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Incombustibility Life
吊り革を掴んでいた手首の時計が知らぬ間に燃やされていて、真っ黒に炭化した肉から煤けた骨が覗いている。かすかに青い骨にこびりつくように残った肉が乾いて煙を上げていた。人肉の焦げた匂いに顔をしかめる。
火を放たれたときはすぐにわかる。炎の色が違うのだ。オレンジは人工の火。青白いのは体の内側から沸き起こる神聖な炎。人工の火では決して燃えない爪のたくましさを想い、人差し指で爪の先をなぞった。萌葱のネイル
リーディングパーティー日記
7・13、大阪庄内市の犬と街灯というギャラリー兼本屋さんで行われたオカワダアキナさん編集の『任意の五』リーディングパーティーに参加した。参加できるか謎だったので予約をためらっていたら、いのりくんが気を利かしてして犬街さんに連絡してくれていた。究極の「行けたら行く」みたいな約束をとりつけてでも普通に関東の人々が庄内に集うのは嬉しかったので逆に土曜は絶対空ける。と思って平日の仕事の方をしれっと休んだ。
もっとみる2024年5月21日
うかつにTwitterでつぶやくとアルゴリズムの導きによって、争いの方へと押し流されてゆくので「たぬきのきんたま」くらいしか言うことがなくなってしまった。
夫の部屋の前で蜘蛛を踏んだ。お腹が破れた音がした。それでも蜘蛛はスリッパで押しやるふりをすると脚を動かして逃げるのだが、長熊持たないだろう。
潰れ蜘蛛のニュースが駆け巡ったのか、台所の壁に貼りついた蜘蛛がいる。洗い物をするたびものおと
『森は盗む』大原鉄平 感想
第十回林芙美子文学賞受賞作。去年か一昨年林芙美子文学賞に送った。一次落ちした。悔しい。と思いながら読む。最近Twitterの人が次々デビューしていてすごい。ラッシュだ。乗り遅れたままぼーっとしている。キャロット通信がバズったせいで同人誌をやるより新人賞に出せというツイートが流れてきて泣く。前置きは終わり。
自分がない感じの女性一人称で物語が進む。母との複雑な関係と自己の置き場のなさ、誰にでも
コピ本交換会感想そのさん
④かきとめ/えもさんA5 20ページ
わたしはえもさんが好き。オカワダさんのBALMというアンソロジーでご一緒したときからファン。表紙はみずがめの造形だという。個展に向けて制作されたものなのだろうか。日記とかきとめ、そして写真。白黒でも案外きれいに出力される写真たちに驚く。えもさんのけだるげなおんなのこたちのイラストが好きだった。本の構成を見ていると、まじめさが垣間見えてまた好きになった。小説を
コピ本交換会感想会場その2
③祈りと火/星野いのり・西川火尖A5 8P
俳人の合同誌。互いの俳号から一文字ずつとって句に読み込んだり、タイトルになっていてコラボを感じる、火尖るさんは『祈求』いのりさんは『火に呑まれ』というタイトルをそれぞれつけている。日々の暮らしとガザの火。暮らしのなかの祈り。『祈求』から気になった句をひとつあげる。「雪の書庫点る唇から渇き」ガザに雪は降るのだろうか。灰が降る。建物を効率よく破壊するための
コピ本交換会感想会そのいち
『厄年にセルフケアしたら、コピー本つくれるまでになった。』葉々さん
A6 8ページ
小さくてかわいい。本の好きな人が思い描く本の体裁をとっていて、わかる、こういうの作りたくなる。と共感できる構え。厄年に訪れた災難とそれをきっかけにセルフケア、メンテナンスをはじめるエッセイ。それによって二十代で止まっていたウォークインクローゼットの中身を一新し、あたらしい自分に出会う。読めば少し心が軽くなる内容
書くことに呪われている
文学フリマ東京で頒布した日記のあとがきに書いたような気もするが書くことに呪われている。無意識に書いた文章に現実の生活を合わせていく、みたいなことをやっていて怖い。神託生活、
例えば五年前に書いたこのファンタジー? SF? は現行のシステムなり価値観が否定されたあとの世界を書きたくて作った話なのだが、新自由主義的な価値観に嫌気がさしてこの次に来るものを求めるうちに、社会主義的な管理シス
文学フリマ東京、出るよ!ブログ本作ったよ!
noteを使ってもう六年くらい経つ。その間書き連ねたブログや日記を全部本にしていこうと思っている。今回はその第一弾、題して『薄氷ばきばき日記①』をお送りしようと思う。読んでくれ。来週日曜日、5月21日の文学フリマ東京、第二展示場Fホール。えー55。よろしくな。
みんなこんな場末の日記を読みにきてくれてほんとにありがとう。PVがついてたおかげで書き続けられたと思う。その感謝を本にしたためたよ。
2022年3月30日の日記:文藝賞。自宅学習。昼夜逆転。
主婦を口実に長いこと引きこもっていたので初めての確定申告をやった。大人の階段を上ったぜ。今年は確定申告で三月末の小説公募は無理かなぁと思っていたけど、ワンチャンいけるのではないか、と思い立ち書き始めた。実はまるっきりスランプでなんも書けん状態だった。
でも書けましたギリギリ100枚やったぜ! 冷静に考えると一日四千文字書くと10日で100枚書くことは可能なのだった。前は確か五万文字くらい書い
落選作を公開することにした。
人見知りなのでnoteの新エディターに対してもガジェット見知りしてる。
文學界新人賞に出して落ちた。つらいので有料で公開することにした。今作のよい点。
・悪の権化みたいなママとその娘が出てくる
・主人公が透明人間で見た目を描写する必要がないので概念的かわいさが書けた(はず)
・エンタメをがんばろうとした気配がある
・ハッピーエンド。予想しなかった地点に物語が連れて行ってくれた。
よくな
非実在少女の身体と精神
メリッサには顔がない。顔を構成するパーツがごっそり欠けている。目も鼻も口も耳もなんにもない。ママが言うには「たまごみたいにつるんとした顔でかわいい!」だそうだ。目も鼻も口もなんにもないけど、メリッサは色を見ることができるし、匂いを嗅ぐこともできたし、味わうこともできたし、あらゆる音を鋭敏に聞き分けることもできた。それだけじゃない。ママと弟のナオ以外の人間は、みんなメリッサの顔の上に自分の思う顔を
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