銀糸で『槍』を構築することによって神の槍を召喚し、防御不可能の攻撃を放つ。
2) 破滅の塔ポリボロス
殲滅特化型魔法。銀糸で『塔』を構築することによって、かつて古代の戦争で攻城兵器として用いられたバリスタを連射型の魔法兵器として再構築し召喚したもの。七色に輝く全属性の魔法の矢を一秒間に百発程度連射することが可能である。
3) 破魔の赤壁
全属性防御魔法。銀糸で『壁』を構築することによって、全ての魔法攻撃、並びに物理攻撃を防ぐ魔法障壁を召喚する。ただし、呪いや即死魔法の類は防ぐことが出来ない。
4) 死蝶
呪いの即死魔法。銀糸で『蝶』を構築することによって、冥界に生息する死の蝶を召喚し、敵を即死させる。これを防ぐには術者を超越する魔力をもって魔力結界を展開するか、術が完全に発動する前に術者の心臓を破壊する以外に術はない。
■ シナリオ 本編
■ 某日 北海道上空 大禍時 (薄い闇の夕方)
N〈その日、北海道上空に現れたのは絶望だった〉
北海道上空を全て覆い尽くす程の地獄の大釜が逆さまになって浮かんでいる。
それを見て唖然としながら上空を見上げる人々。
N〈突如として上空に現れたソレは地獄そのものだった〉
大釜の蓋が外れると、そこから地獄の亡者や鬼、様々な妖が地上に降り注がれる様に降り立つ。
N〈人々が事態に気付いた時には既に手遅れだった。たちまち地上は阿鼻叫喚の地獄と化した〉
鬼や妖、亡者に襲われる人々。血に染まる大地。
恋人と抱き合いながら鬼に食い殺される若い男女。
家族を救うために妖に立ち向かい命を落とす父親。
子供を救うために鬼の前に立ちはだかり首を斬り落とされる母親。
母と父の亡骸に寄り添い泣きじゃくる幼い子供達に亡者が群がる。
その時、閃光が走ると、それは斬撃となって亡者を斬り裂いた。
そこには着物姿に刀を手にした美女━━桜花剣聖の姿があった。彼女の背後には魔導ギルドに所属する大勢の魔導士達の姿もあった。
桜花「桜花剣聖が来たからにはこれ以上の狼藉は許しません!」
桜花は手にしていた刀━━百魔が封印された『神魔刀』を天に掲げると叫ぶ。
桜花「ジンマ、来ませり!」
桜花の将来呪文に応じ、百体もの使い魔達が出現する。いずれも伝説にその名を残す魔神級の使い魔達である。
桜花「私の可愛いジンマ達よ、命じます。地獄の侵略者どもを蹂躙せよ!」
桜花の命令に応じ、百体の使い魔達は一斉に侵略者達に襲い掛かる。
すると、上空に浮かぶ地獄の大釜より世界を震わせる様な断末魔の叫びが轟く。
桜花達が見上げると、大釜の中から巨大な鬼の姿が現れ大地に降り立った。
天を衝く程の巨躯を誇る破壊の鬼を前に、その場に居た誰もが絶望に塗れた。
だが、桜花は微塵も恐れた様子も見せず、神魔刀を掲げると叫んだ。
桜花「なにを恐れることがある。我らには毘沙門天の加護があるや! ならば有象無象の魔障ごときに散らせる命ではない!『桜花剣聖』の名のもとに若き魔導士達よ、我に続け!」
桜花の後ろに居た魔導士達の顔から恐怖が一掃されると、桜花に応えるように勇猛果敢な叫びを一斉に上げた。
桜花「貴方達は予定通り作戦を実行してください。わたしはあのデカブツをなんとかします」
桜花の言葉に従い、魔導士達は地上で暴れている鬼や妖達に立ち向かっていった。
桜花は全身からマナを迸らせると、一番高いビルの屋上まで跳躍し、破壊の鬼と対峙する。
桜花「始祖の魔法使い家が一つ、『桜家』が当主『桜花剣聖』を恐れぬならばかかってくるがいい!!! 我に斬れぬ魔障はないと心得よ!」
桜花の全身から膨大なマナが立ち昇る。
桜花のマナに反応した破壊の鬼が桜花を睨みつけた。
桜花「さあ、鬼退治と行きますよ!」
桜花は跳躍すると、破壊の鬼に斬りかかるのであった。
■ 同 街の惨劇の様子
鬼や亡者達に次々と食い殺される人々。
そこに、鬼に追い詰められる母娘の姿が。
幼い娘は母を守ろうと両手を広げて鬼の前に立ちはだかる。
娘「来ないで! お母さんをいじめちゃ嫌!」
母「や、止めなさい!」
母親は慌てて娘を庇う様に鬼から後ろに隠す。
残酷な笑みを浮かべた鬼の手が母娘に伸びた。
これまでか、と絶望し母と娘は力強く抱き合う。
アズマ「煉獄魔法『フェニックス』!!!」
その瞬間、上空から黒衣の男が現れると右腕から不死鳥を召喚し鬼を焼き尽くした。
黒衣の男━━拓勇アズマS級魔導捜査官は煙草に火をつけると、静かに煙を吐き出した。
母「あ、貴方は?」
アズマ「ただの通りすがりのオッサンですよ。それよりも、早くお行きなさい。ここの先にオレの組織が避難者の救助にあたっています。あともう少し頑張れば貴女も娘さんも助かりますよ?」母娘に振り返るとニッコリと微笑む。
その時、アズマの前方から亡者の大群が近づいて来るのが見えた。
恐怖に引きつり、悲鳴を洩らす母親。
アズマ「さ、早くお行きなさいな。とにかく後ろを振り返らず走りなさい。そうすればまた明日をむかえられます」
母はアズマに一礼すると、慌てて走り始めた。
娘「おじちゃん、ありがとう!!!!」バイバイ、と母親におぶられながらアズマに手を振る。
アズマは微笑を浮かべながら娘に手を振り返す。
アズマ「そこはお兄ちゃんって呼んでもらいたかったべな」苦笑すると煙草を地面に落とす。
アズマは襲い掛かる亡者の群れを前にして不敵にほくそ笑んだ。
アズマ「あーあ、大事な任務があるってのに余計な時間を食っちまった。でも、見捨てるわけにはいかんべさな」
アズマの脳裏にリンの姿が過る。
アズマ「だって人間だもの。仕方ないわな」
アズマはそう呟き、再び右手に不死鳥を宿らせるのであった。
■ 同 白銀の魔法使い家総本山 リンの生家 当主の間
白銀の魔法使い家の魔導士達が屋敷内で斬り殺されている。
血に染まる屋敷内。
当主の間にも魔導士達の惨殺死体が転がり、当主の間は血の海と化している。
そこには二人の人物の姿が。
顔の右半分を般若の面に覆われた和服姿の剣士の少女━━ラン。
ランの目の前には恐怖に震えた白銀の当主でもあるランの実父の姿が。
ラン「お久しぶりです、お父様。お元気でしたか?」血に塗れた小太刀を右手に持ちながら微笑する。
父「な、何をしに来たのだ!? こ、この反逆者めが!?」
ラン「久し振りに帰省した実の娘に随分な物言いですね……そんなに怯えなくても大丈夫ですよ? お父様は殺しませんから。今は、まだ」
ランは歪な笑みを口元に浮かべる。
ラン「私はただ真実が知りたいだけなんです。あの日、何故お母様が私にあのような惨たらしいことをしたのか。ああ、大丈夫ですよ。この顔のことはもう気にしておりませんから」ニッコリと微笑みながら、般若の面に手を当てる。
ランの脳裏にアズマの笑顔が過る。
ラン「だって、何をしたってもうあの方は私を許してはくださらないでしょうから……」辛そうに唇を噛み締める。
父「何のことだ?」
ラン「いえ、こちらのことです。それで答えてはいただけないでしょうか? 出来るなら私も実の父を拷問にかけるような親不孝はしたくありませんが拒否するのであれば話は別です。私は真実を知る為ならば喜んでこの般若の面の様に鬼になりましょう」
ランはそう言って小太刀の切っ先を実父の喉元に突きつける。
実父は小さな悲鳴を洩らした。
その時、無数の光の筋がランを取り巻いた。
銀の魔法の糸が出現すると、瞬時にランの全身に巻き付いた。
ラン「意外ね、まさかリン、貴女がお父様の身を案じて駆け付けるだなんてね?」
当主の間に銀の髪をなびかせた少女━━明野リンが静かに入って来る。
リン「質の悪い冗談は止してちょうだいな、ランお姉ちゃん? 私は一度たりともそこの男を父親だなんて思ったことはないわよ? それはランお姉ちゃんもでしょう?」
実父「おお!? リンではないか!? よくぞ駆け付けてくれた。早くこの反逆者を討ち取るのだ!!」
リン「馬鹿は黙ってろ」
リンはそう言いながら右拳に銀糸を巻きつけると、勢いをつけて実父の顔を殴りつける。
勢い余って実父は壁に吹き飛ばされ、意識を失って倒れる。
ラン「優しいのね、リン。お父様を助けてあげるだなんて」
リン「何のこと?」
ラン「そうしなければ私は容赦なくその男を殺してしまうところだったんですもの」
リン「勘違いしないで。目的は一緒。私はただ知りたいだけ。あの日、何が起きたのか。どうしてランお姉ちゃんがお母さんを殺さなければならなかったのかを、ね? もし拒否するなら力ずくでも話してもらうわ」
ラン「貴女に出来るかしら?」
ランが呟くと、幾筋もの閃光が走る。
ランの小太刀による斬撃によって、ランを捕縛していた銀糸が全て断ち切られる。
リン「なら、久し振りにやりましょうか。ガチの姉妹喧嘩をね?」銀糸を手繰る。
ラン「ええ、やりましょう。今度はお互いに命をかけて、ね?」小太刀を鞘に納めると両手に銀糸を手繰る。
互いに睨み合うリンとラン。
リンは瞬時にあやとりをするかのように銀糸を手繰ると、『槍』の魔法陣を形成する。
ランは瞬時にあやとりをするかのように銀糸を手繰ると、『刀』の魔法陣を形成する。
リン「神槍『天逆矛』
リンの背後に出現した魔法陣から巨大な神の槍が出現する。
ラン「神剣『天叢雲剣」
ランの背後に魔法陣が出現し、そこから剣を持った武神が出現する。
そして、互いに発動した銀糸魔法が炸裂する。
リン「ランお姉ちゃん、どうしてなの!? どうしてお母さんを殺したの!?」一粒の涙を零しながら叫ぶ。
ラン「真実を知りたいなら、私を倒してみせなさい。話はそれからよ!?」
二人「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!????」
次の瞬間、衝撃波が発生し、当主の間は眩い光りに包まれた。
N〈時間は遡る━━。〉
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