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ある者の独り語りは紺碧の…4

ある日、いつものように夜空を見上げていると、…碧が口を開いた。
「諦めるのか。」
突然に、問いかけてきた。
その問いに図星を突かれたようでもあった。
そうして、黙ったままいると溜め息をついた。周りを警戒するように見渡すと、一言険しい表情で…碧は言った。
「気を付けろ。」
何となくわかった気がしていつの間にか頷いていた。
その深夜だったか。
夜道で頭から胴体にかけて赤黒い蛇と出会った。
首を持ち上げた蛇と目が合ったと思うや否や、驚くほどの速さでこちらに向かってきた。
避けようとして、草むらに転んでしまう。
すると、蛇は視界から消えたと思ったのかナリを潜めた。
その間に、ゆっくりとその場を離れゆっくりと移動していると、斜め前に老爺と童が歩いている。
ナリを潜めていた蛇は、人の気配に気付きそちらに向かって驚くほどの速さで、身体を大きくくねらせたかと思うと私の横を通り過ぎ、飛びかかろうとしていた。
老爺も蛇に気付いていたようで飛びかかろうとする蛇を木刀で殴った。
木刀が命中し、驚いた蛇は気を失っていた。
その隙に老爺と、童と一緒に足早にその場を後にした。
…碧が「気を付けろ」と言ったのはこのことだったのか。
それから、しばらく蛇は近くにいた。
しかし、ジッと見ると不思議そうな顔をしている。次第に蛇は小さくなっていった。
気付けば、身体に寄ってくることもあった。
そうして数日を過ごす内に姿を見せなくなった。
…碧はまた言うのだ。
「何でもないことだ。」
そんな訳がないだろうという気持ちを
まるで見透かしたかのように。




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