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子どもの頃のはなし

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子どもの頃のエッセイをまとめました🦆
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飼育小屋で赤い瞳が見つめていた

飼育小屋で赤い瞳が見つめていた

通っていた小学校でうさぎが消えた。
子うさぎが忽然と姿を消したのだ。

小学校で飼われている飼育小屋の番のうさぎが産んだ子供だった。まだほわほわのちいさな命。

校内放送が流れて、先生たちが「みんなでうさぎを探しましょう」と言っていた。その様子は冷静だった。
わたしは真剣に子うさぎを探したが、見つかる気配はなかった。
産まれてしばらくは「そっとしてあげましょう」という話だった。だが、そっとしてあげ

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ヘビを手掴みで捕獲する父を見て育った

ヘビを手掴みで捕獲する父を見て育った

生まれてから一度もヘビを気持ち悪いと思ったことがない。わたしにとっては、ニョロニョロのかわいいやつ。
なんでこんなことを急に思ったかと言うと今日見かけたこのポスト。

このポストを見て、そっか、そうだよな…ヘビ気持ち悪いと思う人もいるよねと思った。

思えばヘビに限らず、爬虫類に対して気持ち悪いと思ったことがないのは父親の影響かもしれない。なんなら爬虫類大好き。
動物好きで動物に好かれる父は、どん

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言葉という大海原を泳いでいく

言葉という大海原を泳いでいく

言葉を覚えることが好きな子どもだった。
幼稚園生くらいの頃は話せる言葉が少ないから自分の抱えている胸のもやもやが言語化できなくて、口をぎゅっと閉じていた。だから、幼稚園であった嫌なことや苦しいことをあまり親に伝えられていなかった気がする。今でもその当時、幼稚園で人からされた嫌なことを覚えている。何であんなことを言われなければならなかったのか、今でも嫌な気持ちになる。言葉にできなかった思いは消化され

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ミカちゃんとの思い出(中)--知らない町の河川敷

ミカちゃんとの思い出(中)--知らない町の河川敷

ミカちゃんはみんながいる前では自己主張をしない控えめな子だったけれど、わたしと2人きりになると様子が違った。ぬいぐるみの一件も、2人でいたから起きたことで、きっと他に人がいたら起きなかったはず。2人でいると何かが作用して、ミカちゃんは予想できないことをしてしまう。
そのことについて、幼いわたしはうまく処理はできないものの、そういうものとして受け止めていた。胸の痛みには気づかないふりをして。

前回

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ミカちゃんとの思い出(上)--赤く染まったぬいぐるみ 

ミカちゃんとの思い出(上)--赤く染まったぬいぐるみ 

わたしには小学2年生の頃、ミカちゃんという仲のいい女の子の友だちがいた。それまではいろんな子と仲良くしていた気がする。小学校で特別仲良くなったのは、ミカちゃんが初めてだった。

ミカちゃんは学校という集団の中では、あまり自己主張をしない子だった。口数もそんなに多いほうではなかった。けれど、二人きりになると饒舌だった。言葉遣いも少し荒々しくて、わたしには新鮮に映った。

子どもの頃のわたしは来るもの

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わたしの大人の友だち

わたしの大人の友だち

そういえば今日は父の命日だ。
2周忌らしい。
まだ父のことを書けるところまで気持ちが整っていないので、せっかくだし父の周辺について書きたいと思う。父と共通の友だちについて。

みなさんは子どもの頃、大人の友だちっていましたか?

わたしにはいました。

その人は父の古くからの友人で、仕事仲間。
彼のことは仮にTくんと呼びましょう。
Tくんとは、物心つく頃から家族のように仲良くしていて、わたしは彼の

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