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何者でもない

‪何者でもないわたしは‬
‪何者でもないけど‬
‪たまたまビジネスタワーで働いてて‬
‪たまたま歌詞を書いてて‬
‪たまたま占いで稼いでて‬
‪たまたま手が小さく‬
‪いまはついでに耳が悪く‬
‪平成に生まれた‬一応女らしい。

心があったかくなる音が好きだった。
それはたいがい他人にとっては騒音で
病院では耳を悪くするよ、と言われるような
そんな音色かもしれなかったけれど
わたしはいつもおもう、
あんなに綺麗な音を他に知らないのに、って。

わたしは弾けもしない、
いや手が小さいから簡単に諦めたからこそ?
ギターを聴くのが好き。
目を閉じて耳を傾ける。
しんみりしたり
笑顔になったり
ギターを聴くのは感情が忙しい。
でも良い音を聴くと爽快で
晴れた青空に突き抜ける風や
海の果てに飛んでいく渡り鳥が
心の中を過ぎていく。

昨日もそんな日だった。
GW前の最後の仕事をやっつけて
ちょっとお客様に引っかかった後輩に
ライブハウスの場所まで調べてもらって
(方向音痴すぎるもので)
後輩がバイト先に行くのを見届けて
それからそれから
空を見て、海を渡って、朝焼けに慟哭して
後輩のバイト先でお金を落とそうとおもって
しれっと飲んで、はしごtoはしご、
浴びた音と同じくらいのお酒飲んで、
スクランブル交差点の真ん中でおもいっきり吐いてるホストを横目に朝帰り。

10年前もこんなことしてたな、
ライブハウスからずっと朝まで
理由なんてひとつしかない、
余韻に浸りたいから。
余韻という言葉の通り
残り香みたいに脳の奥までこびりついた音を
簡単な眠りで溶かしたくなくて。

10年前からこんなことしてるのか。
17歳だったわたしの恋の相手は
同級生でも先輩でもなく
ましてやギタリストですらなく
ギターの音そのものだったんだとおもう。

そんな風におもえる時代に生まれてよかった。

令和が始まる前に
平成の最後に聴いたライブは
やっぱり大好きなギターだった。

何者でもないわたしだが
何者でもないなりに
ここで耳を澄ませてるよ。

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