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エッセイ集

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記事一覧

英語がすき

あれは高校生のころ。

中学までは英語なんてずっと、机の上で学んで何になるんだとか、
日本語すらままならないのになんでaとかbとか書かなきゃいけないんだ、数学にまで顔を出しやがって…ぐらいには思っていた。

たしかに話せたらかっこいいけれど、教科書で文法だけじっと学んでいてもどうにもならないじゃん、とかなり拗ねた態度でいたものだった。

高校生になって、ひげもじゃでベンツに乗ったお金持ちな先生が3

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パリパリの病院着

祖母が近くに入院しているとのことで、
急遽お見舞いに行くことになった。
目が悪く、何度も入院をしたことがある祖母だったが、今回は心臓が悪いらしい。

前の用事が押してしまって、予定よりかなり遅い時間に、走って病院へむかった。
楽しみにしてくれているのに待たせてしまった。
こういうときに待つのはどれだけ心細いだろうか。私には想像できる。
待って待って、面会時間がたった5分だなんて、
ひとり待っている

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新しい匂い

父と母は何年か前に別れていて、
でも同じ県に住んでいて、
それぞれを久しぶりに訪ねた。

父は新しい車を買っていて、
家族全員で乗っていた愛車がとうとう
なくなってしまうのかと思うと
少し寂しかったが、
昔の私ほど失くなるものに対して刹那的な思いや執着は出てこなかった。

新車にいざ乗ってみると、
すごく乗り心地がよくて、シートがあったかくて、とにかくしんとした明るい感じがして、
新しいほうが好き

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ほっけと向き合う

ほっけ。

ほっけが食べたい。

家に帰ってきてストレートで眠ってしまって
気づいたら時刻は夜の23時。
こんな時間だけど

ほっけが食べたい!!!!!

この前スーパーで買った冷凍のほっけが
冷蔵庫に。

焼いてしまおう。

ほっけへの熱意をエネルギーに換え、
溜まった洗い物を片付けたあと、
フライパンに火をつける。

チチチチチ
オリーブオイルをたらす。
ほっけを並べて焦げ目がついてきたら

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「わたしの好きな歌」

さくらももこさんの作品は小さな頃から読んでいて、特にちびまるこちゃんは、
文庫本サイズの黄色いコミックスを全9巻、繰り返し繰り返し眠たくなるまで読んでいた。
水だか麦茶だかをこぼしてブヨブヨになっている巻もある。

このタイトルの話を始めて読んだ時、
ものすごく泣いたのを覚えてる。
もうまるちゃんの年齢から、絵描きのお姉さんくらいの年齢になってしまったなぁと
可愛い可愛いまるちゃんを見てて思う。

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午前1時の夜風とともに

午前1時の夜風とともに

メルチャリで、人通りの少ない夜の街を
駆け抜けている。
今日はいつもより涼しくて、
少しだけマスクから口元を解放した。
隣をマウンテンバイクで走る友達は、
彼氏が寝てしまうので急いで帰らなければと言う。
私はゆっくり歩いて帰ってもよかったが、
さすがに真夜中、性別的にも防犯的にも、
メルチャリを使い彼女と並走することにした。

数か月ぶりに宅のみに参加した帰りだった。
大学時代の友人の家で、
当時

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桜が咲く前に

仕事の帰り道
一気に外の空気を吸い込む
脳を痺れさすドラッグのように
イヤホンからギターのストローク音が
疲れた身体に染み込む

中毒ってこういうことなのかな
おかしなことを考える

しばらくすると嗅覚が復活する
風は完全に春を待ちわびているようだ
もうそんな季節か

中学校のグラウンド、
暖かくなってきた廊下、
何かが始まりそうな通学路が
ふと頭をよぎる

完全に大人になってしまっても、
始まり

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アンチとものづくり

アンチとものづくり

口に入れた瞬間に美味しいと思うような
そんなものを作ることから目をそらさずに
ただ毎日愛を込めて作っていく。

蚊帳の外の人は、
やいのやいのと感情を乱すようなことを言ってくるだろう。
それは道を進んでいく途中の茂み。

茂みを見つめて、茂みに捉われてしまうと
動けなくなる。
かき分けてもかき分けても進めなくなる。

だから、「美味しい」という進むべき一点を見つめて、
茂みなんてどかして、少しずつ

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ファンとは。

 去年活動していたとき、ありがたいことに少なからずファンの方々がいてくれた。私の大好きなアーティストたちはファンを大事にしている。私も「ファンの方に言われる言葉が嬉しい」といつも言っていた。それは紛れもなく事実。

 だけど、自分を大事にできなかった私は、大事な人を大事にしていく方法がわからなかった。近づきすぎるとこわくなる。失ったらどうしよう、プレッシャーなのか、不安なのか。大事なのに、大事に思

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グラタンが焼けるまで

グラタンが焼けるまで、マニキュアを塗っている。
つまらない仕事をしている間はあんなに爪を綺麗にしようだとか
あのカフェに行ってみようだとか思っているのに、
いつもの部屋に帰ってきた瞬間全てを忘れてしまう。
そして携帯をのぞき込む。
これじゃだめだ、と思って
昨日作っておいたグラタンをオーブンに入れて、焼けるまでの11分。
指先のお手入れをしてみる。
意外と、こんな中指の形してたんだ、と気づかないこ

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わたしの話。

シンガーソングライターとして2022年10月、再始動を決めた。
生きてきたのはたった四半世紀かもしれないけど、
酸いも甘いも苦いも辛いも、
たくさんたくさん味わった。

2019年に会社勤めによりうつになって以来、「暑い」「寒い」でさえも自分の感覚ではよくわからず、人に言えずだったわたし。
すべてを失くして自信も自己価値感も吹き飛んでしまったわたし。

大学時代、そして2020年から約1年半、音楽

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