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映画へGO!「大いなる不在」

(※多少のネタバレあります)
森山未來、藤竜也、原日出子、真木よう子。
この4人が、それぞれの役の心情とその変化・絡み合いを絶妙に表現し、サスペンス・ラブストーリー・社会ドラマの要素がゆるやかに錯綜する複雑な作品が、非常に自然ないいテンションでまとめ上げられていました。

ストーリーの大きな軸が、藤竜也と森山未來の親子関係と、藤竜也と原日出子の夫婦関係で、そこを大きく動かしていくのが認知症ということもあり、やはり印象に残る怪演を見せたのは藤竜也でしたね。

藤竜也は、若い頃~中年期は、そのカッコ良さだけが先に立ってしまい、演技があまり印象に残らなかったのですが、年を取るにつれて、渋みはもちろん、独特のユーモアや時には狂気までを上手く表現できて、どんどん魅力的な俳優になっています。素晴らしかった!

大きくココロを動かされたシーンが3つ。

ひとつは、自分が息子のことを寄せ付けずにいたことを藤竜也が告白・懺悔し、それを微妙な表情で噛み締め、受け入れる森山未來の繊細な心情表現。ものすごい緊張感と雪解け感が融合する見事な場面であり、ひとつのハイライトとなってました。

もうひとつは、不倫であると同時にとことん深い純愛でもあった、藤竜也と原日出子の夫婦関係が、認知症によって決定的に崩されていくシーン。
この時の原日出子のガラス越しの表情にはココロをかき乱されました。深く傷付いた様があまりに切ない。。

そして最後は、森山未來が原日出子の故郷を訪ね、父の原日出子に対する想いを追体験するシーン。父のラブレターを読み上げるのは、若干演出過多な気もしますが、素敵なロードムービーのようで絵になりました。
ここで、明示まではされないのですが、原日出子はもうこの世にはいないのでは?というようなことが、うっすらと匂わされていると解釈しました。

全体としては、いろんな役者のチカラで魅せる映画だったと思います。安定感ありましたし。
とはいえ、やはり今思い返しても、藤竜也のいろんな表情が次々と頭に浮かぶのです。つまり、それを観に行くだけでも十分な価値があるということでした。

個人的評価:★★★☆☆
逆に、最後の森山未來が劇中劇的に、舞台で演ずるパフォーマンスは、いまいちピンと来ませんでしたが、あれは必要だったのでしょうか?


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