桜が咲く前に


仕事の帰り道
一気に外の空気を吸い込む
脳を痺れさすドラッグのように
イヤホンからギターのストローク音が
疲れた身体に染み込む

中毒ってこういうことなのかな
おかしなことを考える

しばらくすると嗅覚が復活する
風は完全に春を待ちわびているようだ
もうそんな季節か

中学校のグラウンド、
暖かくなってきた廊下、
何かが始まりそうな通学路が
ふと頭をよぎる

完全に大人になってしまっても、
始まりの予感は胸を躍らせる

あの人の横顔を思い出す
今日はあんまり喋れなかったな

憧れだとも恋心だとも決着をつけたくない
ただほんのりとピンク色に染まった
この気持ちだけを感じていたい

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