和櫻

なおと申します。 詩と小説を書きますが、詩と小説の間のような作品ばかり。「美しくてもど…

和櫻

なおと申します。 詩と小説を書きますが、詩と小説の間のような作品ばかり。「美しくてもどうしようもないし、毒にも薬にもならないな」が作品全ての主題です。 私の根本には嵐とランジャタイがいます。

最近の記事

『ペトリコール、君』②

*2  パスタにピザにチキンにドリアが、男の口の中に次々運ばれて行く。見ているだけで吐き気がするラインナップに、少食のれいはチーズとトマトのサラダを食べる手が止まる。男は指についた辛味ソースを舐めながら、気分が悪そうに眉を顰めているれいの顔を覗き込んでいた。れいはその視線に促されるようにして、フォークをチーズに刺すも、口に運べる程の元気は湧かずにいた。 「人のお金でよくそんなに食べられますね」 「二日くらい食えてへんかったからね。ほんまに助かったわ」 「無職なんですか?」

    • 『回』

      私は私に振り回され、 肥大化した自己意識 それから 熱狂 創造 そういったもの 膨らんで 歪んだ球となり また、 転がり落ちていくことも 一つの私であること。 何処にも行きたくはないのだが、 此処にはいたくないのだと、 何処かに行こうとする私でありたくて、 此処にはいられない私であること。 全部 全部だ。 あそこに広い宇宙があるでしょう それと比べればちっぽけだなとか思わないで、 私こそ、我が地球とおんなじ星であり、 舞台の真ん中で踊る少女であること。 戻る場所は決ま

      • 『ペトリコール、君』①

        *1  その日は雨が降っていた。神夏磯れいは、傘を差したまま雨水の飛び跳ねるハンドパンのようなアスファルトを駆けていた。薄手のカーディンの腹にはコンビニで購入したロールケーキを抱えている。二十二時を回ったコンビニはスイーツの品揃えが悪く、わざわざ三件回って見つけたロールケーキだった。  どうして僕がこんなことを、わざわざ、こんな雨の酷い夜に。そんなことを思っても、れいの頭に過るのは自分の思い通りにならなければ直ぐに暴れ回る双子の姉のことで、諦めるしかないことを悟っていた。

        • 『月下美人』

          死ぬことも 生まれることも 月下美人が咲くように 誰も知らない一晩の出来事 ほんの少し欠けた月が出ている夜に 母に抱かれて眠ろうか 私はそれを幸せだと思う 私は自分を幸せだと思う 嵐の音は私の心臓を突き動かした あの木の香りは私の苦しみを掻き消した ひらひら舞うロマンチックな言の葉を きらきらにして並べることが 私の生きてきた道 そのものだったな 私はたくさんの人が好きだった たくさんの人が私を好きだった 生きていて良かったと 死んでも良いわはよく似ていて 瞬間瞬間

        『ペトリコール、君』②

          『花火』

           私の涙は、花火みたいなものです。  みんな弱いのにね、どうしてだろうね、どうしてそんなに涙が嫌いなのでしょうね。私の涙は弱いものじゃない。ぼろぼろ零れるものじゃない。感情が、どうしようもない程の、たくさんの感情が打ち上げられるもの。強く、強いもの。触れば痛いし、眩しいし、熱い。カラフルなそれを、ぶん投げる。消えろ、消えろ、消えてしまえ……、と空に願って。  今日は花火があるのだそう。誘う人もいないし、誘ってくれる人もいない。誘って欲しいとも思えない。その時間は観たい番組が

          『花火』

          『炎夏』

          君に殺されたいとか思う朝は いつもより朝ご飯をよく噛みます 誰よりも健康的な夏の始まりに 生卵を飲みました 喉を押し広げるそれが 君だったら良かった 水は流れ、空は透けて、 回転木馬の真ん中に立ち止まっているのは辛くて、 私は逃げたのです あと五分、あと五分を繰り返した 真夏の布団の中に浮かぶ蜃気楼の行く末に 何を見るというのでしょう 私は踊って、踊って、踊って、炎となるのです アクアマリンの欠片がお気に入りのワンピースを汚す、暑くて、茹だる、怠くて、暑い夏 君は優しいから絶

          『炎夏』

          『天泣』

          誰か幸せにしてくれよ 春になったり秋になったり  月になったり花になったり ペットボトルの中の水のよう 形があるようで無いものは 溢れ 溢れて きらきら流れていく青 死にたいわけではないし そうだね  不幸でもないし 殺してやるとも思わないけれど 許しはしない  許しはしないよ 抱えていく気も毛頭ないよ あんた  あんたに言ってんだよ まあ言ったって無駄だろうなぁ どうせ 何も変わりやしないよ 誰か幸せにしてくれよ

          『天泣』

          『アイビーは微笑んだ』

          アイビーは微笑んだ 君は知らないだろう デイ・ドリームの続きを見ていた 絡まって解けないもので何を掴んできたのだろう 日々重ねて空は重くとも 頭を擡げる不安の色 日々濁って目は暗くとも 頭に浮かぶ希望の色 染みになって落ちないだけの指を一本懸けている 空を切って 空回って 白を切って 烏の頭の白くなるまで なんて言ってられないことに気がつけば 夢などとうに覚めていたことにも気がついて 枯れない薔薇を握りしめる そして道端のアイビーは微笑んだ 絡まって解けない蔦を手繰

          『アイビーは微笑んだ』

          『鞦韆とサマードレス』

          二つ並んだぶらんこは揃って空に飛んでいた 青と白のマーブルにぽつんと浮かんで 僕らは素敵だったな 僕と君は並んでいたって一人と一人で 一人でも大丈夫な二人だったな 君はそんなことないって言うだろう 擦れ違って 擦れ違って ゆっくり地に足をつけた 砂埃がスニーカーを汚した 君はまだ飛んでいた もう一度漕ぎ出せば追いつけたかな ちぐはぐになったまま元には戻れない 擦れ違って 擦れ違って 錆びた鎖が音を立てた 夕日が沈むのが遅くなってきた 君はまだ飛んでいた そのまんま遠く

          『鞦韆とサマードレス』

          『らら、るるる』

          春、うらら らららって口ずさんでみても 誰の耳にも届きはしないな あーだって声が小さい アスファルト ピンク色をして  立ちつくす あたしが一番ピンク ぼんやりしてる鈍痛 どんよりしてる雲 逆さまよりも遥か斜めに 迸った目眩 偏った呼吸 痛いだけの太陽は死ね 君は雪白の月ね 羽根は開かない背中 咽返るように咲いた花弁 ロートーンのサイケデリック 空っぽの真ん中  部屋の端っこに 積まれたガラクタ 埋もれた水の中  淀みに浮かぶ 重たいバニラ あぶく 遊ぶ 憂う 指

          『らら、るるる』

          『黄色のチューリップ、紫色のチューリップ』

           二十一歳になった。  私のてのひらの中にあるのは、もう思い出せない嫌な思い出ばかりで、皆より何歩も何もかも遅れているような気がしてしまう。人が私に与えた傷、私が私に与えた傷が治らないままだ。本当は愛だってたくさん貰ってきた筈なのにね。高潔で在りたい。人に優しく在りたい。だから不器用で、上手く生きれなくて、被害妄想とそうでない妄想とに苛まれて日々頭が痛い。  とは言ったって、病み病みうじうじしているだけでは生活はままならない。恵まれていることにも自覚があって、私が言っているこ

          『黄色のチューリップ、紫色のチューリップ』

          『Pretty』

          リボンを結ぶ 心臓の位置で フリルを飾る 心臓の位置で 荒ぶる呼吸を隠す気はない 凹んだ胸を隠す気はない 貴方に送るつもりもないけど 可愛くしていたいの グリッター光る 眼瞼の上で ピンクが染まる 眼瞼の上で 濡れた瞳を隠す気はない 見てきたものを隠す気はない 貴方に見て欲しいわけじゃないけど 可愛くしていたいの 二十一の拍動が奏でるリズムで踊れよ 私、可愛い 可愛いから 二十一の拍動が教える感情で歌えよ 私、可愛い 可愛いから みんなみたいになれなくても 好きだよと

          『Pretty』

          『トワイライト』

           恋をするのは美しいことだね。玉と玉とが、ほんの少しだけ触れ合って、小さな音を鳴らすようなことだね。

          ¥100

          『トワイライト』

          ¥100

          『Fanatic』

          Fanatic こんな夜には踊りたいね 今晩は楽しかったから Fanatic 二人なら踊れるね 手を繋いでくれ 踵鳴らせよ 髪を揺らせよ もっとお喋りしようぜ スパンコール ハウリングして アイオライトの オートクチュールに 驚いてごらん 此処が真ん中 踊らされるくらいなら 踊れば良いよ 踊れば良いよ Fanatic 口先一つで変わる人生だ 明日は来るのか? Fanatic くらくらしてんだ 同じ血の色をして ネクタイ締めてさ 歩いて行くのさ もっとお喋りしようぜ

          『Fanatic』

          『ハートマーク』

          大好きですと書くように、人生を。 声に出すのは少し恥ずかしい。 だから、貴方を好きになってからの全部を、 誰に見せても恥ずかしくないような線を、 私にも誇れるような私を、 貴方へのラブレターとしましょう。 大好きですと書くように、人生を。 素敵なハートマークで飾りましょう。

          『ハートマーク』

          『星を飼う』

          ウィンクは、しないで 誰のことも 見ないで 貴方は瞳に星を飼う

          ¥100

          『星を飼う』

          ¥100