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映画『彼らは生きていた』

殺し合いなんて、誰もしたくないんだ。

第一次世界大戦のイギリス軍の映像と証言を繋いでモノクロ映像をカラー着色で、ロード・オブ・ザ・リングのピーター・ジャクソン監督が手掛けたというから凄い。
兵士が志願してから過酷な戦地に行き地獄を見てから帰るまで、残されていた映像と肉声が生々しい。

嬉々として流行に乗るように我先にと志願する若者。年齢をごまかして入隊した15歳や17歳の少年は軍服もタバコも似合っていない。あどけない笑顔でカッコつけてカメラ目線を送る。

荒野の前線基地は映画『1917 命をかけた伝令』と重なる。

ドイツ兵捕虜と打ち解けて笑い合う場面が目に焼き付いた。「この戦争には何の意味もないと意見が一致した」と。殺し合い人なんてきっと誰もいないんだ。それなのに、と無念な気持ちで観る。

武器を置いて穏やかに数日過ごせば争いは止められる。きっと平和はくる。そう信じたい。


印象に残った箇所も書き留めておく。
・19歳だと嘘ついて志願した15〜18歳も相当いた。役人は「違う、もう一度」と年齢を19歳と言い直させていた。
・軍に支給された硬い革のブーツが足に合わないので柔らかくするために小便をして一晩おいた。ブーツが足に合わないんじゃない。足をブーツに合わせるのだと上官。
・トイレはないから土に掘った溝と並行に丸太を置いて7人まで同時に腰掛けた、ある日丸太が折れて全員溝に落ちた。
・捕虜のドイツ兵はおとなしかった。最初は怯えていたが徐々に打ち解けた。「この戦争に全く意味はない」と意見が一致した。

・前線で突撃してほぼ全滅で穴に隠れて九死に一生を得た。隣で友人や上官が次々と死んでいった。地獄だった。
・帰っても誰も戦地で何が起こったか聞いてもくれない。敗戦の話なんて誰も聞きたがらない。おまけに「お前長い間どこ行ってたんだ?」と聞かれてキレた。

資料映像をストーリーを持ったドキュメンタリーにする素晴らしい仕事に嫉妬した。一時期映像を仕事にしていた身として、私もこんな仕事がしてみたい。地道で根気のいる大事な仕事に憧れるが、私の精神力は持つだろうか。

公式サイト

http://kareraha.com

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