雨音

オートフィクション

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記事一覧

ずっと雨でも。

それは1992年の春だった。 音楽家の父と、花や子どもが好きな母との間には 今もずっと雨が降っている。 初産は予定日より早いことが多いと最近知った。 それなのに7日も母…

雨音
1年前
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Dearest for youという歌

※ブログ移転にあたり2017年9月17日の記事のバックアップとなります。 ごきげんよう、雨音琴美です。 今日は恵比寿.天窓switchにお邪魔してきました。 (昨晩というか今…

雨音
1年前
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向日葵色の人

出逢ったその時から 美しい瞳の持ち主だって そんなことはもうわかってた。 友達からも言われたよ。 あの人の目はなんと煌めいてるかって。 街中の光を集めて 閉じ込めた…

雨音
1年前
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運命とお手紙と優しい風

運命の中に居る人を じっと見ている。 見て、どう見えるのか 少しだけ言葉にする。 という、仕事をしている。 心は目に見えないから 本当に目で見えるようにはならない。…

雨音
1年前

小雪の目覚めにて

空が綺麗な朝だなぁと思って目覚めても 愛する人はもう出かけていて 見せたかった景色を見せられない切なさから 始まる1日。 冬の空は高く遠く 澄んだ青になりたいと 願っ…

雨音
1年前
2

花のように

花のように生まれ 言葉の雨に打たれ 琴の音を鳴らして いつかの終りには 星の雨に撃たれて 海に散って死にたかった でも今は汚く地面に散っても良いから あなたと美しく…

雨音
2年前

埴生の宿も我が宿

胸の真ん中を熱くする人よ もう一生冷えたままだと 思っていた心 揺れて滲む 涙かな あの時もっと 可愛げのある返事を したかったかなと 後悔させてくれる人よ 寂しい秋…

雨音
3年前
1

おやすみなさい わたしのとくべつ

スクロール=波 絶え間なく永遠に途切れることのないもの ただし同じ形は二度とないもの プルメリア=花 英名はTemple tree、気品や親愛、魅力を示す 大切な人の幸せを願…

雨音
4年前

さようならの代わりに

ともだちへ こんにちは。お元気ですか。 それなりに世の中が動いているようですが こちらはなんとかやっています。 このような寒暖差の揺らぎがある初夏の日には 君のこ…

雨音
4年前
4

スピカ

乙女座の輝いた3月の夜、 茨城で目を覚ました女の子。 いつの間にかもう夏も過ぎ 誰も抱っこしてくれないまま 半年が過ぎていた。 東京の田舎町まで引っ越した。 狭い箱は…

雨音
4年前
4

おあずけ

わたしがおばさんになる頃 きみもおじさんになってるし もしかしたらこの世界に いないかもしれないよね。 逆のこともあるけれど。 墓まで持って行こうとしてるのは 来世…

雨音
5年前

何者でもない

‪何者でもないわたしは‬ ‪何者でもないけど‬ ‪たまたまビジネスタワーで働いてて‬ ‪たまたま歌詞を書いてて‬ ‪たまたま占いで稼いでて‬ ‪たまたま手が小さく‬ …

雨音
5年前
2

物語の終わりに

今ね、 とても幸せな後日談を 過ごしている気持ちになる。 永い物語の終わりには いつもエピローグや後日談があって ちょっとの幸せやしこりを残しながらも 必ず次のステ…

雨音
5年前

永い青春

エレキギターに恋をして、 ゴミ捨て場の青いフェルナンデスを拾ってきて 誰もが通るFコードに苦戦して アコースティックやクラシックの専門家の父に 初めての反逆行為とし…

雨音
5年前
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HAPPY NEW DAYS

わたしは平成が好きだ。 ルーズソックスで日焼けした女の子が 渋谷を練り歩いて モー娘。や安室やラルクを口ずさむ風景が まぢサイコーなのだ。 原宿で色付きの派手な綿ア…

雨音
5年前
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Birthday.

生まれたくなかったと 後悔するほど 辛い人生だったし 難しい時代だったとおもう。 それでもこの平成という時間を 生き抜いて次へゆけるのは ただひとりのおかげなんだ。 …

雨音
5年前
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ずっと雨でも。

ずっと雨でも。

それは1992年の春だった。
音楽家の父と、花や子どもが好きな母との間には
今もずっと雨が降っている。

初産は予定日より早いことが多いと最近知った。
それなのに7日も母の子宮に留まり続けた私は
この世界に生まれるのが怖かったのかもしれない。
産声をあげなかったことで母はとても心配したそうだ。
私はへその緒を首に巻いて生まれてきた。
「あらあら、二連のネックレスなんてしちゃって」と助産師さんが優し

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Dearest for youという歌

Dearest for youという歌

※ブログ移転にあたり2017年9月17日の記事のバックアップとなります。

ごきげんよう、雨音琴美です。

今日は恵比寿.天窓switchにお邪魔してきました。

(昨晩というか今朝早くまで野島伸司さん脚本のドラマ『雨が降ると君は優しい』を見ていたせいですっかり寝坊してしまい、入り時間にはおろか、開演の1時間前に布団と自分の腹の間でスマホがバイブレーションしまくって鬼電に気づいて慌てて出かけるって

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向日葵色の人

向日葵色の人

出逢ったその時から
美しい瞳の持ち主だって
そんなことはもうわかってた。

友達からも言われたよ。
あの人の目はなんと煌めいてるかって。

街中の光を集めて
閉じ込めた宝石みたいで
いつも見惚れてしまう。

光に溢れているんだよね。
例えどんな狭い道でも
泥だらけの道でも
石ころだらけの道でも
君がいつも笑って手を振るから
それがどんなに険しい旅だと知っていても
こっちもなるべく笑顔で見送ってしま

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運命とお手紙と優しい風

運命とお手紙と優しい風

運命の中に居る人を
じっと見ている。
見て、どう見えるのか
少しだけ言葉にする。

という、仕事をしている。

心は目に見えないから
本当に目で見えるようにはならない。

口調を、仕草を、表情を、
文脈を、行間を、それらの言葉の文すらを、
拾い集めて重ねてバラしてくっつけて
御手紙みたいに
心を見えるようにする。

そんな、仕事をしている。

心は目に見えないけど
見えた気になってしまう時もあるけ

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小雪の目覚めにて

小雪の目覚めにて

空が綺麗な朝だなぁと思って目覚めても
愛する人はもう出かけていて
見せたかった景色を見せられない切なさから
始まる1日。

冬の空は高く遠く
澄んだ青になりたいと
願った頃もあったな。

少しだけ上を向いた途端に
会いたい人の顔を思い出すのは
どうしてでしょう。

会いたいと思っている時点で
今は会えないわけで
会えてもいない、目の前にいない人のこと
こんなにも心が求めるのも
どうしてなのかなぁ。

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花のように

花のように

花のように生まれ
言葉の雨に打たれ
琴の音を鳴らして

いつかの終りには
星の雨に撃たれて
海に散って死にたかった

でも今は汚く地面に散っても良いから
あなたと美しく咲いて
ともにやさしく土に還りたい

手を繋いで

何も怖くないよ

何も怖くないと思えたんだよ

こんな世界でも 大丈夫って
あなたがいれば大丈夫って

思うんだよ

埴生の宿も我が宿

埴生の宿も我が宿

胸の真ん中を熱くする人よ
もう一生冷えたままだと
思っていた心 揺れて滲む 涙かな

あの時もっと
可愛げのある返事を
したかったかなと
後悔させてくれる人よ

寂しい秋に光を灯して
あたたかい
握り締めた手よりも胸の真ん中が

先の未来はしばらく
星だけの静かな空だったはずなのに
青く遠く広がる昼下がりの
落葉樹の下で約束した
小さな決めごとを
大事に運んでいきたい

辿り着いたのはお城でもなく

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おやすみなさい わたしのとくべつ

おやすみなさい わたしのとくべつ

スクロール=波
絶え間なく永遠に途切れることのないもの
ただし同じ形は二度とないもの

プルメリア=花
英名はTemple tree、気品や親愛、魅力を示す
大切な人の幸せを願うもの

マイレ=葉
バニラのような香りのする南国の神聖な植物
神の足跡と呼ばれ魔除けや平和を願い誓うもの

久しぶりにジュエリーを買いました。
仕事でプラチナに返り咲いたお祝い?
新曲を作れた記念に?
コロナ第1波を乗り越

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さようならの代わりに

さようならの代わりに

ともだちへ

こんにちは。お元気ですか。
それなりに世の中が動いているようですが
こちらはなんとかやっています。

このような寒暖差の揺らぎがある初夏の日には
君のことを想い出します。
とても賢い人であったことを
ようやく実感している愚かな私です。
普段、口癖のように
「想像力の無い人間は阿呆だ」とか
「なんでなってみないとわからないのかな」だとか
人の脳の構造と自分はまるで違っているかのように

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スピカ

スピカ

乙女座の輝いた3月の夜、
茨城で目を覚ました女の子。
いつの間にかもう夏も過ぎ
誰も抱っこしてくれないまま
半年が過ぎていた。
東京の田舎町まで引っ越した。
狭い箱はもう飽きた。
愛想を振りまくのはもともと苦手。
それでも耳掃除をしてくれたり
シャンプーしてくれるお姉さんがいて
ずっとずっと箱の中にいたんだよな。

太陽神アポローンの名前を持った
マンチカンの男の子、ぽーちゃん。
まるでその太陽を

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おあずけ

おあずけ

わたしがおばさんになる頃
きみもおじさんになってるし
もしかしたらこの世界に
いないかもしれないよね。

逆のこともあるけれど。

墓まで持って行こうとしてるのは
来世でまた会えたらとおもうからで

わたしは解脱しない気満々、
だからきみも罪を重ねてください。
何度でも転生して
必ずまた手を繋げるように
たくさん罪を重ねてください。

今世では、それは、おあずけ。

何者でもない

何者でもない

‪何者でもないわたしは‬
‪何者でもないけど‬
‪たまたまビジネスタワーで働いてて‬
‪たまたま歌詞を書いてて‬
‪たまたま占いで稼いでて‬
‪たまたま手が小さく‬
‪いまはついでに耳が悪く‬
‪平成に生まれた‬一応女らしい。

心があったかくなる音が好きだった。
それはたいがい他人にとっては騒音で
病院では耳を悪くするよ、と言われるような
そんな音色かもしれなかったけれど
わたしはいつもおもう、

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物語の終わりに

物語の終わりに

今ね、

とても幸せな後日談を
過ごしている気持ちになる。

永い物語の終わりには
いつもエピローグや後日談があって
ちょっとの幸せやしこりを残しながらも
必ず次のステージへの余韻があって
読後感が生まれるもの。

今ね、

とても長く眠っている間に見た夢から醒めて
カーテンの向こうの空を見て
良い朝だなぁってあくびをしているような
そんな気分だよ。

だけどね、

ちゃんと次どこに出かけるかわか

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永い青春

永い青春

エレキギターに恋をして、
ゴミ捨て場の青いフェルナンデスを拾ってきて
誰もが通るFコードに苦戦して
アコースティックやクラシックの専門家の父に
初めての反逆行為として
ロックミュージックを聴いた。
南京錠をぶらさげて
ヴィヴィアンウエストウッドを身につけて
JKのくせにブドワールを漂わせてた
10代のわたしは今、

DiorのJOYをつけて出勤する。
オフィスタワーで8時間、
顧客の対応をし、

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HAPPY NEW DAYS

HAPPY NEW DAYS

わたしは平成が好きだ。
ルーズソックスで日焼けした女の子が
渋谷を練り歩いて
モー娘。や安室やラルクを口ずさむ風景が
まぢサイコーなのだ。

原宿で色付きの派手な綿アメやポップコーンを
食べながらつけまつけるを聞いて
ユニコーンやフラミンゴの柄の服を求めて
竹下通りを奥まで行くのも
超やばたにえんなのだ。

バブルの弾けた後の世界しか知らない私達は
常にバイトが超絶だるくて
いつメンがいないとテン

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Birthday.

Birthday.

生まれたくなかったと
後悔するほど
辛い人生だったし
難しい時代だったとおもう。

それでもこの平成という時間を
生き抜いて次へゆけるのは
ただひとりのおかげなんだ。

何もかも全て失って
16にして人生に絶望して
わたしにはもう守るものも棄てるものも
何も無い、
求める希望も残っていない。

そんなとき、

ほんとうに偶然が偶然を呼んで

わたしに生まれてきてくれてありがとうって
ただそれだけを

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