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本当に「目覚めよと呼ぶ声」はしたのか?――プロコール・ハルム、J・S・バッハ、ビーチボーイズ、ブラームス、ヴェンチャーズ
「国境の南のギターラ:マヌエル・マリア・ポンセ、アンドレ・セゴヴィア、ロドルフォ・ペレス 」という記事のために、ポンセ作のEstrellitaという曲のわが家にある全ヴァージョンを並べて聴いているうちに、古典曲をベースにしたポップ・チューンのあれこれが頭の中を飛び交いはじめた。
そのような曲の成り立ちをはじめて意識したのは、子供の時に買ったヴェンチャーズのSlaughter on 10th Av
国境の南のギターラ:マヌエル・マリア・ポンセ、アンドレ・セゴヴィア、ロドルフォ・ペレス
1984年だったと思うが、翻訳を届けに仕事場を訪ねて来た通訳の女性が、「音楽、お好きでしたよね、これからクセナキスのレセプションに行くんですけど、ご一緒にどうですか」と云う。
クセナキスのファンだったわけではないが、せっかくのお誘いではあるし、残業から逃げたい気分も手伝って、それではと、いや場所を忘れてしまったのだが、内幸町のプレス・センターか、あるいはどこかのホテルだったか、まだほぼ全員が残っ
あらいいオンド:三波春夫「温度音頭」と江利チエミ「真室川音頭」
長年の友人から三波春夫の音頭集をすすめられ、一聴、馬鹿笑いしてしまった。
いや、アルバム全体がコミック・ソングで埋め尽くされているわけではなく、「温度音頭」という曲に、脳味噌を右往左往させられ、なんだよこれは! となったのだ。
◎「上を向いて歩こう」コンビ
「温度音頭」は、作曲・中村八大、作詞・永六輔、「上を向いて歩こう」を筆頭に、「黒い花びら」「夢で逢いましょう」「こんにちは赤ちゃん」「遠
デイヴ・パイク、ジム・ホール&ロン・カーター、ハービー・マンほか:Sonny Rollins' "St. Thomas"各種
先日の「Oregon Guitar Quartet - Covers:ビート・ミュージックのクラシックへの逆流 」という記事の最後に、この盤でカヴァーされた曲のオリジナルや大昔のカヴァー・ヴァージョンを並べて聴き比べをしたことにふれ、とくに、ソニー・ロリンズ作のSt. Thomasが、それほど有名曲というわけでもないものだから、並べて聴いたら新鮮で面白かったことを書いた。
あれはオレゴン・ギター
Oregon Guitar Quartet - Covers:ビート・ミュージックのクラシックへの逆流
『エスタニスラオ・マルコ:知られざる純粋ギター・コンポーザー』でふれた、近年のクラシカル・ギターのポップないしはビート・ミュージックへの接近のサンプルをまたひとつ聴いた。オレゴン・ギター・カルテットなるグループによる、その名もCoversというアルバムである。
「カヴァー」という言葉自体がポップ・ミュージックのものであり、クラシカル・ミュージックの世界では使わない。それは、云うまでもなく、「オリ
エスタニスラオ・マルコ:知られざる純粋ギター・コンポーザー
四年ほど前の冬のある日、ふと、今年は徹底的にスパニシュ・ギターを聴こう、と思った。
きっかけはホアキン・ロドリゴの誰もが知るギター・コンチェルト「アランフェス協奏曲」の、4ビート、8ビート系プレイヤーによるカヴァーでは、かならず無視される第1楽章を聴いたことだった。
マイルズ・デイヴィスがやって以来(というか、主体はギル・エヴァンズだったと見ているが)、多くのジャズ・プレイヤーが録音し、はては
古典ミステリー初読再読終読:The Tattoo Murder Case (高木彬光『刺青殺人事件』英訳)
高木彬光の『刺青殺人事件』は二度、というか、二種のエディションをそれぞれ少なくとも一回ずつは読んでいるし、大幅に増補した第二稿のほうは二度読んだかもしれない。
今回は英訳版を読んだのだが、比較したわけではないものの、分量から云って、これは当然、増補改訂後の第二稿、ロング・ヴァージョンの翻訳だ。
◎安吾の酷評
そう云ってはなんだが、高木彬光という人は、文章力にはまったく定評のない作家で、十代の
旅芸人と神と鬼:モーム、小津安二郎、フェリーニ、鈴木清順、横溝正史、エルヴィス、小林旭、川端康成
「古典ミステリー初読再読終読:サマーセット・モーム『アシェンデン或いは英国諜報員』その1」でふれた、イギリスの某国駐在大使の若き日の恋の相手が、旅芸人一座の醜いアクロバット芸人だというのを読んで、いろいろ思いだし、あれこれ考えた。
そのあれやこれやを書くので、これは「アシェンデン」を扱った三つの記事のまっすぐなつづきというより、枝分かれというべきかもしれない。
◎川端康成『伊豆の踊子』
日本
古典ミステリー初読再読終読:サマーセット・モーム『アシェンデン或いは英国諜報員』その3
(「古典ミステリー初読再読終読:サマーセット・モーム『アシェンデン或いは英国諜報員』その2」よりのつづき)
◎寝返りの寝返り
(承前)そして、そのつづきの、アシェンデンがグスタフに「調査中」だと云った、やはりスイスにいるスパイを描く「裏切者」(The Traitor)という章も深い味がある。
その駐在員が住むLucerneまたはLuzern(現在はルツェルンと表記するらしいが、スイス・ドイツ
古典ミステリー初読再読終読:サマーセット・モーム『アシェンデン或いは英国諜報員』その2
(承前)
「古典ミステリー初読再読終読:サマーセット・モーム『アシェンデン或いは英国諜報員』」でふれたX国駐在英国大使の告白を聞きながら、アシェンデンはしきりに時間を気にしている。
夜遅くに「人と会う約束がある」のだとしたら、ふつうなら情事だと思うが、アシェンデンはエイジェントだ、何か別の理由だろう。
しかし、大使の独り語りが終わり、外出から戻った夫人に挨拶すると、アシェンデンはそそくさと公
ローランド・カーク - Triple Threat, 1957
子供の時にテレビで見て、テナーとソプラノを同時に吹くというアクロバットに驚いたが、虚心にプレイを聴けば、出音もピッチもよく、その気ならスタジオ・プレイヤーにもなれただろう技術を持っている。
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ローランド・カーク - Triple Threat, 1957
そもそももヘチマもあったものではない。デビュー盤からして、すでに4ビート的というよりR&B、いや、ポップ・アルバムといってもいい。ほとんどキング・カーティスを聴いている気分で笑ったのなんの。
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ローランド・カーク - Complete Recordings 1956-62
どこでグレて「そういう人」になっちゃったのかと、そもそものはじめまで遡って聴いてみた。デビューから数年間のリーダー盤、ゲスト盤の詰め合わせ。
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ローランド・カーク - Blacknuss, 1971
いや、モータウンのカヴァーはまだわかる。わからないのはMake It With You。同題異曲でしょ、まさかアレじゃないさ、と思ったら、まさかのブレッドのアレ! ふつう、あの時代のジャズ・プレイヤーはやらないぜ。
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