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飲み込むような眼の者との話

始めは拙い綴りかたで
降り積もる思いを感じては文字にした。
やがて、綴りかたを覚えて
少しずつ言の葉にし、文章にしていった。
夜空を見上げ少しずつ思い出していった。
時間の流れは関係なく思い出されることの
全てを綴っていった。
そんな事の中に「今」があった。
ある時、綴ることに二の足を踏んだ。
作りゆく空と、過ぎ行く作られてきた
これまでと言う海に気付いたからだ。
綴ったところで、何かが変わる訳じゃない。
でも、怖くなった。
確定してしまう気がしたからだ。
「やっぱり変わらない。」
呟くと、後ろから不意に問われる。
「また、戻るか?」
聞かれた言葉に跳ね返すように、振り向き答えた。
「だから、人は人間なんだ。今を懸命に生き、見失う瞬間に人間であることを忘れる。見方を忘れるんだ。何度、言い合ったか知れないけれど、意味を無くす事を恐れはしない。意味を無くす事を恐れなくなったのだけは前とは違う。」
笑いながら、その者の眼を久しぶりに見た。
「勘が良すぎたな。」
と、溜め息をつきながら、その者は言う。
「なぜ?という問いはもう飽きたろうと思って
趣向を変えてみた。変わらないな、と言わせたくなかったから。」
しばらくの沈黙が流れた。
「それでも、やはり変わらないな。」
その者はそれでもそう言った。
「だから、さっきからずっと私の腕に触れてきていたのか?」
なんと、その者は笑っていた。
思わずその笑い方に何か言いそうになるが、
ぐっとこらえ黙り込んでしまった。
「しまった…振り向くんじゃなかった。」
そう言った時には遅かった。
…だから、書く事に二の足を踏むのをやめた。
拙いだろうと、何だろうと、書く。
このことをどう表していいか、迷っていたが
やっと書くことができた。
自分なりの抵抗として。





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