第6夜「バルサン」 「よし、これでほとんどの荷物は片付いたな」 6年暮らした高円寺に別れを告げ、新居となる茗荷谷へやってきたのが3週間前。 サボりまくっていた荷解…
第5夜「彼と会う日はいつも雨」 彼を初めて見掛けたのは梅雨の雨が降るグラウンドだった。 その日は傘を差さずに帰るには無理があるくらいの雨が降っていて、顧問が厳し…
第4夜「ジェネレーションギャップ」 いまから1256年前。ほんの些細なきっかけから人間界と魔界が真っ向から対立する大きな争いが巻き起こった。 両陣営とも甚大な被害を…
第3夜 「動く君と語る僕」 水曜日の16時。 雨上がりのグラウンドを走るバレー部をぼんやりと眺めるのに、窓際の俺の席はベストポジションだ。 普段は室内の体育館で汗を…
第2夜 「他人の人生では常に自分は脇役」 桜の蕾がチラチラと芽吹き出す頃。わたしの元に1通の招待状が届いた。 ジューンブライドへと誘う招待状の差出人には学生時代か…
第1夜 「黒糖さくらミルクティー」 「さくらミルクティー?」 「はい。それに黒糖をトッピングしたものが飲みたいなって」 その日は東京で季節外れの雪が降っていた。…
微糖のみるくてぃー
2024年8月1日 22:30
第6夜「バルサン」「よし、これでほとんどの荷物は片付いたな」6年暮らした高円寺に別れを告げ、新居となる茗荷谷へやってきたのが3週間前。サボりまくっていた荷解きも一段落つき、俺は久々にダンボールのない部屋に腰を下ろした。仕事場まで乗り換えせずに行けるという安直な理由で決めたこの街だが、街の雰囲気が自分の故郷にどことなく似ている気がして、すっかり第二の故郷と呼べるくらい馴染みの街になっ
2024年7月16日 22:30
第5夜「彼と会う日はいつも雨」彼を初めて見掛けたのは梅雨の雨が降るグラウンドだった。その日は傘を差さずに帰るには無理があるくらいの雨が降っていて、顧問が厳しいで有名な野球部やラグビー部ですら早々に部活を切り上げて帰ってしまうような天気だった。そんな土砂降りの雨の中、制服姿の彼は1人でゴールに向かってひたすらボールを投げていた。(変な人……)彼がハンドボール部に所属している同級生
2024年7月9日 22:30
第4夜「ジェネレーションギャップ」いまから1256年前。ほんの些細なきっかけから人間界と魔界が真っ向から対立する大きな争いが巻き起こった。両陣営とも甚大な被害を出し、最終的には勇者と魔王の直接対決という形で決着を迎えた。160日間にもわたる激闘の末、勇者との戦いに敗れた魔王は、魔界と人間界の狭間の奥深くに封印されることになったのだった ー〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
2024年6月21日 22:30
第3夜 「動く君と語る僕」水曜日の16時。雨上がりのグラウンドを走るバレー部をぼんやりと眺めるのに、窓際の俺の席はベストポジションだ。普段は室内の体育館で汗を流す彼女たちだが、週に1度、水曜日だけはランニングトレーニングという名目で屋外にやってくるらしい。普段はむさ苦しくグラウンドの縄張り争いをしている野球部とラグビー部の野郎共も、この日に限ってはどこか紳士的に見える。「グラウン
2024年6月11日 22:30
第2夜 「他人の人生では常に自分は脇役」桜の蕾がチラチラと芽吹き出す頃。わたしの元に1通の招待状が届いた。ジューンブライドへと誘う招待状の差出人には学生時代からの親友である彩花の名前が書かれている。「え?彩花、結婚するの?」招待状の差出人である彩花とは長い付き合いで、高校で同じクラスになって以来、色々な想い出を共有してきた間柄だ。少し心に弱いところがあって、儚げで、同性なのに
2024年6月4日 22:30
第1夜 「黒糖さくらミルクティー」「さくらミルクティー?」「はい。それに黒糖をトッピングしたものが飲みたいなって」その日は東京で季節外れの雪が降っていた。朝からずっと「桜が咲いてから雪が積もるのは実に60年ぶり」とテレビが騒ぎ立てていたから相当珍しいことなのだろう。そんな珍しい日を狙ってわざわざ寂れた喫茶店に来る客は少ない。もう今日は閉めてしまおうか、と考え始めた矢先に店にやって