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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので…

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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので、備忘録的に感想をまとめることにしました。よろしくお願いします。

最近の記事

映画へGO!「大いなる不在」

(※多少のネタバレあります) 森山未來、藤竜也、原日出子、真木よう子。 この4人が、それぞれの役の心情とその変化・絡み合いを絶妙に表現し、サスペンス・ラブストーリー・社会ドラマの要素がゆるやかに錯綜する複雑な作品が、非常に自然ないいテンションでまとめ上げられていました。 ストーリーの大きな軸が、藤竜也と森山未來の親子関係と、藤竜也と原日出子の夫婦関係で、そこを大きく動かしていくのが認知症ということもあり、やはり印象に残る怪演を見せたのは藤竜也でしたね。 藤竜也は、若い頃~

    • 映画へGO!「チャレンジャーズ」

      (※多少のネタバレあります) キーとなるフレーズ、アクション、エピソード、ビジュアル、音楽などがハッキリしているので、まるでテニスのラリーのように時系列が行ったり来たりする展開であっても、比較的ストーリーの繋がりがわかりやすく、非常に吸引力の強いキャッチーな映画に仕上がっています。 主演のゼンデイヤが演じるタシのセリフにある通り、「テニスとは人間関係の表現である」をそのまま映画にしたような、3人の男女をコアに、そのバランスが刻一刻と変幻する、モダンなラブストーリーでした。

      • 映画へGO!「あんのこと」

        (※多少のネタバレあります) 恵まれないどころか、毒親の元であまりにも酷い境遇に生まれ育った主人公”あん”の物語です。 覚せい剤に手を出し、体を売るような生活をしていながら、それでも誰か人のために生きたいという、かすかな心のともしびを失わなかったあん。 なんとか立ち直って普通の生活を送れるようになって欲しいと祈るような気持ちで、不穏な空気が立ち消えることのないスクリーンを、固唾を飲んで見つめたのですが・・・、 待.っていたのは残酷なエンディングでした。あまりにも残酷な。

        • 映画へGO!「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

          (※多少のネタバレあります) 「よし、観に行こう!」という強い動機は、正直無かったです。。 生徒たちに煙たがられている頑固者の教師と、素行が悪く言うことを聞かない生徒の心の交流。 あるいは、損得勘定だけで生きるべきではないという人生への大切な教訓。 映画としては、ありふれたあらすじの展開であり、他の映画でも出てきそうな主題だったりします。 とはいえですが、見終わってみると、いい映画体験だったと納得することができ、十分な満足感が得られたのでした。 つまり・・映画のおもしろみ

        映画へGO!「大いなる不在」

          映画へGO!「碁盤斬り」

          (※多少のネタバレあります) 原作が落語なんですね。 それを映画に仕立てて、とても魅力的な時代劇となっていました。監督・役者・演出陣の様々な想像力/創造力の結集です。 「鬼平犯科帳」に続き、期せずして2週連続で時代劇を楽しみました。 現代の感覚で見ると、主人公柳田(草彅剛)の思考回路や話の展開など「えっ?そうなっちゃうの??」というようなツッコミどころ多数なのですが、江戸の美しい四季を背景にした絵づくりの格調の高さや、時代劇にしてはモダンな画面の動きのリズム・抑揚などのセン

          映画へGO!「碁盤斬り」

          映画へGO!「鬼平犯科帳 血闘」

          (※多少のネタバレあります) 「SHOGUN」のように、ハリウッドがグローバルエンターテインメントとしての時代劇をつくるご時世。Made in Japanの保守本流である松竹が、今どのような時代劇を撮るのかに興味が湧いて、「鬼平犯科帳」を観て参りました。 ところどころで、余白・余韻のないテレビドラマ風な、的確過ぎる描き方が気にはなってしまったのも事実ですが、気づけば徐々に引き込まれ、時代劇特有のカタ、歌舞伎的な見得の切り方などの演出が心地よく感じてきて、それらを映画館の大画

          映画へGO!「鬼平犯科帳 血闘」

          映画へGO!「無名」

          (※多少のネタバレあります) 美しい男優と女優、ファッショナブルなスーツ、ムーディーで陰影ある光、ばっちりと計算された画面の構図、神経質なまでに厳選されたプロップ、お洒落なベーカリー、そして何より、激しいダンスのような息を呑むアクション・・・。 他に何がいるの?という位、ぐいぐい引き込まれる映画でした。フィルムノワール。 これより優れた映画って、恐らくたくさんあると思うのですが、緊張感がみなぎりながらも、いつまでも観ていられ、時を忘れてうっとりさせてくれる作品って、自分にと

          映画へGO!「無名」

          映画へGO!「青春18×2 君へと続く道」

          (※多少のネタバレあります) 男性の主演であるジミー役のシュー・グァンハンは、とても絵になる俳優でした。 特別な二枚目ではないと思うのですが、旅する日本の風景の中に、異邦人として溶け込みながら、かつて恋をした彼女を探し、自分の今も見つめようとしている切ない姿に、嫌みなく感情移入ができます。 一方で女性の主演アミ役は清原果那。こちらは明らかに美女ではあるものの、演技に変な自意識が侵食しておらず、台湾のバックパッカー役にスッと入り込んでいて、こちらも共感しやすく描かれていました

          映画へGO!「青春18×2 君へと続く道」

          映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

          (※ネタバレあります) 全然異なる設定や題材ではあるのですが、観終わった直後には処理し切れない余韻を残し、心がざわつくのは、「ドライブ・マイ・カー」と同様の感覚でした。 これは濱口監督が狙う、観客との距離感なのでしょうか?くせものですね・・。 前段は、過剰なまでにスローなペースで展開される、舞台となる田舎エリアでの生活風景の描写。 それは、淡々と自然と向き合って生きている主人公とその家族や仲間たちの独特の時間感覚を、意図的に観客にも同じテンポで与えているのだ、ということに後

          映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

          映画へGO!「プリシラ」

          (※多少のネタバレあります) 「ロスト・イン・トランスレーション」好きの自分としては、ちょっと期待値が高すぎて、結果”なんか変な映画だったな・・・”という読後感で映画館を後にしました。 「14歳(!)でエルビスプレスリーと出会って、アッという間に恋に落ち、一緒にファミリーとして暮らし始めながら、ついに結婚をし、子供も産んで、やがて別れが訪れるその瞬間まで」・・を一気通貫で主人公プリシラの視点で描いた映画です。 まずもっての冒頭からの違和感は、プリシラが14歳の段階でお互い

          映画へGO!「プリシラ」

          映画へGO!「落下の解剖学」

          (※多少のネタバレあります) カンヌのパルムドール、アカデミー賞の脚本賞などを受賞、かつ法廷モノということで観に行って参りました。(法廷モノ好きなので・・) 確かに深く激しいセリフの応酬は見応え十分であり、その情報量の多さゆえ、観る側のエネルギーを大きく消耗していくレベルです。笑 一方法廷モノとしては、アメリカの裁判(例えば「SUITS」的な)から連想されるような、いわゆる知的ゲームのラリーを繰り返しながら、白と黒をはっきり決着させていくようなスカッとした展開ではありませ

          映画へGO!「落下の解剖学」

          映画へGO!「コットンテール」

          (※多少のネタバレあります) イギリスと日本の合作。監督&脚本がイギリス人、キャストがほぼ日本人というところになんとなく惹かれつつ、予告編映像の風景があまりにムードたっぷりに美しかったので鑑賞してみました。 妻(木村多江)を認知症で失った夫(リリーフランキー)。妻の遺言に導かれ、イギリスのウィンダミア湖に向かう夫と息子(錦戸亮)の間には、積み重なった大きなわだかまりがあり、旅の途中で衝突を繰り返しながら、でもいつかはわかり合えていくのか・・? というのがざっくりストーリーに

          映画へGO!「コットンテール」

          映画へGO!「梟 ーフクロウー」

          (※多少のネタバレあります) 不穏なムード一杯の、”そそるビジュアル”に誘われて観に行きました。 結果、終始退屈することなく楽しめたものの、とはいえ今一つココロに残るものがなかったかな・・というのが正直な感想です。 そもそもイメージしていたホラー的な要素はありませんでしたし、かと言って深く掘り下げられたヒューマンドラマでもなければ、サスペンスとしても、わかりやすさの方が先に立って、思ったほどの意外性やハラハラドキドキ感はなかったですかね。 とはいえ、そういうジャンルレス

          映画へGO!「梟 ーフクロウー」

          映画へGO!「コット、はじまりの夏」

          (※多少のネタバレ) 大家族の中でも、静かに孤独な日々を生きる少女コット。両親から追い出されるように親戚の家に預けられるのですが、そこでの毎日がコットにとって、かけがえない経験となっていく。 いろいろあってのエンディングの先、コットがどうなっていくかは、観るものの想像に委ねられるカタチではあるのですが、”はじまりの夏”というタイトルにもあるように、切なくもどこかポジティブな予感に溢れていて、とても素敵な読後感の映画でした。 前評判通りにコット役の少女は、胸がキュンキュンす

          映画へGO!「コット、はじまりの夏」

          映画へGO!「市子」

          (※多少のネタバレあります) 杉咲花演じる、抱えきれないほどに重たく暗い過去を背負った主人公の女性。 本当に普通でささやかな幸せを手に入れられそうになったところで、それもするりと逃げていってしまう。。 彼女が何者であるかを描いたヒューマンドラマなのですが、時間を遡りながら、闇の奥に隠れた事実を少しづつ明らかにしていくミステリーのフレイバーもあり、とても見ごたえのある映画でありました。 まずとても感心したのは、撮影の巧みさでした。 説明がなんとも難しいのですが、映像の切り取り

          映画へGO!「市子」

          映画へGO!「ポトフ 美食家と料理人」

          (※多少のネタバレあります) タイトルからすると、料理を真ん中に置いたハートウォーミングなロマンチックコメディーみたいなありふれた感じが想像されて、遠慮しようかと思ったのですが、監督がトラン・アン・ユンであれば「大丈夫なはず・・」ということで鑑賞。 結果、観て良かった、見逃さなくて良かったと思える作品でした! ちょっとスノッブだけれども、フレッシュなセンスが溢れていて、平凡に陥らないラブロマンス・人生賛歌。ココロ震わされました。 自分自身が料理をよく作る方なので、長回しで

          映画へGO!「ポトフ 美食家と料理人」