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映画へGO!「コット、はじまりの夏」

(※多少のネタバレ)
大家族の中でも、静かに孤独な日々を生きる少女コット。両親から追い出されるように親戚の家に預けられるのですが、そこでの毎日がコットにとって、かけがえない経験となっていく。

いろいろあってのエンディングの先、コットがどうなっていくかは、観るものの想像に委ねられるカタチではあるのですが、”はじまりの夏”というタイトルにもあるように、切なくもどこかポジティブな予感に溢れていて、とても素敵な読後感の映画でした。

前評判通りにコット役の少女は、胸がキュンキュンするようなとても瑞々しい演技を見せてくれたのですが、一方でコットを預かることになる叔母・叔父のココロの機微の表現も、同じくらいに胸を打つものでした。

叔母は、会った瞬間から慈愛に満ちたキャラクターであることが伝わるような人物造形で、コットのことを最初から最後まで変わらぬ優しい愛で包んでくれます。
対する叔父は、最初はコットとの関係ややり取りもぎこちなく不器用なのですが、少しづつ少しづつ心の距離が縮まり、やがては非常に大きな愛で同じくコットを包んでくれます。
そして、この夫婦に横たわる悲しい過去もやがて明らかになっていくのでした。。

コットが叔父にうながされ、ポストまで走って郵便物を取りに行くシーンが何度か描かれます。それまで固かったコットの表情が徐々に柔らかく変化していく良い場面なのですが、これがエンディングのクライマックスにとても効いてきます。

ずっーと、静かに自らの感情を押し殺してきたコットが、最後の最後に感情を大爆発させるそのエンディングのシーンは、本当に心が動かされました。
走ることで自分の殻を破る瞬間が、観るものココロに焼き付けられる名場面と言えるでしょう。

そして、黄色が印象に残る映画でもありました。
コットが街で買ってもらった服の色。叔父・叔母の家の壁紙の色。クルマの色も。
夏らしくもあり、温かさを感じる黄色が印象付けられる画面づくりの演出もとても気に入ったのでした。

個人的評価:★★★★☆
コットの映画である一方で、叔父と叔母夫婦が悲しみを乗り越えていく映画でもある気がしました。だから奥行きを感じたのだと思います。




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