阿瀬みち

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阿瀬みち

読み書きのできるペンギンです。嘘です。霊長類です。 Reproducing all or any part of the contents is prohibited.

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  • 好きなノート選りすぐり

    読んで好きすぎてしぬるわ。と思ったnoteをまとめるためのマガジンです。たまに夢中で読んでるとまとめ忘れる事案が発生するのが悲しいですね。大好きです。愛してます。

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    収拾用 見たいコンテンツの備忘録です

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    文舵練習問題まとめ

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    人魚アンソロジー海界ができるまでの記事をまとめてみました。本誌と一緒にお楽しみいただけますと幸いです。

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Incombustibility Life

 吊り革を掴んでいた手首の時計が知らぬ間に燃やされていて、真っ黒に炭化した肉から煤けた骨が覗いている。かすかに青い骨にこびりつくように残った肉が乾いて煙を上げていた。人肉の焦げた匂いに顔をしかめる。 火を放たれたときはすぐにわかる。炎の色が違うのだ。オレンジは人工の火。青白いのは体の内側から沸き起こる神聖な炎。人工の火では決して燃えない爪のたくましさを想い、人差し指で爪の先をなぞった。萌葱のネイルが煤けている。  通勤時間の込み入った電車は人の焦げたにおいでいっぱいだった。

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    • 『森は盗む』大原鉄平 感想

       第十回林芙美子文学賞受賞作。去年か一昨年林芙美子文学賞に送った。一次落ちした。悔しい。と思いながら読む。最近Twitterの人が次々デビューしていてすごい。ラッシュだ。乗り遅れたままぼーっとしている。キャロット通信がバズったせいで同人誌をやるより新人賞に出せというツイートが流れてきて泣く。前置きは終わり。  自分がない感じの女性一人称で物語が進む。母との複雑な関係と自己の置き場のなさ、誰にでもなりきってしまう心の座の空白が強調された視点。上湖という彼女は工務店で設計図面を

      • コピ本交換会感想そのさん

        ④かきとめ/えもさんA5 20ページ わたしはえもさんが好き。オカワダさんのBALMというアンソロジーでご一緒したときからファン。表紙はみずがめの造形だという。個展に向けて制作されたものなのだろうか。日記とかきとめ、そして写真。白黒でも案外きれいに出力される写真たちに驚く。えもさんのけだるげなおんなのこたちのイラストが好きだった。本の構成を見ていると、まじめさが垣間見えてまた好きになった。小説を書く人たちは白い紙きちきちに文字を詰めがちだが、写真やイラストを主に描く人は余白

        • コピ本交換会感想会場その2

          ③祈りと火/星野いのり・西川火尖A5 8P 俳人の合同誌。互いの俳号から一文字ずつとって句に読み込んだり、タイトルになっていてコラボを感じる、火尖るさんは『祈求』いのりさんは『火に呑まれ』というタイトルをそれぞれつけている。日々の暮らしとガザの火。暮らしのなかの祈り。『祈求』から気になった句をひとつあげる。「雪の書庫点る唇から渇き」ガザに雪は降るのだろうか。灰が降る。建物を効率よく破壊するための爆薬。人が居住するところに落とされるべき爆弾ではないものが落とされている。ハイテ

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          コピ本交換会感想会そのいち

          『厄年にセルフケアしたら、コピー本つくれるまでになった。』葉々さん A6 8ページ  小さくてかわいい。本の好きな人が思い描く本の体裁をとっていて、わかる、こういうの作りたくなる。と共感できる構え。厄年に訪れた災難とそれをきっかけにセルフケア、メンテナンスをはじめるエッセイ。それによって二十代で止まっていたウォークインクローゼットの中身を一新し、あたらしい自分に出会う。読めば少し心が軽くなる内容。わたしも中年になるのって悪くないと思ってる。こういう厄年の入門書みたいな本がた

          コピ本交換会感想会そのいち

          コピ本交換会

          オカワダアキナさんがコピ本交換会というとてもよい企画をやっていた。行きたい!泊りで関東に行く!お泊り会だ!となったものの普通に体調を崩して精神科の先生に止められる。行ってはいけないのとても丁寧な言い方、主治医として勧められなになぁ。ここはやめておこう。と言われたので泣く泣くバスのチケットをキャンセルした。懐が寂しいから夜行バスで東京大阪間を移動しようとしていたのだが、よく考えたら普通にそんな体力なかったかもしれない。判断力もそもそも鈍っていてシックネスを感じる。 イベントの

          コピ本交換会

          書くことに呪われている

           文学フリマ東京で頒布した日記のあとがきに書いたような気もするが書くことに呪われている。無意識に書いた文章に現実の生活を合わせていく、みたいなことをやっていて怖い。神託生活、     例えば五年前に書いたこのファンタジー? SF? は現行のシステムなり価値観が否定されたあとの世界を書きたくて作った話なのだが、新自由主義的な価値観に嫌気がさしてこの次に来るものを求めるうちに、社会主義的な管理システムと都市的な精神構造が同居する世界を作った。  結局いま、西欧を中心とする経

          書くことに呪われている

          東京日記後編

           写真が下手。文フリ撤収後、オカワダさんとくらなさんに打ち上げに誘ってもらった。宴席で撮った。配置が致命的なかんじがするが、具体的にどこがとうだめなのかわからない。濡久に話しかけながら労をねぎらう。アクリルスタンド嬉しいけど乱雑な部屋のどこに飾ったらいいか迷う。部屋を片付けるか。オカワダさんからえもさんの画集をいただく。わはは、嬉しい。脱力具合が好き。ぬいぐるみもかわいい。実物はこんなにかわいいのに写真にはそのかわいさが全然記録できておらず、自分の下手さに引く。  文フリ会

          東京日記後編

          東京日記

           先週の日曜、東京に行ってきた。フォロワーのみなさんとごはんもできて、よかった。いろんなひとに会えないか声をかけるのは楽しいから好き。予定を調整するのも嫌いじゃない。土曜に東京駅に着いた。エレザリと犬怪ちゃんとご飯を食べた。丸ビルの入り口で呼び込みをやっていて「ヒェッ」となり人見知りスイッチが入っていたのであんまりおもしろい話はできなかった気がする。でもふたりともとてもあってみたい人たちだったので、会えて嬉しかった。中国茶の話をもっと聞いてみたかった気がした。わたしは犬怪さん

          文学フリマ東京、出るよ!ブログ本作ったよ!

           noteを使ってもう六年くらい経つ。その間書き連ねたブログや日記を全部本にしていこうと思っている。今回はその第一弾、題して『薄氷ばきばき日記①』をお送りしようと思う。読んでくれ。来週日曜日、5月21日の文学フリマ東京、第二展示場Fホール。えー55。よろしくな。  みんなこんな場末の日記を読みにきてくれてほんとにありがとう。PVがついてたおかげで書き続けられたと思う。その感謝を本にしたためたよ。追記のかたちで今振り返ってみての感想も書き加えているよ。顔を見に来てくれるだけで

          文学フリマ東京、出るよ!ブログ本作ったよ!

          文体の舵をとれ 練習問題➈

           年を取ってから眠りが浅くなった。普段から常に頭に靄がかかったようで、目が覚めてからもなかなかベッドを抜け出せない。枕元に置いたピッチャーから一杯の水を汲んで、ようやく外が白みかけているのを確かめる。先週から部屋を片付けようとしているのに上手くいかない。体が重く、少しのものを移動させるのにも膝や腰が悲鳴を上げる。こんなとき、誰かがそばにいてくれれば、高い場所の埃を落としたり、不用品を分別してまとめてくれる人がいたら。脳裏をよぎるのは娘のヴァルヴァラの顔だ。母親になれば私の苦労

          文体の舵をとれ 練習問題➈

          2022年3月30日の日記:文藝賞。自宅学習。昼夜逆転。

           主婦を口実に長いこと引きこもっていたので初めての確定申告をやった。大人の階段を上ったぜ。今年は確定申告で三月末の小説公募は無理かなぁと思っていたけど、ワンチャンいけるのではないか、と思い立ち書き始めた。実はまるっきりスランプでなんも書けん状態だった。  でも書けましたギリギリ100枚やったぜ! 冷静に考えると一日四千文字書くと10日で100枚書くことは可能なのだった。前は確か五万文字くらい書いて半分くらい消した気がする。はじめは確か三万文字以上の小説を書くのが大変でなかな

          2022年3月30日の日記:文藝賞。自宅学習。昼夜逆転。

          落選作を公開することにした。

          人見知りなのでnoteの新エディターに対してもガジェット見知りしてる。 文學界新人賞に出して落ちた。つらいので有料で公開することにした。今作のよい点。 ・悪の権化みたいなママとその娘が出てくる ・主人公が透明人間で見た目を描写する必要がないので概念的かわいさが書けた(はず) ・エンタメをがんばろうとした気配がある ・ハッピーエンド。予想しなかった地点に物語が連れて行ってくれた。 よくなかった点 ・回収してない伏線がある ・活かせてない登場人物がいる 自己対話

          落選作を公開することにした。

          非実在少女の身体と精神

           メリッサには顔がない。顔を構成するパーツがごっそり欠けている。目も鼻も口も耳もなんにもない。ママが言うには「たまごみたいにつるんとした顔でかわいい!」だそうだ。目も鼻も口もなんにもないけど、メリッサは色を見ることができるし、匂いを嗅ぐこともできたし、味わうこともできたし、あらゆる音を鋭敏に聞き分けることもできた。それだけじゃない。ママと弟のナオ以外の人間は、みんなメリッサの顔の上に自分の思う顔をのせて見ているみたいだった。つまりメリッサののっぺらぼうは、万人のために開かれた

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          非実在少女の身体と精神

          BFC懇親会の前日譚

           東京に行った際には冬乃くじさんんのおうちに泊めてもらったのだが、おみやげのてぬぐい(一年以上前から用意していたもの)をやっと渡すことができた。これは実は蜂本みささんに一緒に選んでいただいたもので、三枚のうち電車のコラボの図柄は蜂本さんの思い出の路線だということで買ったものだった。  BFC第一回の打ち上げがとてもうらやましく、だって蜂本さんや伊予さんが出席していたというんだもんな。個人的にどうしても蜂本さんにお会いしたかった私は、その後、「蜂本さん、冬乃くじさんにお会いし

          BFC懇親会の前日譚

          #文舵練習問題9 #文体の舵をとれ

          「どうするの?」 「どうするって、親権のことはもう話がついてるでしょ」 「いや、そっちじゃなくて」 「じゃあなに? 家のこと?」 「家のことも親権と一緒にかたはついてるだろ」 「じゃあなんなの? はっきり言ったら? もったいぶらないでよ」 「観葉植物! エリザのこと!」 「あ、ザベス?」 「ちがう、エリザだけど」 「ヤマドリヤシのことね、酔っぱらった勢いで高橋さんのところから引き取ってきたやつ」 「俺正直エリザのことめちゃくちゃかわいがってた自信るから。家の中で俺が一番エリザ

          #文舵練習問題9 #文体の舵をとれ