『鞦韆とサマードレス』

二つ並んだぶらんこは揃って空に飛んでいた
青と白のマーブルにぽつんと浮かんで
僕らは素敵だったな
僕と君は並んでいたって一人と一人で
一人でも大丈夫な二人だったな
君はそんなことないって言うだろう

擦れ違って
擦れ違って

ゆっくり地に足をつけた
砂埃がスニーカーを汚した
君はまだ飛んでいた
もう一度漕ぎ出せば追いつけたかな
ちぐはぐになったまま元には戻れない

擦れ違って
擦れ違って

錆びた鎖が音を立てた
夕日が沈むのが遅くなってきた
君はまだ飛んでいた
そのまんま遠く宇宙へ
上も下もない夢想の世界へ
ぐるぐる回ってるこの星の真ん中が
君の瞳に消えていくな
君が見ているのはめくるめく花冠だった
ずっと前から知っていたんだ

小さな一つの星
小さな一つの国
小さな一つの街
小さな一つの公園に
小さな一つの僕と君がいた

青と白のマーブルにぽつんと浮かんで
君は無敵だった
一人でも大丈夫な二人だったけれど
少し寂しいとか
とりとめもないことを思っていたのは僕の方だった

サマードレスを着たお姉さんが歩いている
この街の人ではないみたいだ
あの角の家ではブーゲンビリアが咲いたらしい
ほんの少しだけ空が赤らんで
赤らんで

膨らんでいくばかりだ

もうそんな季節
もうそんな時間

楽しかったな
楽しかったよ
ほどけた靴紐を結び直して
僕はもう行くよ

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