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映画について

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映画の感想を書いています。劇場で観たものをメインに、たまに配信のも。個人の備忘も兼ねて簡単に書きます。
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2020年6月の記事一覧

映画『ペイン・アンド・グローリー』

映画『ペイン・アンド・グローリー』

芸能界の眩しさと危うさを美しく描き切った傑作。

華やかに見える映画監督や舞台俳優の暮らしは、破天荒で病的で繊細で脆くて儚い。ゆえに美しい。
私もかつて芸能界に憧れた。あのまま進んでいたら、と想像するとき、煌びやかな照明に照らされる自分と、闇の中で苦しむ自分の両方が見える。そして重たい感情がこみ上げる。私は、そこで生きていけるほど、強くなかった、と。
映画を撮り続けられず、持病に侵され燻るような毎

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映画『レ・ミゼラブル』

映画『レ・ミゼラブル』

人も正義も何一つ信じられなくなるのが差別。若い世代に何を残すのか問う、今この世界中に刺さる映画。ひたすらに胸が痛い。負の連鎖はここで止めなければと強く思う。

ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台で、パリから17キロの郊外にあるモンフェルメイユは移民が多く住み犯罪多発地区。この街で生まれ今も暮らしているレジ・リ監督が現状を伝えるために作ったという。

モスクを作り子供たちを指導して自治を

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映画『在りし日の歌』

映画『在りし日の歌』

ひとりっ子政策に翻弄された夫婦の物語。185分の長い映画なのに、もっと続きを観ていたかった。1980年代から2010年代までの場面は非連続で出てくる。主人公の老け具合、車や携帯電話や洋服なども含めて、ああこの頃かと想像しながら頭の中で物語を埋めるようにつなぎ合わせていくのは楽しかった。

同じ日に生まれた一人息子を大事にする二つの家庭は国有企業の社宅で親戚同士のように暮らしている。

楽しい庶民的

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映画『彼らは生きていた』

映画『彼らは生きていた』

殺し合いなんて、誰もしたくないんだ。

第一次世界大戦のイギリス軍の映像と証言を繋いでモノクロ映像をカラー着色で、ロード・オブ・ザ・リングのピーター・ジャクソン監督が手掛けたというから凄い。
兵士が志願してから過酷な戦地に行き地獄を見てから帰るまで、残されていた映像と肉声が生々しい。

嬉々として流行に乗るように我先にと志願する若者。年齢をごまかして入隊した15歳や17歳の少年は軍服もタバコも似合

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映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』

映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』

フランスとデンマークの合作。舞台は19世紀の帝政ロシア。探検家の祖父が船長として北極点へ旅立ち行方不明に。帰ったら次の冒険は一緒に行こうと言われていた孫の少女。2年越しで私なら見つけられると北極海へ船出する。

美しかった。ベタ塗りの色と色で見せてくる新しい感覚のアニメ。北極海の氷山の海を進む船のリアルに惚れ惚れ。こんなふうに氷山の中を進み、氷山は崩れ船を破壊するのかという恐怖。

公開は2019

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