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津の奥山の銀の狼─湯屋娘─

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津の奥山の銀の狼シリーズです。
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津の奥山の銀の狼─湯屋娘─結びその先へ

津の奥山の銀の狼─湯屋娘─結びその先へ

娘は、早朝夜明け前に山に歩いた。
そこは、舞をする山でもあった。
さらさらと山の頂上から流れる小川を
手で触れると、そこにひとりの女性が立っていた。

娘は気づき、声をかける。
『この水はとても澄んでいて、気持ち良いですね。』
女性は、嬉しそうに微笑み、娘を見る。
『水は、恵み。循環。巡り。流れの理解。
カタチが有り、カタチは無い。そのような
ものです。』
娘も微笑み、女性に向き直る。
『今日、舞

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津の奥山の銀の狼─湯屋娘─

津の奥山の銀の狼─湯屋娘─

津の奥山の隠れ家 そこは鏡の様な水の豊かな地。
津の奥山からは、夜毎狼の咆哮が聴こえる。
その咆哮は、悲しみを帯びては山に響く…。
そこには、かつて人が『神』と呼んだものが居た。彼女は元は人であった。

そして、もうひとり、はにかむ様な
笑顔の歳若い娘。
彼女は、小さな湯屋で住み込みで働く娘だった。

ある日、村では毎年歳若い娘の中から
巫女をする娘を選び、奥山の大神に
舞を捧げていた。
このよう

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