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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので…

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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので、備忘録的に感想をまとめることにしました。よろしくお願いします。

記事一覧

映画へGO!「ブルーピリオド」

(※多少のネタバレあります) 原作のことをそんなには深く知らずに鑑賞して参りました。 美術の世界を描いていますが、心・技・体でライバルと向き合い、仲間と向き合い…

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8日前
2

映画へGO!「夏の終わりに願うこと」

(※多少のネタバレあります) がんのステージが進行し、余命もあとわずかの父・トナの誕生パーティーが開かれるある日の出来事。 内省的で少し大人びたトナの娘の少女・ソ…

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8日前
6

映画へGO!「ある一生」

(※多少のネタバレあります) 非常に胸を掻きむしられる良き映画でした。 単館系の小さなシアターで鑑賞しましたが、あちこちで号泣している人が多数。私もそのうちの一人…

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2週間前
2

映画へGO!「ボレロ 永遠の旋律」

(※多少のネタバレあります) フランスらしい、男女の濃密な距離感と絶妙な対話の官能性を、映画全体にうまく纏わせながら、とはいえ一般的なラブロマンスには収斂させず…

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2週間前
10

映画へGO!「大いなる不在」

(※多少のネタバレあります) 森山未來、藤竜也、原日出子、真木よう子。 この4人が、それぞれの役の心情とその変化・絡み合いを絶妙に表現し、サスペンス・ラブストーリ…

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1か月前
2

映画へGO!「チャレンジャーズ」

(※多少のネタバレあります) キーとなるフレーズ、アクション、エピソード、ビジュアル、音楽などがハッキリしているので、まるでテニスのラリーのように時系列が行った…

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1か月前
4

映画へGO!「あんのこと」

(※多少のネタバレあります) 恵まれないどころか、毒親の元であまりにも酷い境遇に生まれ育った主人公”あん”の物語です。 覚せい剤に手を出し、体を売るような生活を…

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2か月前
3

映画へGO!「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

(※多少のネタバレあります) 「よし、観に行こう!」という強い動機は、正直無かったです。。 生徒たちに煙たがられている頑固者の教師と、素行が悪く言うことを聞かない…

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2か月前
4

映画へGO!「碁盤斬り」

(※多少のネタバレあります) 原作が落語なんですね。 それを映画に仕立てて、とても魅力的な時代劇となっていました。監督・役者・演出陣の様々な想像力/創造力の結集で…

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3か月前
5

映画へGO!「鬼平犯科帳 血闘」

(※多少のネタバレあります) 「SHOGUN」のように、ハリウッドがグローバルエンターテインメントとしての時代劇をつくるご時世。Made in Japanの保守本流である松竹が、今…

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3か月前
2

映画へGO!「無名」

(※多少のネタバレあります) 美しい男優と女優、ファッショナブルなスーツ、ムーディーで陰影ある光、ばっちりと計算された画面の構図、神経質なまでに厳選されたプロッ…

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3か月前
3

映画へGO!「青春18×2 君へと続く道」

(※多少のネタバレあります) 男性の主演であるジミー役のシュー・グァンハンは、とても絵になる俳優でした。 特別な二枚目ではないと思うのですが、旅する日本の風景の中…

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3か月前
5

映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

(※ネタバレあります) 全然異なる設定や題材ではあるのですが、観終わった直後には処理し切れない余韻を残し、心がざわつくのは、「ドライブ・マイ・カー」と同様の感覚…

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3か月前
18

映画へGO!「プリシラ」

(※多少のネタバレあります) 「ロスト・イン・トランスレーション」好きの自分としては、ちょっと期待値が高すぎて、結果”なんか変な映画だったな・・・”という読後感…

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4か月前
7

映画へGO!「落下の解剖学」

(※多少のネタバレあります) カンヌのパルムドール、アカデミー賞の脚本賞などを受賞、かつ法廷モノということで観に行って参りました。(法廷モノ好きなので・・) 確…

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5か月前
1

映画へGO!「コットンテール」

(※多少のネタバレあります) イギリスと日本の合作。監督&脚本がイギリス人、キャストがほぼ日本人というところになんとなく惹かれつつ、予告編映像の風景があまりにム…

kassina
5か月前
映画へGO!「ブルーピリオド」

映画へGO!「ブルーピリオド」

(※多少のネタバレあります)
原作のことをそんなには深く知らずに鑑賞して参りました。

美術の世界を描いていますが、心・技・体でライバルと向き合い、仲間と向き合い、そして己と向き合うという、あたかもアスリートシップを捉えた普遍的な物語になっていたので、自然とその青春世界に引き込まれ、エンターテイメントとして楽しめました。

最近の若手俳優の名前はすらすらと出てこないのですが、スマートで熱い主人公の

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映画へGO!「夏の終わりに願うこと」

映画へGO!「夏の終わりに願うこと」

(※多少のネタバレあります)
がんのステージが進行し、余命もあとわずかの父・トナの誕生パーティーが開かれるある日の出来事。
内省的で少し大人びたトナの娘の少女・ソルの、繊細なココロの動きや表情を鮮明に捉えた、切なくも瑞々しい映画でした。

とはいえ、深刻な状況をただ深刻に描いているわけでなく、ラテンの国メキシコが舞台ということもあってか、登場するファミリー一同の面々や友人たちの言葉や行動はどこかユ

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映画へGO!「ある一生」

映画へGO!「ある一生」

(※多少のネタバレあります)
非常に胸を掻きむしられる良き映画でした。
単館系の小さなシアターで鑑賞しましたが、あちこちで号泣している人が多数。私もそのうちの一人となりました。

壮大な地球の歴史、人類の歴史からすれば、本当に取るに足らないある一人の男の一生を描いた物語。

ただしそこには、幸せに生きることの普遍的な意味がはっきりと示されていたように感じられました。

孤児として恵まれない境遇で生

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映画へGO!「ボレロ 永遠の旋律」

映画へGO!「ボレロ 永遠の旋律」

(※多少のネタバレあります)
フランスらしい、男女の濃密な距離感と絶妙な対話の官能性を、映画全体にうまく纏わせながら、とはいえ一般的なラブロマンスには収斂させずに、「愛の対象が女性ではなく、音楽であった」ことを貫ぬく、ラヴェルの苦悩に満ちた生涯を描いたとてもユニークな作品でした。

というのも、男女の愛の物語と音楽が生まれる物語が、時に絡み合い、時に離れていきながら進行していくのですが、最後の最後

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映画へGO!「大いなる不在」

映画へGO!「大いなる不在」

(※多少のネタバレあります)
森山未來、藤竜也、原日出子、真木よう子。
この4人が、それぞれの役の心情とその変化・絡み合いを絶妙に表現し、サスペンス・ラブストーリー・社会ドラマの要素がゆるやかに錯綜する複雑な作品が、非常に自然ないいテンションでまとめ上げられていました。

ストーリーの大きな軸が、藤竜也と森山未來の親子関係と、藤竜也と原日出子の夫婦関係で、そこを大きく動かしていくのが認知症というこ

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映画へGO!「チャレンジャーズ」

映画へGO!「チャレンジャーズ」

(※多少のネタバレあります)
キーとなるフレーズ、アクション、エピソード、ビジュアル、音楽などがハッキリしているので、まるでテニスのラリーのように時系列が行ったり来たりする展開であっても、比較的ストーリーの繋がりがわかりやすく、非常に吸引力の強いキャッチーな映画に仕上がっています。

主演のゼンデイヤが演じるタシのセリフにある通り、「テニスとは人間関係の表現である」をそのまま映画にしたような、3人

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映画へGO!「あんのこと」

映画へGO!「あんのこと」

(※多少のネタバレあります)
恵まれないどころか、毒親の元であまりにも酷い境遇に生まれ育った主人公”あん”の物語です。

覚せい剤に手を出し、体を売るような生活をしていながら、それでも誰か人のために生きたいという、かすかな心のともしびを失わなかったあん。
なんとか立ち直って普通の生活を送れるようになって欲しいと祈るような気持ちで、不穏な空気が立ち消えることのないスクリーンを、固唾を飲んで見つめたの

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映画へGO!「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

映画へGO!「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

(※多少のネタバレあります)
「よし、観に行こう!」という強い動機は、正直無かったです。。
生徒たちに煙たがられている頑固者の教師と、素行が悪く言うことを聞かない生徒の心の交流。
あるいは、損得勘定だけで生きるべきではないという人生への大切な教訓。
映画としては、ありふれたあらすじの展開であり、他の映画でも出てきそうな主題だったりします。

とはいえですが、見終わってみると、いい映画体験だったと納

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映画へGO!「碁盤斬り」

映画へGO!「碁盤斬り」

(※多少のネタバレあります)
原作が落語なんですね。
それを映画に仕立てて、とても魅力的な時代劇となっていました。監督・役者・演出陣の様々な想像力/創造力の結集です。
「鬼平犯科帳」に続き、期せずして2週連続で時代劇を楽しみました。

現代の感覚で見ると、主人公柳田(草彅剛)の思考回路や話の展開など「えっ?そうなっちゃうの??」というようなツッコミどころ多数なのですが、江戸の美しい四季を背景にした

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映画へGO!「鬼平犯科帳 血闘」

映画へGO!「鬼平犯科帳 血闘」

(※多少のネタバレあります)
「SHOGUN」のように、ハリウッドがグローバルエンターテインメントとしての時代劇をつくるご時世。Made in Japanの保守本流である松竹が、今どのような時代劇を撮るのかに興味が湧いて、「鬼平犯科帳」を観て参りました。

ところどころで、余白・余韻のないテレビドラマ風な、的確過ぎる描き方が気にはなってしまったのも事実ですが、気づけば徐々に引き込まれ、時代劇特有の

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映画へGO!「無名」

映画へGO!「無名」

(※多少のネタバレあります)
美しい男優と女優、ファッショナブルなスーツ、ムーディーで陰影ある光、ばっちりと計算された画面の構図、神経質なまでに厳選されたプロップ、お洒落なベーカリー、そして何より、激しいダンスのような息を呑むアクション・・・。
他に何がいるの?という位、ぐいぐい引き込まれる映画でした。フィルムノワール。

これより優れた映画って、恐らくたくさんあると思うのですが、緊張感がみなぎり

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映画へGO!「青春18×2 君へと続く道」

映画へGO!「青春18×2 君へと続く道」

(※多少のネタバレあります)
男性の主演であるジミー役のシュー・グァンハンは、とても絵になる俳優でした。
特別な二枚目ではないと思うのですが、旅する日本の風景の中に、異邦人として溶け込みながら、かつて恋をした彼女を探し、自分の今も見つめようとしている切ない姿に、嫌みなく感情移入ができます。

一方で女性の主演アミ役は清原果那。こちらは明らかに美女ではあるものの、演技に変な自意識が侵食しておらず、台

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映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

(※ネタバレあります)
全然異なる設定や題材ではあるのですが、観終わった直後には処理し切れない余韻を残し、心がざわつくのは、「ドライブ・マイ・カー」と同様の感覚でした。
これは濱口監督が狙う、観客との距離感なのでしょうか?くせものですね・・。

前段は、過剰なまでにスローなペースで展開される、舞台となる田舎エリアでの生活風景の描写。
それは、淡々と自然と向き合って生きている主人公とその家族や仲間た

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映画へGO!「プリシラ」

映画へGO!「プリシラ」

(※多少のネタバレあります)
「ロスト・イン・トランスレーション」好きの自分としては、ちょっと期待値が高すぎて、結果”なんか変な映画だったな・・・”という読後感で映画館を後にしました。

「14歳(!)でエルビスプレスリーと出会って、アッという間に恋に落ち、一緒にファミリーとして暮らし始めながら、ついに結婚をし、子供も産んで、やがて別れが訪れるその瞬間まで」・・を一気通貫で主人公プリシラの視点で描

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映画へGO!「落下の解剖学」

映画へGO!「落下の解剖学」

(※多少のネタバレあります)
カンヌのパルムドール、アカデミー賞の脚本賞などを受賞、かつ法廷モノということで観に行って参りました。(法廷モノ好きなので・・)

確かに深く激しいセリフの応酬は見応え十分であり、その情報量の多さゆえ、観る側のエネルギーを大きく消耗していくレベルです。笑

一方法廷モノとしては、アメリカの裁判(例えば「SUITS」的な)から連想されるような、いわゆる知的ゲームのラリーを

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映画へGO!「コットンテール」

映画へGO!「コットンテール」

(※多少のネタバレあります)
イギリスと日本の合作。監督&脚本がイギリス人、キャストがほぼ日本人というところになんとなく惹かれつつ、予告編映像の風景があまりにムードたっぷりに美しかったので鑑賞してみました。

妻(木村多江)を認知症で失った夫(リリーフランキー)。妻の遺言に導かれ、イギリスのウィンダミア湖に向かう夫と息子(錦戸亮)の間には、積み重なった大きなわだかまりがあり、旅の途中で衝突を繰り返

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