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家族

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過去の家族の話しをエッセイにしました。物語にすることで初めて自分の家族との鬱々した想いを昇華出来ました。
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餓鬼

餓鬼

兄から電話があり、母方の祖父が亡くなったと連絡があった。祖父の微笑んだ顔が鮮明に浮かぶ。なんでもっと早く会いにいかなかったのだろう?胸がざわざわする。福井県に住んでいる祖父母とは何年も疎遠になっていた。父と兄と私の3人で、お通夜に出る為に車で奈良県から福井県に向かった。高速に乗れば3時間程で着く。

祖父は昔、警察官をしていた。とても真面目な人で家族想いだった。退職してからは家の離れで祖母とよく畑

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刺繍

刺繍

「早く死ねばいいのに」祖母と喧嘩をした晩、この台詞がいつも胸の中で呟く。こんな風に思ってはいけない。言ってはいけない。分かっていてもいつだって、この台詞が繰り返されてしまう。言葉がいつも喉元まで上がってきては、慌てて飲み込む。一日中、家の中でテレビを見ている祖母が疎ましく感じてしてしまう。私と父方の祖母は51才の年の差がある。価値観はまるで違う。話しをしても分かってもら

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シロツメクサ

あの花の名前はなんだっただろう? 耳を澄ますと聞こえてくるのは鳥のさえずり。森の葉っぱの擦れ合う囁き。懐かしい土の匂い。田んぼのあぜ道に力強く咲く白い花。幼い頃の私は花冠を作っては首や頭につけて遊んだ。あの花の名前がシロツメクサだとつい最近思い出した。

小学校5年生になった私はいつも男子に混じって外でドッジボールをしたり鬼ごっこをしたりして遊んでいた。3つ上の野球部の兄がいたのでキャッチボールも

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