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『ペトリコール、君』①
*1
その日は雨が降っていた。神夏磯れいは、傘を差したまま雨水の飛び跳ねるハンドパンのようなアスファルトを駆けていた。薄手のカーディンの腹にはコンビニで購入したロールケーキを抱えている。二十二時を回ったコンビニはスイーツの品揃えが悪く、わざわざ三件回って見つけたロールケーキだった。
どうして僕がこんなことを、わざわざ、こんな雨の酷い夜に。そんなことを思っても、れいの頭に過るのは自分の思い通
『アイビーは微笑んだ』
アイビーは微笑んだ
君は知らないだろう
デイ・ドリームの続きを見ていた
絡まって解けないもので何を掴んできたのだろう
日々重ねて空は重くとも
頭を擡げる不安の色
日々濁って目は暗くとも
頭に浮かぶ希望の色
染みになって落ちないだけの指を一本懸けている
空を切って 空回って 白を切って 烏の頭の白くなるまで
なんて言ってられないことに気がつけば
夢などとうに覚めていたことにも気がついて
枯れな
『鞦韆とサマードレス』
二つ並んだぶらんこは揃って空に飛んでいた
青と白のマーブルにぽつんと浮かんで
僕らは素敵だったな
僕と君は並んでいたって一人と一人で
一人でも大丈夫な二人だったな
君はそんなことないって言うだろう
擦れ違って
擦れ違って
ゆっくり地に足をつけた
砂埃がスニーカーを汚した
君はまだ飛んでいた
もう一度漕ぎ出せば追いつけたかな
ちぐはぐになったまま元には戻れない
擦れ違って
擦れ違って
錆びた
『黄色のチューリップ、紫色のチューリップ』
二十一歳になった。
私のてのひらの中にあるのは、もう思い出せない嫌な思い出ばかりで、皆より何歩も何もかも遅れているような気がしてしまう。人が私に与えた傷、私が私に与えた傷が治らないままだ。本当は愛だってたくさん貰ってきた筈なのにね。高潔で在りたい。人に優しく在りたい。だから不器用で、上手く生きれなくて、被害妄想とそうでない妄想とに苛まれて日々頭が痛い。
とは言ったって、病み病みうじうじしてい
『ハートマーク』
大好きですと書くように、人生を。
声に出すのは少し恥ずかしい。
だから、貴方を好きになってからの全部を、
誰に見せても恥ずかしくないような線を、
私にも誇れるような私を、
貴方へのラブレターとしましょう。
大好きですと書くように、人生を。
素敵なハートマークで飾りましょう。