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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】月経痛と鍼灸

以前の記事、『【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】月経時の気分障害と鍼灸についてhttps://note.com/ayajazari/n/nfa27e849e12b) 』の中では、
 1.月経に伴う不調
 2.月経のメカニズム
 3.東洋医学における月経
という月経に関しての基礎知識とあわせて、月経時の気分障害に対する鍼灸によるアプローチを取り上げました。
まだ、読んでいないという方は、ぜひ一度お読みください!

今回は、月経に伴う不調の中から、つらーい症状の代表である、『月経痛』をとりあげます。
月経痛はどうしておこるのか、それを改善させるための方法について、東洋医学的な観点からみていくことにしましょう。
なお、本編の後半では、月経痛に対する鍼灸でのアプローチについても、ご紹介をしていきます。

1.東洋医学的における月経痛とは

月経痛とは東洋医学では『痛経』といい、月経期間や月経前後に周期的に下腹に痛みが発生し、痛みが腰や仙骨にまで広がる、ひどい場合には激痛で倒れてしまうなどの症状がみられる疾病で、生理痛と呼ぶこともあります。

2.痛みはどうしておこる?

東洋医学では、あらゆる痛みに関して二大法則があり、月経痛に関しても大きくはどちらかの法則により考えられます。

2-1.不通即痛

通ぜざれば則ち痛む。
さまざまな要因で身体に循環障害がおこり、気・血・津液(東洋医学における身体の構成要素)がスムーズに巡らなくなることで痛みが発生する。

2-2.不栄即痛

栄えざれば則ち痛む。
気・血・津液が不足することで、臓腑や経絡、組織、器官が栄養不足の状態となり、痛みが発生する。

では、次に、月経痛に関して、どのような原因から二大法則が発生して月経痛がおこるのか、タイプ別に分けてみていきましょう。
あなたはどのタイプにあてはまりますか?

3.月経痛の原因分類

3-1.精神的ストレスを原因とするもの(気滞血瘀型)

もともといらいらすることが多かったり、心がふさぎネガティブ思考になりやすい。
月経の前になると、なぜかいらいらして、普段は気にならないような些細なことにも反応をしてしまう。
このタイプの場合には、普段から過剰な精神的ストレスによる影響を受けやすく、月経では、子宮=下半身のあたりに気血が集まりやすくなることから、身体全体における気血の巡りが滞り、不通即痛の法則から月経痛を引き起こします。
鍼灸治療により、普段から気血の巡りを整えておくことで、月経痛を起こりにくくすることが可能となります。

3-2.身体の冷えを原因とするもの(寒凝血瘀型)

月経前や月経中に、下半身を冷やしやすい服装で過ごすことが多かったり、冷たいものの食べ過ぎにより身体の冷えを感じやすい。
このタイプの場合には、冷えが原因で、子宮=下半身のあたりの気血の巡りが滞り、不通即痛の法則から月経痛を引き起こします。
鍼灸治療により、普段から下半身の冷えを取り除き、気血の巡りを整えておくことで、月経痛を起こりにくくすることが可能となります。
また、日常生活において、下半身を冷やさないようにするとともに冷たいもの(生魚、刺身、アイスクリームなど)の取りすぎに気を付けることも大切です。

3-3.体内の老廃物を原因とするもの(湿熱瘀阻型)

精神的ストレスなどが原因で暴飲暴食により胃腸の働きを弱らせてしまう、または食生活の乱れにより甘いものやお酒などを過剰に摂取し続けしまう。
こうした食生活を繰り返すことで、体内には余分な水分、つまり老廃物が溜まりやすくなります。
その老廃物は身体の循環を滞らせる原因となるだけでなく、体内で余分な熱を発生させやすくなり、湿熱邪と呼ばれる状態を作り出しやすくなります。
湿熱邪は、子宮=下半身のあたりの気血の巡りを滞らせ、不通即痛の法則から月経痛を引き起こします。
上記の原因の他にも、陰部の周囲を不衛生にして細菌感染してしまった場合にも、同様の月経痛がおこります。
鍼灸治療により、体内に溜まりがちな老廃物を取り除くとともに、普段の生活に気を付けることで、月経痛を防ぐことが可能となります。

3-4.身体のエネルギー、血の不足によるもの(気血両虚型)

体質的な虚弱、大病や慢性病を患った後、疲労が続き睡眠不足が続いた場合、身体のエネルギーや血が不足しがちになります。
活動に必要なエネルギーの不足と体内の各組織を栄養するための血の不足により、子宮=下半身のあたりの気血が不足し、不栄即痛の法則から月経痛を引き起こします。
鍼灸治療により、身体の疲労を取り除き、血を補うようにすることで、月経痛を防ぐことが可能となります。

3-5.疲労、体力の低下、身体の弱りを原因とするもの(腎虚型)

人体の成長・発育・生殖を支える、身体エネルギー=『腎精・腎気』が不足していることが原因と考えられます。
月経のメカニズムのところでもお話をしましたが、月経には腎が深く関与しており、身体エネルギーの不足から血の不足を招き、より良い子宮環境が整わなくなることから、不栄即痛の法則から月経痛を引き起こします。
腎虚になりやすい原因には、以下のようなものがあります。

・先天的な虚弱体質
・大病を患った、病気がちで身体が弱い
・加齢
・習慣性の流産を繰り返したことがある
・中絶(人工妊娠中絶)などの手術
・節度のない性生活

4.鍼灸でのアプローチ


「月経痛は婦人科への通院だけでなく、鍼灸による治療も可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、月経痛も鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
現代医学では、月経痛に関して、鎮痛剤、ホルモン剤、低用量ピルなどの投与で治療をすることが多いようです。
鍼灸では、西洋医学のように検査値に基づいてホルモン値をコントロールすることを目的に治療は行いません。
鍼灸では、先にご紹介したような「つらい月経痛をおこす根本の原因」を見つけ出し、それを正すことによって、月経痛のない、より良い身体づくりをします。
つまり、月経痛も、鍼灸により治療することが可能なのです!

5.月経痛に対する鍼灸の施術例

次に、鍼灸による月経痛に関する施術例をご紹介したいと思います。
一度の施術で使うツボは1つです。施術時間は休憩含めておおよそ1時間程度です。
なお、鍼をする前には、あらかじめ詳しく問診をする必要があり、月経痛の症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼をします。そのため、月経痛という症状、その原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

【患者】30代後半女性、身長15Xcm、体重4Xg
【初診】202X年10月X日
【主訴】月経痛が排卵期頃から始まり、月経前にはもっとも悪化をする。月経ピークをすぎると痛みは軽減して楽になる。腹と腰が痛い。
【問診】発症は30代、家族は、夫、自分。
12歳頃に初潮を迎える。学生時代に月経に関する体調不良などの記憶はない。学生の時は普通食欲、体型は普通体型、運動部で活発に身体を動かしていた。
大学卒業後から、事務職として働くようになった。運動をすることがなくなった。その頃から、月経前に下腹部に痛みを感じるようになった。痛みは、月経のピークを過ぎたら消えて、月経後には身体が軽くなる。月経の前は、きまってイライラ感が目立ち、異常に食欲が増進する。
服薬をしない治療法を探して、インターネット検索をして、鍼灸も効果がありそうだと知り、鍼灸での治療を試してみたいと来院をした。

【初診時の月経に関する情報】
・月経周期はほぼ月に1回。
・月経の色は、イライラ感が増してから、濃くなった。
・月経の量は、イライラ感が増してから、やや少なくなった。
・月経日数は、5日程度。
・月経時の痛みは下腹部のズーンとした痛み。
・月経前に便秘になる。
・月経前は食欲が異常に増す。
・月経がはじまると同時に、軟便~下痢になる。
・月経前は、肩こりが悪化する。
・月経前は、眠気が激しくなる。

【診断と治療方針】
精神的なストレスにより心身ともに過緊張状態となり、月経前には体内循環が一層停滞しがちになることから、月経前のイライラをコントロールできなくなった、と診断。
従って、心身の緊張を緩めることを中心にした処置を行うことで、普段からの精神的な安定を図るとともに月経前のイライラを改善する。

【日常生活での注意点】
・散歩や軽い運動などで普段から身体を動かし、気分転換をする。

【経過】
初診 施術直後、身体の緊張がゆるみ、リラックスできて肩こりが改善したと実感。次回の月経が来るまでの間、週に1回程度、治療を重ねて様子をみる。
2、3診 鍼を受けた後はだるさがない、少し気持ちが穏やかになり、普段もイライラしづらくなったような気がする。肩こりが減って楽になってきた。いつもだったら月経前の症状が出る頃だが、不調を感じない。
4診目 先日、月経がくる。月経中も下腹部痛、イライラ感ともに悪化することなく、生活に支障をきたさない程度で今回の月経をおえることができた。鍼灸の効果には驚いた。もうしばらく、治療を重ねていきたい、と本人の希望があり、治療を継続中。

6.まとめ

今回は月経に伴う不調の中から月経時の痛みについてとりあげ、月経痛と鍼灸、東洋医学的な原因別の分類、治療方法をご紹介してきました。
東洋医学においても、月経痛に対して鍼灸でのアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。今回はここまでとなります。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132
https://ayakazari.com/
画像の出典:https://www.photo-ac.com/


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