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映画へGO!「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

(※多少のネタバレあります)
「よし、観に行こう!」という強い動機は、正直無かったです。。
生徒たちに煙たがられている頑固者の教師と、素行が悪く言うことを聞かない生徒の心の交流。
あるいは、損得勘定だけで生きるべきではないという人生への大切な教訓。
映画としては、ありふれたあらすじの展開であり、他の映画でも出てきそうな主題だったりします。

とはいえですが、見終わってみると、いい映画体験だったと納得することができ、十分な満足感が得られたのでした。

つまり・・映画のおもしろみや価値は、実際に自分で観てみないとわからないということを改めて実感。
脚本のクオリティ・役者の人物造形とキャスティング・絵づくりなどの演出・描き方の余韻や余白・音楽と情景のマッチング・・・などなどがトータルなものとして噛み合い、化学反応を起こしているかどうか?によって、映画の良し悪しは決まるんですね。

本作で言うと、シリアスな展開であってもユーモアを失わない、知的で軽妙な台詞回しの妙だったり、3人の主人公(生徒・教師・学食のおばちゃん)が、性別・年齢・抱えている課題を超えて、互いのやり取りや劇中で起きる出来事を通じて成長していくリアリティだったり、がすごく自然にスクリーンに収められているのがまずは大きな魅力でした。

さらには、生徒がスノードームを見つめるシーン、ルールを破ってまで旅するボストンの街の冬の風景、アカデミー助演女優賞を獲得したダヴァイン・ジョイ・ランドルフのひとつひとつの感情表現や立ち居振る舞いなど、観る者をハッとさせる画力(えぢから)を随所に感じたのでした。

そして何より、主人公である嫌われ者の初老の教師が実は一番成長しているではないか!というラストシーンが、いい余韻を残すんですね。

なんで今さらこういう映画をつくろうと思ったのだろう?という素朴な疑問は残りつつなのですが、巨大な予算を注ぎ込む超大作とは違う、等身大でちょっと素敵な佳作を発見する喜びを味あわせてくれました。
これも映画の醍醐味ですね。

個人的評価:★★★☆☆
こんな地味で低予算そうな映画が、いろいろな映画賞を獲得している理由は、観ればわかります。



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