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ある始まりの世界の物語
夏が終わり、色付いた山にひとつの
岩穴がありました。
そこは、優しいモノが住みついていると
村人が話す岩穴でした。
ある日のこと、誰も寄せ付けぬような空気の中、好奇心旺盛な少女が遊びに来たようでした。
岩穴をひと目見て、興味の湧いた少女は、
誰も寄せ付けぬような空気も気にせず
目をキラキラさせ、駆け足で中に入りました。
中へ入ると、少女は足を止め言いました。
「こんにちは。あなたはだぁれ?」
そこ
鳥居を行く者~唄い語るモノ~
─其の道を行く姿を………た者は
…………に至ると言う─
小さな声が唄うように聴こえてくる。
「誰の声か。唄うのは誰だ?」
ゆっくりと歩きながら洞窟に響くように
問いかけた。
すると、その問いに呼応するように聞こえてくる。
「この地で遥か昔果てた身は、この場所に
葬られた。何故かこの場所から離れることの
叶わなくなった者。
人の恐れる心はこの場所を恐ろしい場所と
してしまったようだ。
澄んだ夜空のような…
ふと見上げると
澄んだ夜空が見える。
一つずつ、壊れていく自分の心。
誰かの望む自分になって
夢を売る。
ただ此処に、今があるだけ。
温かな場所を望んでも
壊れてしまう。
ならば、始めから望まない方が
幸せというもの。
何かを持ち続けるから望むのなら
もう要らない。
私は夢を売る。
いつか、
いつか、この夜空のような心に
なれるだろうか。
こんな夢を売るような
つまらない自分でも。
いつか…。
ある始まりの世界の物語 Ⅵ
いつしか少女は、娘となる頃だった。
ある時、突然に見えたものを娘は
自分だけではかかえきれなくなっていた。
「私たちは、山と共に生きてきた。山がここで終わると言うのなら、私たちも共に終わろう。」
先の未来を見た娘に人々は、真っ直ぐな目で
そう告げた。
娘は、見た通りになってしまう未来を思い、
涙を流した。
やがて訪れることを思い、娘は涙を流し言った。
「どうして…」
人々の言ったことは、頭では解っ
何処かの彼方の大樹の話
古に思い馳せ
見つめ行くは
変わらぬ姿の香の山
大樹に向かい歩く
手を伸ばして大樹に触れる
その瞬間近くにいたものは慌てたように
「いけない!」
と叫んだ。
気づくと大樹の中に吸い込まれるように
入っていることに驚きを隠せない
近くにいたものは言葉を続ける
「その大樹に吸い込まれたらもう戻れない
吸収されてしまう、消えると言ったらいいか。
だから触れてはいけないんだ」
残念そうに言うそのものに答
ある者の独り語りは紺碧の…4
ある日、いつものように夜空を見上げていると、…碧が口を開いた。
「諦めるのか。」
突然に、問いかけてきた。
その問いに図星を突かれたようでもあった。
そうして、黙ったままいると溜め息をついた。周りを警戒するように見渡すと、一言険しい表情で…碧は言った。
「気を付けろ。」
何となくわかった気がしていつの間にか頷いていた。
その深夜だったか。
夜道で頭から胴体にかけて赤黒い蛇と出会った。
首を持ち上げ
あの桜の木の奥 舞う桜は雪の如し
「全てが止まったような夜だ。」
止まってはいないが、動きを止めたようにさえ見せる空に向かって呟いた。
そんな様に思わず自嘲する。
「なに…他愛もないことだ。何があったとしても、過ぎ去れば流れ行く。」
望むは、ただ…だけだ。
傍にある桜に向かい、舞い散る花びらを浴びて
見つめた。
「ダメ。隠しておくの…。」
聴こえてきた声は桜の木からだった。
「暴かないで…。」
小さな声をたどり、木の榁を見つけた
飲み込むような眼の者との話
始めは拙い綴りかたで
降り積もる思いを感じては文字にした。
やがて、綴りかたを覚えて
少しずつ言の葉にし、文章にしていった。
夜空を見上げ少しずつ思い出していった。
時間の流れは関係なく思い出されることの
全てを綴っていった。
そんな事の中に「今」があった。
ある時、綴ることに二の足を踏んだ。
作りゆく空と、過ぎ行く作られてきた
これまでと言う海に気付いたからだ。
綴ったところで、何かが変わる訳じ