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アルセーヌ・ルパン『金三角』その8-変装に次ぐ変装を見破れ!死んだとみせかけて実は・・?-

みなさん、こんにちは!

「金三角」の物語もいよいよ終盤に入り、前回はコラリーが偽の電報を受け取り、さらわれてしまったところで終わりました。

今回は、その続きからみていきたいと思います。

「金三角」と「パリの街歩き」の参考のため、拙著とYoutubeもあわせてご覧いただけると嬉しいです。

ルパンはパトリスに、”コラリーは絶対生きている”と言って安心させる。

そしてグレゴワールを殺したのは恐らくヤ・ボンだろうが、ヤ・ボンも重傷を負っているに違いないという。

ヤ・ボンは傷を負いながらも、2人にシメオンの逃亡先を指し示していた。

ギマール通り18番地。

このベルトゥー造船所からそう遠くない場所だという。

(原作では、ベルトゥー造船所からそう遠くない場所として、ギマール通りが設定されていますが、『アルセーヌ・ルパンの辞書(Dictionnaire Arsene Lupin』によると、エクトルギマール通りがモデルなんじゃないかと書かれています。でも、エクトルギマール通りは、パリ10区にある通りなので、「金三角」の舞台になっているパシー(16区)からは、えらく離れたところにあります。)

ギマール通りという通りはパリにはなく、エクトルギマール通りが10区にある

2人は早速このギマール通りの家に向かう。

応対したバシュロという人物は、シメオンに長い間世話になっており、ルパンとパトリスに対して最初は警戒していたが、今日シメオンがこのギマール通りの家に来たことを話す。

エサレスが死んでから、シメオンは今日はじめて家に来たらしい。

シメオンは家に来たが、またすぐ出て行ったらしく、バシュロは2人に行き先を教えなかった。

コラリーをシメオンに連れ去られているパトリスは、バシュロに対して行き先を言えとつかみかかる。

バシュロは、この自分につかみかかってくる青年がパトリスだと気づき、うろたえる。

あなたがシメオンの敵になるはずはない、あなたはシメオンさんの息子なのだからと白状する。

バシュロはコラリーとパトリスの親が死んだ日に、棺桶の準備をしていた者だった。

コラリーの母の遺体を棺桶に入れ、パトリスの父の遺体も入れたとき、パトリスの父の体がわずかに動き、実は死んでいなかったということが判明する。

パトリスの父は、バシュロに対して自分が生きていることを絶対に誰にも口外しないこと、そのほうが都合がいいと言い放つ。

そしてバシュロが言うには、エサレスに復讐をとげるために、そしてパトリスとコラリーを結びつけるために全生涯を注ぎ込んだというのだ。

パトリスは、自分達を屋敷に閉じ込めて殺そうとしたシメオンが、実は自分の父親だったという事実に気が狂いそうになる。

シメオンを追跡するため、ルパンとパトリスがレーヌワール通りに近づいたとき、銃声が聞こえる。

2人が駆けつけると、ヤ・ボンは死んだまま、シメオンの首を捕まえていた・・・。

死んだヤ・ボンの近くに拳銃が落ちていた。

ヤ・ボンは撃たれたが、シメオンの喉元を離さないでいたのだ。

シメオンも息も絶え絶えだったが、パトリスは”コラリーはどこだ!”と詰め寄る。

シメオンは朦朧としながらも「私はお前の父なのだ」と言う。

今までの大変な苦労(自身も殺されかけたこと、愛するコラリーを失ったこと)で、時々気が変になるのだと・・・。

それでもパトリスはコラリーが心配なので、居場所を問い詰める。

シメオンは、そばにいるルパンが立ち去れば、コラリーの居場所を教えると言う。

ルパンは立ち去ったが、シメオンはコラリーの居場所をなかなか言わず、まず金貨だ!金貨をあの男(ルパン)にとられるかもしれないと金貨の心配ばかりする・・。

そして、(以前パトリスとコラリーが閉じ込められた家にルパンがいるので)、ルパンをそこに閉じ込めて出られないようにしろとパトリスに命令する。

そうしないと、コラリーの居場所は教えないし、コラリーもどこかに閉じ込められているので、助からなくなるぞと言って脅す。

パトリスは意を決して、ルパンがいる部屋のかんぬきをかける。

シメオンはコラリーは墓石の下にいるという。

パトリスはシメオンの言うままに、墓石の下の石を移動させると、シメオンから突然一撃をくらい、一瞬のうちに石の扉が閉められてしまう。

シメオンは急いで今度はルパンを閉じ込めている部屋の前へ行く。

戸を開けてくれと言わんばかりにバンバンたたいている音がきこえてくる・・・。

シメオンはその部屋にガスを入れ始める・・。

それからシメオンはギマール通りのバシュロの家に向かう。

そしてバシュロにモンモランシー通りのジュデラック医師を呼ぶように頼む。

黄色い丸がレーヌアール通りを中心とした周辺。左下の黄色マーカー部分がモンモランシー通り。

シメオンは早速ジュデラック医師の診療所に行き、診察してもらう。

帰り際シメオンは「私はアルブアン夫人の友人」だと告げるが、医師はその意味が分からない。

つまり、シメオンは国外に逃亡したいため、偽の旅券をジュデラック医師に作ってほしかったので、偽の旅券を持っている人物と知り合いであることをほのめかしたのだ。

それなら20万フラン出せ!と医師が言うと、シメオンはあまりにも法外な金額に驚く。

医師が本名を明かせないなら、おまえはまともな人間ではない、スパイ(この当時は第一次世界大戦中)を逃亡させるにはそれなりのリスクがあるから、20万フランは妥当だと言う。

シメオンは、この医師に偽の旅券作成を頼むんじゃなかったと内心思いながらも、アルブアン夫人から無料で旅券を作ってもらった旨を聞いたことを告げる。

医師は夫人の美しさがお金に値するから無料にしたと答える。

そして夫人はフランスに戻ってきており、ベルトゥー造船所の船の上でグレゴワールという名前で死体で見つかったと、シメオンに告げる。

そして彼女(グレゴワール)が常に警戒していた人物が、おまえ(シメオン)だと言う。

シメオンに旅券を作るからには100万フランにすると、金額をどんどん釣り上げていく。

そして最終的には200万フランに・・。

(この人を食ったような対応から、読者の方は、ジュデラック医師の本当の正体がわかると思います。ジュデラック医師とシメオンのやりとりは滑稽なので、是非原作を一度読んでみてください。終始、ジュデラック医師のペースで、会話が進んでいます💦)

シメオンはこれはゆすりだと言い、医師もそれを認めるが、最近警視庁と和解したので、シメオンのことを警視庁にばらすと言う。

シメオンはしぶしぶ承諾し、金は例の川船の底(グレゴワールが死んでいた船)にあるという。

しかし、金のありかを聞いたジュデラック医師は突然その金は受け取らないと告げる。

なぜならそのお金は私のものだからと・・。

シメオンはお前は盗人だと叫ぶが、医師は平然としてあなたの愛人のグレゴワールから私への愛情のしるしとしてそのお金をもらったのだと告げる。

そして医師は決定的な事実を告げる。

旅券を作るからには本名を書かなければと・・・お前の本当の名前はエサレスだと!!

(シメオンに変装していた)エサレスは、それを見破ることが出来る人間は一人しかいない、そしてそれはアルセーヌ・ルパンだと。

エサレスは、目の前にいるジュデラック医師が実はアルセーヌ・ルパンなのだと気づく。

そこへ(死んだと思われていた)パトリスが現れる!

続く。

(「金三角」の謎を解くには、”変装に次ぐ変装”を見破らなければなりません。パトリスの父はシメオンに、エサレスもシメオン(もちろん、(パトリスの父であるシメオンを殺した後)に変装していました。早い段階でこの変装に気づいた読者の方は、その後スムーズに読み進めたのではないでしょうか。

それにしても、パトリスの父は、2回もエサレスに殺されたことになります・・・。1回目はガスで・・・この時はかろうじて生き延びましたが、、。復讐を果たすことなく2回目で殺されてしまうなんて、脇が甘いというかなんというか・・・。

それにしても、シメオンに変装したエサレスは、なぜ誰にも気づかれなかったんでしょう・・?声で見破れると思うのですが、それが不思議です。姿かたちは変装できても声はなかなか変えられませんから・・・。映画「ミッション・インポッシブル」でも、ちゃんと声まで変えているシーンがありましたよね。)

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