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移ろいゆく日々、日常を慈しむための空間をつくる
約5か月前、5年間務めた会社を退職した。
毎晩通った通勤路にあるアパートの階段の蛍光灯は、わたしが通っているあいだにチカチカと命を燃やし果て、また新たな命を灯すことを覚えていた。
はじめてこの地に降り立ったときは18歳だった。
自転車の空回りするチェーンの音に耳を塞ぎ、泣きながら見上げた関山越しの満月を鮮明に取り戻す。この地を歩いていた頃の生活におけるあれこれも、そこいらの景色に巻き付くようにし
ひだまりのように笑うおばあちゃんへ
拝啓 日中の空には早春の息吹が感じられる頃となりましたが、いかがお過ごしですか?
窓から差し込む陽の光がやはらかく、ついほのぼのとまどろんでしまいます。
最近になって、昔のことをよく思いだすようになりました。
うつらうつらした頭のまま、お父さんがわたしたちを運んできてくれた車から降りて、大きな荷物を抱えながらカラカラと扉を引くと、
ひだまりのようにやさしいおばあちゃんの笑顔に頭がぱぁっと晴れて、
雪降るチャーハンも悠々と
一昨日まで墨汁の滴る毛筆を立てて、気の向くままに書き初めていたものだが、もうすでにお正月が待ち遠しい。次のお正月はまだであろうか。
朝から身体が跳ねるように軽いのだ。
1年間で埃が被るように音もなく溜まっていった疲れやこわばりを、圧倒的な吸引力でごっそり吸いとられた感じ。
きっと休まれたのは身体よりも心のほうで、今なら開かずの瓶となっているディルピクルスと何時間でも格闘できそうな気がしている。
日本酒をすきになったとき、くるおしいほどにきゅうっとした
日本酒をのんだいつかのとき、間のある風味の心地よさに思わず言葉を呑み込んだ。声をあげてはいけないと思った。
この風味が頭のてっぺんからつま先まで抜かりなく行き渡るように、ゆっくりと鼻から息を吸って、つま先まで滑り込むのをしずかに待った。
𓈒.𓈒.𓈒.𓈒
日本酒ソムリエ検定 sake diplomaの資格を取得してから半年以上がたった。
試験がおわった頃から、日本酒と過ごした日々
『ひいては閑日月のなかに』② 5/7~5/14
つづき。Twitterには4日ごとに載せています。
5月7日(金)
会社に「山田さん」がいる。
はじめて彼からの電話を取ったとき、「山田です、おつかれやまです」と言われた。ユーモアのある人なんだな、と思った。(おもしろいかどうかは別として)
しかし、長く働いているうちにわかったことは、山田さんは至って真面目な人だということだった。淡々と仕事をこなし、軽口を叩くでもない。「駄洒落」という言葉
『ひいては閑日月のなかに』 ① 5/1~5/6
日々のことを書くことにした。目標は5月末まで。
続くかどうかわからないけれど、継続は力なりって近所のおっちゃんが言っていたので。
はじめに
「ひいては」からはじまる並びの違和感に、可能性をぎゅうっと詰め込んだ。ほかに、もうひとつ対象がないとつながらない言葉の前に、味気ないなにかがあったのか。〝閑日月のなかに〟、うんと特別でゆたかななにかがあるのか。
その答えは、明日唐突に転がり込んでくるの
今年も、たんぽぽ綿毛のドライフラワーをつくる。
ぽかぽかと陽のひかりが足元を照らすなか、黄色く鮮やかに彩るたんぽぽのとなりで、一足先にゆらゆらと春風をまつ。
繊細で、儚いたんぽぽの綿毛をみるたび、どうしてずっとこのままでいてくれないのだろう、と思っていた。白くてまるっこいふわふわのすがたは、ちいさな生きもののようで、愛らしい。きりとした白色でない、ふっくらとしたやはらかな白色。
持って帰りたくて大事に抱えていても、気がついたら、頭のつぶれたちっ
陽だまりのなかできらめく餃子をみる
まだ2月だというのに、すっかり溢れでてきた春の陽気にうつらうつらしている。
最近はずっとあたたかい。お昼休憩の時間になると、上着を羽織って文庫本、財布、携帯とカメラをポケットに潜めて自転車に跨る。両手でふわっと掴めそうなあたたかい風が頬をなでるのを感じた。
東京の夜からひかりが消えてしまったから、陽だまりのなかで風切ることにした。全身が、まばゆい陽をいっぱいに吸い込んだやさしい風に包まれる。
かわらない日常から消えた夜のひかり
東京の夜がすきだった。ちっとも孤独を感じさせないひかり多き東京の夜。道知れず、ふらっと小道に入っても、灯りのついた拠り所がかならずある。あたたかい人たちの幸せをみて、あたたかい料理をたべた。
東京の人が冷たいなんてうそだ。赤ちょうちんの垂れた暖簾をくぐったそのとき、孤独からは程遠く、あたたかいを体現したような湯気にもくもくと包まれる。みな各々の居場所で、各々の料理を飲み下す。誰も急いていない
キッチン、本屋、熟柿とブランデー
どうにもこうにもやるせない気持ちになったとき、私は文字を打っている。
なんだか書きたくなるのだ、無性に。
*
書くことと同じように、全宇宙に「やったろか、われい」という気持ちになってしまったときは商店街に駆け込んで、そのむしゃくしゃした気持ちに背中を押してもらって、お肉屋さんでお高めのいい鶏肉を買う。
大事なのは金額を気にしないことで、薄ら目で見ないふりをして、計算などはしない。
お会計のとき