映画へGO!「無名」
(※多少のネタバレあります)
美しい男優と女優、ファッショナブルなスーツ、ムーディーで陰影ある光、ばっちりと計算された画面の構図、神経質なまでに厳選されたプロップ、お洒落なベーカリー、そして何より、激しいダンスのような息を呑むアクション・・・。
他に何がいるの?という位、ぐいぐい引き込まれる映画でした。フィルムノワール。
これより優れた映画って、恐らくたくさんあると思うのですが、緊張感がみなぎりながらも、いつまでも観ていられ、時を忘れてうっとりさせてくれる作品って、自分にとって大変貴重なのでした。
トニー・レオンはもちろんかっこいい。落ち着いた大人のすごみですね。
ただ、本作品で最終的にすべてを持って行っている印象があるのが、若いワン・イーボーでした。
深い孤独と傷を抱えたスパイ役を、でも甘くスタイリッシュに演じ切りました。これは日本人にはいないムードの俳優さんなのではないでしょうか?
加えて、3人の印象的な女優も登場します。全くタイプは異なりますが、それぞれに目力がありインディペンデントで魅力的。物語に緊張感と気品を与えてくれるのでした。
演出的なポイントとしては、さまざまなエピソードを時系列バラバラに複雑に組み合わせることで、独特の映画的なリズムをつくっているのですが、最期には、比較的丁寧に回収作業を行ってくれているので、変なフラストレーションはたまらずに、「なるほど!」「なるほど!!」と心地良い納得感がありました。
ただ1点だけ、トニー・レオンとワン・イーボーがなぜあそこまで、徹底的に殺し合いをしなければならなかったのかは、いまだに良くわかっていません。。
でも、そんなことすら、気にならなくなるほど、雰囲気に酔わせてくれる映画なのでした。もちろん誉め言葉です!
個人的評価:★★★★☆
ベーカリーショップもすごく印象に残っています。そういうところまで妥協無くクリエーティビティを貫く作品。
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