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映画へGO!「あんのこと」

(※多少のネタバレあります)
恵まれないどころか、毒親の元であまりにも酷い境遇に生まれ育った主人公”あん”の物語です。

覚せい剤に手を出し、体を売るような生活をしていながら、それでも誰か人のために生きたいという、かすかな心のともしびを失わなかったあん。
なんとか立ち直って普通の生活を送れるようになって欲しいと祈るような気持ちで、不穏な空気が立ち消えることのないスクリーンを、固唾を飲んで見つめたのですが・・・、
待.っていたのは残酷なエンディングでした。あまりにも残酷な。

まずもって、毒親の下衆ぶりは、思わず映画館のシートから身を乗り出して「おいおい、待てよ!」と止めに入りそうになるレベルで胸糞ですし、自分の娘を「ママ」と呼ぶやり取りは、そのあまりの闇の深さに、吐き気すら催します。

一方であんを助けようとしているはずの人たちも、結局は自分本位、もしくは自分の置かれている生活環境本位なので、あんを救うことはできず、ただ後悔に暮れるしかないのでした。
そういう意味では、微妙な存在でしかなかった不甲斐ない役どころを、佐藤二朗や稲垣吾郎は上手く演じていたのではないかと思います。

さらに言うと、背景にある東京2020オリンピックがかなりダイレクトに揶揄されていますが、社会の仕組みや制度も彼女のセーフティネットにすらなり得なかった現実も、明快に描かれていました。

あまりの救いの無さに、自分の気持ちの置き場が見つからなくなってしまうような映画です。
どこかにかすかでも希望の光はないのか?
最期に育てようとしたあの子供に、何か救いの意味を見出せないだろうか?
など想いは巡りますが、解はありません。

ただただ、いま自分が生きている世界に、こういうことが起きているのだという事実だけは心に刻まれたのでした。

個人的評価:★★★☆☆
河合優実さん、なかなかの熱演でした。
役をしっかり取り込み、幅のある心情を表現。”あん”その人になっていました。今後も注目したい女優さんですね。
あと、稲垣吾郎は「正欲」もそうでしたが、不甲斐ない存在感がぴったりはまります。




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