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マッチ箱の記憶。「書く」を仕事にした私が、そこにいた。

今、とにかく人生初ぐらいの大掃除をやって
おりまして。

春の暖かいうちにちゃっちゃっと済ませておけ
という声が、どこからともなく聞こえてきた。

聞こえた束の間、計画が早くも挫折しそうなん
ですが。

集中できないんですよ、

あれやこれやでてくるさかいに。

ベッドの下からやな、まずと思ってごそごそ
引き出すものを引き出してみました。

床との隙間の所に、昔書いた出版物とかを
箱に入れてしまってあるんですが。

箱に入れておく癖のあるわたしは、茶色い誰かに
もらったハガキ入れにこんなものたちを入れて
ありました。 

こんなんでてきました。

革の箱。家族の中で
これを欲しいという人がいなくて、
捨てるの可哀そうやんかぁって
なってわたしが引き受けました(*‘∀‘)


むかし、わたしは大阪に住んでいた頃
コピーライターしながら、お店紹介の
雑誌で駆け出しのライターをしていました。

今みたいに、食べログなどない時代です。

そこで、取材先でお世話になったお店には
お店のロゴの確認も必要だからと、
マッチなどをもらうルールがあったのですが。

いくつか取材先で頂きました。
それを集めていたみたいです。


すこしだけ、出会ったお店たちを振り返って
みたくなりました。

①トゥール・ドール


トゥール・ドール

これは、神戸の諏訪山にあった展望台の
てっぺんにある素敵なレストランでした。

昔、とある雑誌が、接待特集を企画していた
時のものです。

1冊まるごとお酒オンリーの情報雑誌でした。

「接待」あたりまえやん、と強いられる時代に
働いておりました。

雑誌の紹介文としてはこんな感じ。

お酒や料理にもまして、素晴らしい眺めは
おもてなしにも効果的ですねみたいな、
眺望のよさをできるお店の紹介記事でした。

ま、オシャレって今でいうなんだろう
ま、そういう、インスタ向けのオシャレな
お店の代表のようなところでした。


こんな外観でした。


小かぶのポタージュ。
このスープ皿の
ふちの面積の多さがフレンチですな。

つぎは、六甲。

②OLD NEW


OLD NEW。
あの安藤忠雄さんの
設計でした。

六甲台の高台に位置するこのお店は
安藤忠雄さん設計とあって、コンクリート
むきだしの無機質な外観も魅力でした。

地元の御影石で作られたドーム型のお店。
一階がレストランになっていました。

イタリアの画家の名前「ドゥッチョ」に
ちなんだネーミング「ドラッチオ」って
いうカクテル飲んでみたかったなぁ。



つぎは、京都。

③ル・フジタ


ル・フジタ。
ちょっと、あちこちが
破けているのは、
大好きでいつも手元に
置いていたからなんです。

この頃は関西日仏学館の一室を
改造してフランス料理のレストランに。

店名はあの藤田嗣治画伯にちなんで。


ガーデンテラスではパーティもできる
ようなそんな緑に囲まれて素敵な
家庭的な雰囲気のお店でした。

プチタルととかタルトタタンが美味しかった
です。

タルトタタンとハーブティーです。


次は、神戸。

④塩屋異人館俱楽部


塩屋異人館倶楽部。

昔は住居として使われていた洋館を
そのままレストランに改築した外観。

海岸線沿いに建っていたので、海を
眺めながらの食事にぴったりのそんな
お店でした。
正面に噴水があって裏手には芝生が
敷き詰められた庭園がありました。

こんな感じの外観でした。

塩屋はジェームス山と呼ばれています。
1930年頃に、イギリス人の貿易商、アーネスト・
ウイリアムス・ジェームスが、神戸に住んでいて。

この塩屋あたりにイギリス人のための住宅地60棟
以上を宅地開発して、ジェームスの名にちなんで、
「ジェームス山」と呼ばれるようになったそう。

次は、大阪!

⑤カムヒュー・ロサンゼルス

カムヒュー・ロサンゼルス。

カムとヒヤーでカムヒューって
いう名前のレストラン。
大阪の西区にありました。

この名前は今でいう、パーリーピーポー
みたいなノリかな。

ここはお誕生日のパーティーにもって
こいで、手作りケーキのプレゼントと
記念撮影つきでした。

お酒はデカンタ売りというちょっと
面白い販売方法でした。

デカンタってこんなのですね。

次は、わたしがいちばん好きな京都の
お店のマッチなんです。

⑥ソワレ


大好きなので、店名もでっかく!


ソワレ。

好きなのでマッチもでっかくしました!

画家、東郷青児さんの作品!

戦後まもなく開店。
お店全体がレトロな感じで、
たまらなく好きでした。

お店の壁には東郷青児や
石坂春生などの画家たちの作品が
飾られていました。



店内にいても音楽が聞こえてこない。
BGMのないお店で。
会話している声も音が吸い込まれて
いくような。

みなさん静かに、佇んでいらっしゃい
ました。




このマッチにわたし肩入れしていますが
裏もすごくいいんです。

裏はこちら。

歌人の吉井勇の歌。
「珈琲の香にむせひ(び)たるゆうへ(べ)より 夢みる人となりにけらしな」
わたしは勝手に
たんかマッチと
名づけてます。
☕珈琲の香りにむせぶ日の暮れる頃、夢見るひととなってしまったようだよ☕


看板が乙女している!


宝石みたいなゼリーポンチだぜ。

編外編

取材させて頂いたこと多分ない
はずなんですが、このマッチも
好きなのにお店のことがあまり思い
だせない。

でもこういうテイストのお店は行き
倒していた気もするので。

行ったのかもしれない。
マッチのデザインがたまらない!

アンティーク喫茶。
SaRy。

ちょっとググりました。
かつて三宮にあったアンティーク喫茶でした。


大阪の街を離れてどれぐらい経つだろう。

片付けものをしていたら、マッチ達がでてきて。

あの頃のことを想いがけず思い出していました。

大阪時代は、仕事が向いているのかよく
わからないまま、こんなふうにしてお店を
取材させてもらっては、行ったり来たりしたり
立ち止まったりしていたんだなって。

今日紹介したお店も昨今の諸事情で、ほとんどが
閉店したり移転したりしていたんです。

唯一、京都のソワレは健在だったことがうれしい。

かつてそこにあったお店の証のように、マッチが
ここにあることもうれしい。

喫茶店や飲食店にマッチもなくなって久しいし。
それでも、このマッチたちは大切にして
ゆきたいなって思います。

わたしが仕事をしていた原点がそこに
あるような気がするから。

そして。

このマッチたちをみると、あの頃の初心の
気持ちを思い出せそうで、また新しい一歩が
踏み出せそうなそんな気がする、春の夜です。


ゆらゆらっと ほのおちいさく わらう日は
めらめらっと ほのおすくすく あの日を照らす

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