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ヒロインになれない私。

まれにドラマが生まれるところに遭遇することがある。

日付が変わった恵比寿の駅前。人目も気にせず泣き叫ぶ女性。その傍らには困り顔と呆れ顔がない混ぜになった男性。
深夜までやっている渋谷の喫茶店。安くとも一杯800円以上の珈琲と吸殻のたまった灰皿。携帯の向こうの人物と淡々と紡がれる会話。
下卑た笑いが響く繁華街。脱げたハイヒールと振り乱れる長い髪。剥がれた爪と取っ組み合いをするきつい香水の女性たち。

彼女たちは紛れもなくヒロインだ。

彼女たちにしてみれば、冗談じゃないと言った話かもしれないが、正直羨ましく思う。自分の心に正直に、感情を素直にありのまま表現できることに。

私は多分、感情に素直な人間でもあるが、感情に不誠実な人間でもある。
自分だけで完結することであれば、素直に感情を露わにする。それこそ、気分が良かったりすれば、変な小躍りをしてしまったりもする。
が、他者が介入する時は、自身の感情に割と蓋をする。
そういった行動は、大人になれば多かれ少なかれ誰しも経験をすることかもしれない。

忘年会などの会社の飲み会は大人数が集まるため、大抵席がくじ引きで決められるのだが、必ずしも自分が望む人たちと近い席になるわけではない。ああいった場で自分の感情を優先に動ける人が心底羨ましい。
同じテーブルに上席がいようと、後輩がいようと、入社間もない人がいようとそんな人達にはお構いなしで楽しそうな席に早々に移動できる人をどうなのよ?と思う反面、いいなと思ってしまう。
私だって楽しみたい。楽しみたいが、他の人たちのことを思うと誰が会話のネタ提供するの・・・?と移動することができない。(彼等は私にそんなことを求めていないかもしれないが)

なんなら、過去恋人と喧嘩をするときも、まずはその時々の状況を考えてから行動に移してきた。今、この話題を出したとして、既に終電間際、明日は平日仕事がある、会議がある、どう考えても30分ほどで解決する内容ではない、となると明日に影響が出る、週末にしよう。といった思考回路に落ち着く。
友人や家族と喧嘩をする時も同様だ。

感情のまま行動することができない。なのでドラマが生まれない。
ヒロインになれない。
時に、ヒロインたる人に遭遇し、ウヒョー羨ましいぜ!!!と遠くからその様子を眺める顔も描かれないモブ。
よくて、3巻くらいになってようやく名前が明らかになるヒロインのヒロインさを引き立てる友人。そんなところだろう。

だから、時たまものすごく少女漫画が読みたくなる。
あの安定の、あるあるパターン化した、わかりやすい伏線とフラグとともに展開する胸キュンストーリーにキュンキュンしたくなる。
以前そんな心情に陥った時に購入した漫画がある。

『消えた初恋』作者アルコ・原作ひねくれ渡

漫画

これを購入した時、電車の乗り換えの合間の時間を使って書店に行ったため、少女漫画コーナーに直行し、タイトルとジャッケットと直感で購入を決めた。
正直、ジャケットに描かれている短髪男子みたいなキャラクターが好きだ。そして、目に飛び込んできた「ひねくれ渡」というネームセンス。淡いカバーの配色もツボである。

帰宅して、これから体験するであろうキュンキュンのときめきに期待しながらページをめくる。あ、意外にギャグ要素もある。よき。そうか、そうか、主人公は茶髪の男の子(青木)ね、と読み進める。読み進めるが、あれ、雲行きが怪しい・・・。

表紙を見て勝手に想定していたのは、茶髪(青木)と短髪(井田)は仲良しお友達、そしてヒロインはおかっぱの女の子(橋本)。1ページ目で青木が主人公だと分かったので、青木→橋本さん→井田の恋模様、もしくは青木→橋本さん←井田の恋模様を想定した。

が、違う!いや、初めはまごうことなき青木→橋本さん→井田の恋模様だったんだけど、青木が橋本さんから借りた消しゴムに「イダ♡」と彫ってあったばっかりに、その消しゴムを青木が落として井田に拾ってもらったばっかりに、井田が消しゴムの彫りを見てしまったばっかりに「え?青木って俺のこと好きなの?え?」な展開に・・・。青木は青木で、想い人の橋本さんの気持ちを守るため、その消しゴム俺のって言っちゃうし、あれよあれよという間に、うん、面白い展開。

井田→♡?→青木

「このフラグ要らん!!!」って叫ぶ青木おもしろ。そして、不覚にも互いに胸キュンしている青木と井田可愛い。
当初求めていた展開と違うけど、全然よし!
むしろ、モアベター。おいしい・・・おいしすぎる・・・オタクの私にとっておいしすぎる展開。

まぁ、よくよく見たら背表紙にそんな説明書いてあったよ。いや、これは明らかに私の確認不足。不注意。が、災転じて福となす。ありがとうございます。
しかも、まだ完結してなかった。11月25日に新刊が出るらしい。楽しみ、早く読みたい。

もう自分がヒロインになれないとかいーわ。青木がヒロインになってくれたらそれでいーわ。
そう思わせてくれた、こちらのコミック。普通に面白いから機会があったら皆さまもぜひ読んでみて。少女漫画としての胸キュン要素もちゃんとあるから。そして、ギャグセンス高いから。絵も良いから。さすが、『俺物語!!』書いたアルコさんだよ。

にしても、今日は書き出しと終わりがまさかまさかだったなぁ。
あの書き出しで、このオチになるとは書いてる自分もびっくりだ!

▼ご興味がある方は是非に!

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