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映画へGO!「青春18×2 君へと続く道」

(※多少のネタバレあります)
男性の主演であるジミー役のシュー・グァンハンは、とても絵になる俳優でした。
特別な二枚目ではないと思うのですが、旅する日本の風景の中に、異邦人として溶け込みながら、かつて恋をした彼女を探し、自分の今も見つめようとしている切ない姿に、嫌みなく感情移入ができます。

一方で女性の主演アミ役は清原果那。こちらは明らかに美女ではあるものの、演技に変な自意識が侵食しておらず、台湾のバックパッカー役にスッと入り込んでいて、こちらも共感しやすく描かれていました。

恋愛物語として観るとある意味王道であり、展開も読めてしまうのは確かなのですが、主人公男女のピタッとくる自然な存在感ゆえに不思議とダレることはなかったです。
むしろ、心の中で二人にエールを贈りながら、結ばれることはないに違いないとわかっている結末へ向かって進んでいくという、悲しくもピュアな映画体験に没入することができました。

物語の中でかなり大胆に引用されているのは、岩井俊二監督の「LOVE LETTER」。私も大好きな映画ですので、ハッとさせられました。
上映当時は、スクリーンに映し出される真っ白な雪景色になぜか号泣してしまった経験があるのですが、アミがそれと似たような状況になっていたので、この映画と自分とのシンクロ感ありました(笑)。

「LOVE LETTER」

それと、画面の寄りと引きを大きな振れ幅で交互に構成する演出はとてもエモーショナルでした。
例えばジミーがバイクでアミを後ろに乗せて疾走するシーンなど、要所要所で主人公の心情を印象的に引き出すのに効果があり、こういう絵作り素敵だなと何度も思いました。

さらに感心したのは、脇役の豪華さ!松重豊や黒木瞳などが登場し、「さすがにそこまでいらんやろ・・」と思いつつ、茶髪フリーター役の黒木華の役回りはココロに沁みたー。
短時間の登場でしたが、重要なシークエンスで、「こういう役柄も難なくこなせてしまうんだ!」という爪跡をしっかり残していたのは流石でした。

で、思いっ切り泣ける映画だったか?というと、実はそうことではなかったのです。
先ほど書いたように、物語の展開は誰もが読めてしまうでしょう。

私が感じたこの映画の価値はそこではなく、むしろロードムービーとしてのセンスやバランスの良さにあるのだと思い至りました。

鎌倉~松本~只見という旅路の中でジミーが出会う人や景色や出来事に思わず引き込まれ、かつその合間に繰り広げられる台南での胸キュンな思い出のエピソードも絡み合いながら、ところどころで小さくココロを震わせてくれるシーンの積み重ねが、映画としての素敵な味わいにつながっているんだと思います。
そういう静かな魅力を感じる映画でした。

個人的評価:★★★☆☆
台湾と日本の関係って、国同士や国民の相互レスペクトがベースにあるのでいいですね。
良い映画だとは思ったのですが、恋愛物語としてもうひとひねりあれば、名作の領域に入った気がします。


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