マガジンのカバー画像

青豆エッセイ

48
エッセイを纏めます。
運営しているクリエイター

2023年8月の記事一覧

ペーパームービー

ペーパームービー

9月1日。
この日付から私が思い浮かべるのは樹木希林さん。
以前読んだ「9月1日 母からのバトン」という本で、亡くなる2週間前の9月1日、樹木さんが入院中の病室で、窓の外を見ながら子供たちを思い、「死なないで 死なないで」と必死に祈っていたというエピソードが心に残っています。
「せっかく生まれてきたんだからもったいないよ」
9月1日に命を絶つ子供たちが多いことを嘆いて発せられたこのメッセージは、樹

もっとみる
おじさんには死なないでほしかったりする (エッセイ)

おじさんには死なないでほしかったりする (エッセイ)

おじさん、というのは私の長年の文通相手のことで、血縁関係にない。
私が昔住んでいた家の、目の前のアパートに住んでいた“おじさん”というだけ。

おじさんは私が一歳くらいの時、外を歩いている私を見て、可愛いからおぶって近所を散歩に出かけたらしい。
私がいなくなり、私の家族は驚いていたと悪びれず語るおじさんは、今の時代であれば立派な“人さらい”だ。

そんなおじさんより10以上も年の若い両親に対して、

もっとみる
音声記事が好き。山根あきらさんに読んでいただきました。

音声記事が好き。山根あきらさんに読んでいただきました。

山根あきらさんが企画された、青ブラ文学に応募して優秀賞をいただきました。
参加させていただくのは今回が3度目で、毎回出されるお題が興味深く、楽しみな企画です。

私の書いた小説「黒猫」は、山根さんの朗読を意識して作りました。
募集要項を読み、選ばれれば山根さんに朗読していただけるということで、これは狙いに行かねばならん、と思ったのです。

noteでは音声記事を好んで聞きます。
山根さんの記事はも

もっとみる
おじさんと私の間を流れる不要品たち。(エッセイ)

おじさんと私の間を流れる不要品たち。(エッセイ)

土曜の朝。郵便配達のお兄さんは、怪しい衣装ケースを運んできてくれた。
透明な80サイズくらいの使い込まれた衣装ケース。持ち手の部分や全体に、青い養生テープを巻き付けてある。この斬新な梱包を施した主は、やはり文通相手のおじさんだった。

中身は透けて見えているが、どう見ても冬物のジャケットだった。それが2枚、ぎゅうぎゅうに詰められている。

見た感じ、手紙らしきものは入っていないようなので、ひとまず

もっとみる